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時過ぎても、想いは変わらず  作者: 美緒
第一章 再会
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七 心解きほぐされる時

 異端とみなしたものを平気で迫害する時代。


 あなたは、私が人間ではなく異形なモノだと気付いた。

 それだけではない。

 異形の者となった自分の糧が生きる者の血だと知ったあなたはあり得ない提案をしてきた。

 てっきり、出て行けと言われると思っていた。

 化け物と罵られると思った。

 しかし、あなたから出て来た言葉は長い間心を冷たく凍らせた私を溶かすかのようなそんな温かなものだった。


――――では、あなたの糧は生き物の血ということですか……


 何やら考え込んでいるその人の横顔を見て、この人間も結局は皆と同じなんだと思った。

 けれど、その次に出て来た言葉は思ってもみなかった内容だった。


――――分かりました。私の血を飲んでください。その代わり他の誰からも、住む動物や村のみんなからは絶対に貰わないと約束して下さい。


 自分を犠牲にしてまでも守る。

 簡単なようでとても難しいことを彼は当たり前のように言った。

 その後のことで鮮明に覚えていることがある。

 自分にはもうなくなってしまったと思っていたもの。



 異形なモノになる前でさえ心を見せることが出来なかった私は、周囲の人間からまるで血の通っていない人形の様だと揶揄された。

 極端に感情の少ない私に対して嘲笑うかのように陰でささやかれる言葉。

 何をしても不平不満を言わない私を、操り人形のように扱い、自分の地位のためだけに固執する者たち。

 時が過ぎれば過ぎるほど、自分の感情が表に出ることはなかった。

 それなのに、あなたの言葉を聞いて私は一筋の涙を流したのだった。


 最後に泣いたのはいつだっただろう……


 最後に人前で泣いたのはいつだっただろう……



 空虚に考える私の眼に映ったのは、驚くあなたが次の瞬間、私に優しい微笑みを向けてくれた光景だった。

 この人なら大丈夫。

 この人が居れば大丈夫。

 自分を防衛する本能と、暴走してしまわないかという不安な要素が同時に払拭された。


 もっと早くに会いたかった。

 私がまだ人間でいる時に。

 そう思わずには居られなかった。


 でも……と、脳裏で否定の言葉が響く。

 あの時、この人が居ても私は気付かなかったかもしれないと。

 何者も信じられなかったあの時。

 すべてがどうにでもなればいいと思っていた。

 だから、冷静に考え、見れば気づけたものがあった。

 そう最後に行ったあの時、気づかないふりをした。

 見ないふりをした。

 私のことを気遣ってくれた人たちが少なくともいたことに。


 失くしてから気づくなんて……

 いや、失くしたから気づいたんだ。


 でも一番は、あなたに出会ったから――――


彼女の暗い過去の話。


回想中あなたと呼ぶ人と出会って今の彼女が居ます。

そして、その時に約束した誰からも無暗に吸わないことを今でも守り続けているのです。


目次に数字だけでなく題名も入れようか少し検討中。

入れた方が見やすいでしょうか?

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