第十二話 「これが俺の力だよ」
はい。またしてもお久しぶりですね。
今後は少しずつ更新できるかな、と思います。
思いたい……
行きついた先は草原だった。見晴らしはいいけど、なんもない。こんなところで何をするんだろうか。
「この辺でいいな。邪魔者もいねぇしな」
「……なにがですか?」
まさか決闘でもやろうとか? だとすれば冒険者もあの兵士たちと一緒で碌なもんじゃないってことになるよなー。うん、だとすれば逃げちゃおうかな。
「あのリーベルのやつが推薦する、お前の実力が知りたいんだよ。普通じゃねぇんだろ?」
「知りませんけど」
まぁ普通じゃないっぽいけど。神様扱いとか。
「ちっ、そうかよ。まぁいいんだよ。俺はお前の実力がわかんなけりゃCランクからのスタートを認められねぇってだけだからな」
ガラ悪い人だな、ほんと。別に俺は普通にやれればいいから、Cランクからとか興味ないから。でも、言われっぱなしってのも腹立つんだよなー。
「別に貴方が認めてくれなくてもいいんですけど……ここで何をするんです?」
それが気になる。こういうタイプの人だと俺と戦え、力を示せ、みたいな感じになるんだろうか。小物っぽいかも。
「けっ、ムカつくガキだな……別に大したことじゃねぇよ。俺がこれからここに魔物を呼ぶからお前がそれを倒す。その倒し方を見せてくれりゃいい」
「魔物を呼ぶ?」
そんなことできるの? 周りを見渡してもゴブリンの一匹すら見当たらないんだけど。もしかして魔物を召喚する魔法とか?
「そういう道具があるんだよ。今から撒いてくるから準備してろ」
そう言うとガルドはちょっと離れたところに行き、何かをばら撒きはじめた。粉っぽいのを撒いてるな。あれ、なんだろ。
ついでに、準備とか言われても特に装備とかあるわけじゃないから待ってるだけなんですけど。
「うし。これでしばらくすれば魔物が寄ってくる。まぁこの辺りの魔物はウルフやゴブリンなんかの雑魚ばかりだから安心していいぜ? お前が役に立たない雑魚だったとしても俺がどうにでもできるからな」
「……そうですか」
「っても、あいつ等は群れる魔物だからな。出てきたら手早くやってくれよ。やらねぇなら俺がやるからな」
……うざいなぁ。この人。全力でやる必要もないだろうけど、力は見せつけたほうがいいかもしれない。あとあと面倒になったらそれまでだ。
「おい、来たぞ。準備はいいかよ」
「……いつでも」
見ればゴブリンが十匹以上近づいてきているのが見える。ウルフは見えない。目視できたから、火の玉をとりあえず三十個くらい出す。
「……なんだと?」
ガルドの驚いた声が聞こえたが気にしない。三十個まとめてゴブリンに打ち出す。当然ながら避けられる奴はいないようで、一瞬で消し炭になった。弱いなぁ……
「……まだ、来ているぞ?」
「わかってるよ。見えてるから」
今度はウルフがたくさん。ゴブリンもいるっぽい。でも、数が多いだけだと魔法使いの餌食でしかないよね。
次は風で切り刻む。別に火の玉でもいいけど、同じもの使うよりも違うもの使ったほうが力を理解してもらえそうだし? この大男に理解してもらう必要は別にないんだけど、ま、いいや。
「……こいつは」
まだまだ出てくる。いやいや、なんでこんなに出てくるの? ガルドってもうすぐBランクのCランクだったよね? 確かに弱い魔物しか出てこないけど数かなり多いよ? 本当に俺が役に立たなかったとき、一人でどうにかできたのかな?
「まぁいいや。つぎつぎー」
風の次は……氷漬けにしよう。血を出していると魔物が増えちゃうかもしれないから。さっき風で切り刻んでしまったのが数を増やす原因になっちゃったかもしれない。
「ありえねぇ……」
「ふー……終わったかなー」
結局百匹近い数になってた気がする。んー、でもリーベルとの戦いで溜まっていたっぽいストレスが解消できたみたい。すっきりしたー。
「お前、なにもんだよ……」
「なにが? 別に魔法を使ってただけだけど?」
まぁこれが異常なやり方だっていうのはわかってるんだけどね。できるんだからやっただけで。
「いや……あのリーベルが推薦する意味が分かった気がする。リーベルにもさっきの魔法を見せたのか?」
「いや、戦ったんだけど」
ボロ負けだったけど。でもいずれは勝つもりだけどね。
「……よーく、わかったよ。悪かったな」
「はい?」
なぜか唐突に頭を下げられた。どういうこと?
