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第十話 「んじゃ、また会おうぜー」

隊長のあまりの嫌われっぷりに作者の私が驚きました。こんなつもりではなかったんですが……

「んー……」


 ふと、目が覚めた。あれ? 俺って何してたんだっけ。というかここどこだ?


「むー……あー……うー……」


 なんか頭が働いてない感じがするし、身体が妙に痛いんだけど。なんで俺ベッドで寝てたんだろ? んー? あ。


「そっか。あの問答無用理不尽隊長と戦ったんだっけ」


 で、ここで寝てたってことは負けたってことだよなぁ。そっかー負けたのか……


「……なるほど、すごい悔しい」


 完敗だった。殺してしまうのが嫌とは言ったけど、まともに効果のあった攻撃なんてなかった。戦ううちにできるようになったこともあったけど、全然通用しなかった。魔法を斬るなんて反則だよ、そう言いたい気持ちもあるけど、どっちにしたって負けただろうなぁ。最後には武器を使わせてなかったし。まぁ素手でも魔法を無効化できるなら関係ないかもしれないけど、最後はちゃんと避けていた気がするし。


「別に戦いが好きなわけじゃなかったと思うんだけどなぁ」


 こっちに来る前だって喧嘩とかしたことだってほとんどなかったし。殴り合いとかなら猶更。あれかなー。やっぱりなんかスイッチが入るようになっちゃってるのかな? なんか戦いになると自分が自分じゃない感じはどうしてもあるみたいだし。


「というかここはどこなんだろうか?」


 とりあえず戦いに関しては殺されてなかったし、ちょっと身体が痛いだけで致命傷はなさそうだから良しとする。それはともかく、ここがどこなのかわかんないほうが問題だよね。


「どっかの部屋? 宿屋とか?」


 わからーん。そもそもこの街に来て割とすぐに目障り隊長と戦いになっちゃったからこの街のことなんて何も知らないし。そもそもここってあの街だよね? 違ったら本当にどうにもならないぞー。というかグランツヘルプ!


「とりあえずここから出よう。そうしよう」


 じゃないとどうしようもないよ。眠くないし、あれからどのくらい経ってるのかもよくわかんないし。


 部屋から出るとすぐに階段があったので下に降りる。ここ二階だったのかー。


「おや、お目覚めだったかい?」


「あ、おはようございます」


 ん。やっぱり宿屋っぽい。下に降りてみると受付っぽいカウンターの中におばちゃんがいた。あ、おばちゃんは失礼かな。


「身体のほうは大丈夫かい?」


「はい。ちょっと痛みがあるくらいで結構普通に動けますよ」


「丈夫なんだねぇ。それにしてもびっくりしたよ。兵士がここに訪れたと思ったら、あんたを寝かせておいてくれって頼んでいったんだよ。しかも聞いたらあの隊の隊長とやりあったんだって? 無茶するねぇ」


 きっとここに連れてきてくれたのはグランツだろう。でもあの隊長と戦ったってことは別に言わなくてもよかったんじゃないかなぁ。まぁいいや。


「まぁ成り行きで。とりあえず生きてるのでよかったです」


「そうだねぇ。あの隊長……というかあの隊には問題児が多くてねぇ。実力があればあるほど問題を起こす人間の多い隊だっていうんだよ。だけどなまじ実力があるから国も文句を言いづらいらしくて調子に乗ってるって話さ」


「……それって言ってしまってもいいですか?」


 なんか兵士とかに聞かれたら問題になりそうな気がするんだけど。


「大丈夫大丈夫。冒険者のみんなもそう思ってることだし、兵士の人でも上の人以外は文句ばっかりさ」


 なんか本当に変な隊なんだな。まぁ隊長があれで、実力者っていう門番があれじゃ、仕方ないのかもしれないけど。


「おっとそうだ。あと一時間くらいであんたを連れてきてくれた兵士さんが来ると思うからさ、ご飯食べちゃいな。お金はもうすでにもらってるから心配いらないよ」


「わかりました。そこに座ればいいんですか」


 俺はほとんどの席が空いているテーブルを指さして言う。って、かなり空いてるけど大丈夫なんだろうか?


