大雨の出会い(6)
週刊少年ジャンプがおもしろい。
とか言うと、周りの人間に「お前は腐女子か」と言われます。
でも、私がジャンプ好きな理由は、単にチョッパーとコンと定春が可愛いからなのです(切実な訴え)。
ああ・・・そういえば最近コンを見てない・・・。
その瞬間、ポーチの強烈なアッパーカットが彼のあごを捉えた。
「うがっ!!」
喀血するダルにはもちろん構うことなく、彼女はわめき散らす。
「何なのアンタ!さっき地の文に『ダルは意を決した』って書いてあったわよね?ここは普通、『もちろん』とか格好いいセリフ決めなきゃ駄目よね!?そうやって読者様の期待を裏切るような人が主人公やってるからこの総合評価なのよ!!0ってひどすぎよ!?さあやりなおし!」
「……」
苦しそうに胸を押さえながら、ダルは言った。
「俺は、断る……あんな故郷に未練なんてない…でも、こんな自分じゃ救世主は務まらない……。お前の言うとおり、聖光は失敗だったのかもな……ただの人間に優れた能力って言うけど、俺はあの光を浴びてから、自分が何をしたらいいのか分からなくなってしまった。気を紛らわすように説教をして歩いたりしたが、実は本当の自分を失っていたんだ」
ダルは膝の上で、こぶしを固く握り締める。
あの日から、自分の心の中に芽生えた中途半端な道徳心と、喧嘩好きの気質の間で、絶えず葛藤があった。
以前の自分なら、「自分の力を試すチャンスだ」と喜んで救世主になっただろう。ついでに、嫌な思い出しかない地上界から出て生活できるのも嬉しい。
でも今、本当の自分を失った者に、世界を救うなんて大業ができるわけがない。
「分かってくれ…救世主にふさわしい人物は、俺の他にもいるはずだ…」
その表情のあまりにも苦しげなことに、ポーチの胸は少し痛んだ。
地上界の一般人にいきなり世界を救ってくれなどと頼むのはあまりに酷なことだったはずだ。
黙りこくってしまった彼女に、ダルは一言。
「……これで話を終わらせてくれるのなら、俺を向こうに帰してくれ」
そして、ここで思い出した。
自分としたことが、忘れかけていたのはルヴェアの存在だ。あまりにたくさんのことが一気に起こりすぎたせいかもしれない。
「それとルヴェア!俺の唯一無二の親友だが、魔法円に入れて消してしまっただろう。彼も戻してくれ」
「え…?」
ポーチは小さく瞬きする。不貞の輩と決め付けていたあのメイド少年が、救世主の親友だったとは…。
「ごめんなさい……てっきり勘違いしてて!救世主様によからぬ事を吹き込んだ罪人だって思って、こっちの刑務所に――正確には、その場の怒りに任せて、死刑執行待機室に連れてってしまったの!」
「なっ……!」
ダルは衝撃に息を呑んだが、ポーチはなだめるように続けた。
「大丈夫よ、今から行けば執行には全然間に合うわ!王宮関係者の身分証明書を持ってるから、すぐに釈放してあげられるはず!」
平気平気、慌てなくってもいいからねーなどと呟きながら、ポーチはポケットを探る。
「ほら、ここに…」
「……」
「……」
「……」
「……」
重苦しい沈黙が流れる。
そして、広場の時計の秒針が1周したとき…。
ポーチは、ダルの服のすそを泣きそうな顔で引っ張った。
「………ない!!」