「あぁすまねぇ。いきなりで混乱させちまったか? まぁこんなところで話すもんでもねぇか。街に戻って話をするとしようか」
「はぁ……」
相変わらず俺が理解できないところで話が進む。俺が話に参加している場合でも理解できない状況とか、ホント、困るなぁ。
▼▼▼
こいつの戦い方はありえねぇ戦い方だった。なんだ、あの魔法の使い方は。
街に戻るために歩いているが、特に話すこともなく後ろをついてくるリーベルに推薦されたというガキ。あのリーベルが推薦したという奴の実力は見れたが、普通じゃなかった。だからこそ、リーベルの奴に推薦されたのかもしれねぇが……
最初は大量のファイアーボール。数がどう考えたっておかしいだろうが。次のはウインドカッターだったのか? 気づいた時には細切れだった。その次も気づいた時には氷漬けだ。俺自身が戦ってみるなんてしなくて命拾いしたな、これは。
「どこまで行くの? もう街には入ってるけど?」
「ん? あぁ……」
考え事をしてたらいつの間にか街に入っていたらしいな。門を通り過ぎた覚えがねぇが、そんなに集中して考えていたか。冒険者としちゃ致命的だな。
「なぁお前、リーベルの奴と戦ったって言ったが、結果はどうだったんだ?」
そんな俺のセリフを聞いた瞬間、すごい嫌な顔をされた。聞かなくてもどうだったかわかる表情だな……
「ボロ負けした。殺す気でかかったけど、魔法は避けられるか斬られる。斬られるのはどうにかすることができたけど、もともとの強さに差がありすぎだったから。いずれは勝けど」
「お、あいつに勝つと来たか! ま、お前なら可能性がありそうだけどな」
あいつは出鱈目だからな。勝てるはずもねぇ。だが、こいつがもっと成長すれば可能性がある気がする。斬られるのはどうにかできるとか言っているからな。本当だかはわからんが。
「ねぇ、あんたはリーベルの知り合いかなんか? なんか知らないけど、ずいぶん知っている風に話すけど」
「あぁまーな。俺ももともとは兵士で、あいつと同じ隊にいたんだよ。つーか同期だった。ま、あいつは化け物であっという間に置いてかれたけどな。模擬戦も何度かしたが実力が違いすぎた」
冒険者になってみてから理解したが、あそこの連中のほとんどは……特に実力のある奴らはかなり好き勝手なことをする。冒険者以上に。辞めてよかったぜ。
「ふーん……」
「だからこそ、リーベルの奴が推薦したってのが信じられなくてよ。ちょっと才能がある奴を推薦して調子に乗らせて新人を潰そうとしてんのかと疑っちまったわけさ。悪かったよ」
「ならいいよ。あいつと戦った後ならあいつの性格は少しわかるし」
「そう言ってもらえると助かるぜ」
そうこう話しているうちにギルドまで戻ってきたようだな。
「ギルドについたな。登録の邪魔をして悪かった。これからCランクとして頑張ってくれよ? 俺はすぐにBランクになるから追いついてきてみな」
「別にCランクから始められなくてもいいんだけどなぁ……でも、うん。がんばるよ」
ま、俺なんかよりも強いようだからな。接近戦はともかく、魔法を使われたら近寄る前にお陀仏だ。こいつはすぐにでも上のランクに行っちまいそうだ。あんまりやる気はなさそうだがな。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はガルド。魔法は使えねぇがこの斧で数多の魔物を屠ってきたぜ」
「ん。俺はオトヤ。武器は使えないけど、魔法には……魔力には自信があるよ。とりあえずの目標はリーベルに勝つこと」
“とりあえず”か。本当に今後が楽しみなガキだぜ。俺も負けてられねぇな。
……なんかおっさんというか、男キャラばかり出ている気がする。
ヒロインはいつ出るんだろ、これ。




