大雨の出会い(3)
作者はあまりキリスト教に明るくありません。
でも、気取っていろいろ書きました。
それからなのだ。ダルの様子がおかしくなったのは。
例えば、顔を合わせると、「はるか昔、善いサマリア人は…」とか、「放蕩の限りを尽くした息子が…」などと、頼んでもいないのに突然教養めいたたとえ話をしだす。
この前市場に行ってスリに遭い、有り金を全部取られたときは、「この出来事に感謝しよう。俺たちは警戒することを学び、あの盗人はきっと今頃罪悪感というものを知って、善人への道を歩み始めたのだから」と静かに手を合わせた。
イエス=キリストばりの人格者である。
そして3日前、彼はついに「人里はなれた奥地で精神を鍛えたい」と村を出て行ってしまった。今、こんな廃墟のおんぼろ小屋に住んでいるのはそのためだ。
次に、一昨日分かったことなのだが、ダルにはどうも変態的な性分が備わってしまったようだ。幼女が好きなのだ。
とはいえ、実際に子どもに手を出すのは“人格者”たるものあってはならないこと。もちろん大罪だ。だから、今のところはルヴェアにロリ系のコスプレをさせることで我慢しているようだ。今日のメイド服も、そのためだ。
そして最後、これは冒頭の通りである。隙あらば自らの左腕を切り落そうとする。雷に打たれたことが原因なのだろうと予想はつくが、はっきりしたことは定かでない。
「はあ……」
2度目のため息。ロリコン人格者の変人に成り下がってしまったダルの姿を見るのが、ルヴェアはすごく辛いのだ。
彼は、自分の知っているダルじゃない。
その可愛い顔立ちの割に喧嘩っ早くて、がさつで、怒りっぽくて、いつもむすっとしていて、しかし優しくて強い親友は、ここにはもういない…。
「…ルヴェア、どうした。こんなに良い天気だというのに、暗い顔だ」
いつの間にか近くに来ていたダルが、仏頂面の彼に心配そうに声をかける。
「いや、何でもない」
「……」
事故の前と変わらぬ童顔が小さく首をかしげ、ルヴェアを見つめた。
「雨が嫌か?……いいか、ルヴェア。快晴だろうと土砂降りだろうと、それはみんな俺たちの神様が下さった恵みで…」
「うるさい!」
話し出すとこれだ。かみ合わない。
悲しくて、腹立たしくて、ついきつい口調になってしまう。
「…じゃあ、そのメイド服が気に入らないか。……申し訳ないとは思っている、でもこればかりは俺は…」
「そんなことじゃない」
もういい。何も言わないでおこう。
諦めたルヴェアがパンにかぶりついた、その時。
「救世主様ぁぁぁぁ!!!」
ドアが派手に蹴破られ、何者かが弾丸のように小屋に転がり込んできた。その衝撃といったら、屋根から腐りかけの木材がぱらぱらと落ちてくるほどだった。
ウニャア!と、毛を逆立てて威嚇するベータ。
「…誰?客人か?」
ダルがその人物のもとに歩み寄り、肩を叩く。
侵入者は、涙もしくは雨もしくはその両方でぐしゃぐしゃの顔を上げた。