四
「…………条件?」
訝しげに問うその様子を見ると自分の立場を分かっているのかという批判を感じ取る。
「ええ、私にここにいて欲しいのであれば、の話ですが……」
騎士の青年が眉を顰める。
己は何を戯けたことを言っているのだと表情が言っている。
「あなたは自分がここから逃げ出す事が出来るとおっしゃりたいのですか?」
優しい声音で聞いてくるのは医師の青年。
この言葉遣いと喋り方は彼の身に染みついたものなのだろう。
「ええ」
「どのようにして。と、伺ってもよろしいですか?」
簡単な返答に安易に聞くなと込めたつもりだが、医師の彼――ナルザと言うらしい――が詳しく問いただしてきた。
医師として患者の容体を聞くときのように迷いはない。
取りあえず、彼の懸念していることを否定することにする。
「別にあなた方を叩き倒して逃げるわけではないですよ。ただ、誰にも気づかれることなくここから去ることは可能であるとだけ教えて差し上げます」
それがどういったことなのか理解できなかったナザルは不思議そうな表情をして話しかけようとしたが、それを彼女は遮って言葉を紡いだ。
「口で言っただけでは大抵の人は納得してくれませんから……」
少しだけ悲しそうな様子になった彼女にナザルが心配して声をかけようとしたが遮られた。
「では実際見せてもらおうか?」
「いやよ」
彼女はそう言って不敵に微笑んだ。
「な……」
「なぜ? それは私が言いたい言葉だわ」
吐き捨てるように言い放った。
「自分のマイナスになることをなぜあなたに見せなければならないの?」
騎士の男をじっと見つめて言いつのる。
「それだけじゃない。あなたの立場を考えれば仕方のないことだろうけれど、一番私の言っていることを信じていない人の言い分を聞くつもりはない」
信じてもらえないのは慣れている。
けれど、あなただから我慢できない。
知っているはずなのに、彼は知らない。
私の知っている彼ではないから。
ツキンッっと胸の奥が締め付けられる。
ああっ……
会うべきではなかった。
違うと分かっていても重ねてみてしまう自分に嫌気がさす。
生まれ変わりといっても、別の人物なのだから仕方がないのに。
ほんの少しの変化にも気づいたあなたなのに、あなたは分からないのね・・・
かなり更新遅くなって申し訳ありません。
時間がたちすぎて自分が何をしようとしたのか思い出しながら書いたのでもしかしたら書きなおすかもしれません。。。
まだまだ話は続きます。
気長に更新お待ちいただけると光栄です。