竹光
零、オープニング
暗闇の中で、彼女は蘇りつつあった。
それは、完全な復活では無い。未完全、不完全な…それにしてはとてもはかない存在――
彼女は音も、光も、この永久の暗闇からは脱却できない。
否、苦しみも忘れたいと願うばかり。
その苦しみから解放されたいと願わくば、光は自らの意思で生まれることはないだろうと思った。これは、どこかの星で起こっている戦いを記した物語…なのかもしれないわ
またこの星にも「文化」だとか、人間関係だとかが…混合して、「涙」だとかもあるの
生きることに情けをかける者、死ぬことに悲哀をかける者、そしてそっらに同情の目を向ける者…
今も昔も、知能ある世界には憎しみや悲しみが生まれるのよ
私はね、そうやって泥沼におぼれて行く人たちを宥めることが好きなの。あぁ…本当に人間って面白い ものなのね
下では見捨てる人がいたって、私はあなたたちを見捨てないわ―――愛している
彼女は愛を囁き続け、そんなある時…何もないはずの次元から光の粒が出現したことに気がついた。芳醇、臭いはしない。でも、自分の探し続けてきた「希望」のに文字が、脳裏に焼きついた。
どうしてあなたが私の前に姿を現したの?
視界はますます閃光をほとばしらせ、この闇の中に白い光を出現させた。彼女の問いに光は答えず、代わりに聞こえない筈の「音」がすこしずつ聞こえだし、やがてぼんやりとした空間から映像の様なものが流れ出す。
――それはまぎれもなく、時間だった
雑踏にまみれた兵士や剣士たちの亡骸が、赤い空と共に残酷さを映し出した。見たことがあるようで、無いような光景――
戦争ね…
あなたは私に…これを見せたかったのね
紅い赤い世界にのみ込まれそうになって、彼女は一筋の涙を流した。もう枯れるほど流したものも、自分の意志に関係なく流れて来る。
まだ、終わってなんかいないのよ
私はみんなを愛してる…愛してる、愛している…だからね―――
完全な復活の前に、彼女は見えない者としてまたその光を信じてみることにした。