「それで大丈夫だよ。すぐに準備してきちゃうから待ってな」


「わかりましたー」


 おばちゃんは奥に引っ込んでいった。んー、それにしてもほとんど客がいなさそうだなぁほんとに。もう外も明るいようだから、みんな寝ているとかはないと思うんだけど。あれかな、食事はついでで、普通は泊り客だけどか? わからん。


「はいよーお待たせ。といってもこの宿じゃ簡単なものしか準備できなくてね、シチューとパンだよ」


「ありがとうございます」


「それじゃ、あたしはまた奥にいるから、何かあったら声をかけてくれればいいよ。あ、鍵はあるかい? 預かっとくよ」


「あ、特に気にしてなかったのでかけてませんでした。部屋にあるかもしれません」


「そうかい? なら見てくるよ。なかったらまた声をかけるからそんときは鍵を探してもらうからね」


「わかりました」


 さてご飯ご飯ー。うんうん。美味しいなぁ。おばちゃんは簡単なものって言ってたけど、森の中で暮らしていた時を考えるとすごい贅沢だー。村のご飯も似たような感じだったし。あー、美味しいものを食べてるときは幸せだなぁ。


「よぉ。美味そうに食ってるな」


「あ、グランツ」


 と、美味しいご飯を味わってるとグランツが話しかけてきた。いつの間に来たん?


「その様子だと身体のほうは大丈夫そうだな?」


「ん。ちょっと痛みが残ってるくらいかな。あ、グランツがここまで連れてきてくれたんだって? ありがとね」


「気にすんな。大したことじゃねぇよ。それにしても隊長と戦ってよく無事にすんだな?」


 えー。今その話をするのかー。いやまぁ当然か。あの戦いを見た人っていないわけだし。


「べつにー。あの腐れ隊長が手加減しただけでしょー? 全然ダメージ与えられなかったし、あの人ホントに人間なわけ?」


「く、腐れってな……あんまりほかの兵士がいるところでそんなこと言うなよ? そういやあの人は魔法も斬れる出鱈目な人だったか。いくら出鱈目なお前でも勝てない相手がいるってわかったのは収穫じゃねえか?」


「まぁねぇ。今後冒険者をやるならいろんな相手と戦うんだろうから、確かにいい経験にはなったんだろうけどさ」


 それ以上にあの隊長がうざすぎて腹が立つ。あれにコテンパンにされた自分にもちょっと腹が立つ。あーもー。いずれリベンジしてやろうかな。


「お前ちょっと悪い顔してるぞ……? さて、俺はもう今日か明日には村に戻るんだが、お前はどうする? 冒険者をやるならこの街でギルドに登録しておくのを勧めるが」


「んー、そうするかなぁ。村にはすぐに戻るつもりはないわけだし。しばらくこの街で暮らすことにするよー」


 ところで悪い顔ってなんだ。


「ならこの宿にそのまま泊まるといいぜ? この宿は安いし、飯も食える。女将もいい奴だし、なによりごろつきが少ないからな」


「へー。ならそうしようかなぁ」


「そうしろそうしろ。この後はギルドに行くのか? 俺は一緒には行けないが、ギルドは通りに出て真っ直ぐ行ったでかい建物だからすぐにわかると思うぜ。あとこれ、隊長が詫びにだってよ」


 そう言って渡されたのはお金だった。銅貨に大銅貨、そして銀貨があった。結構あるけどいいんだろうか。いや、気にしないことにしよう。


「わかった。いろいろとありがとね」


 こっちの世界に来てからなんかいろいろとお世話になってばっかりだ。


「気にすんなよ。俺たちは友人なんだろ? あぁそうだ。友人なら今度は一緒に酒でも飲もうぜ?」


「ぜひともー」


 まぁあっちの世界では飲んだことないんだけどね。まだ未成年だし。どんなもんか楽しみにしてよーっと。


「それじゃ俺は失礼するぜ? 無事に起きたってことも隊長に報告しないといけねぇからな」


「了解了解。んじゃまた会おうか」


「おう。またな」


 簡単に挨拶して別れる。今後はそんな簡単に会えるかどうかはわかんないけど、なんか軽く済ませてしまったなぁ。でも、俺もグランツも堅苦しいのは好きじゃないわけだし、これでいっか。


「さて、と。ごちそうさまでした」


 俺はおばちゃん……女将さんに挨拶をしてこれからしばらくこの宿に泊まることを伝える。一日銅貨二枚と、俺には安いのかどうかわかんないけど、グランツが安いって言っていたから安いんだろう。銅貨十枚で大銅貨一枚だから、とりあえず五日分だけ渡しておく。


「さって、これから冒険者になるわけかー」


 神様扱いは割といやなので、できるだけ目立たないようにしたいところだなぁ。がんばろーっと。

次回、冒険者ギルドにて波乱が……あるかもしれませんしないかもしれません。

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