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時過ぎても、想いは変わらず  作者: 美緒
第五章 静寂の始動
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Ⅲ 不穏な動き

「何があったんだ?」


 今まで黙っていたビューが、レイの深刻そうな表情と声音に今置かれている状況に何か変化が起こっていることを感じ取り、いつもの御調子ものである言い方ではなく低く警戒した声音で問う。


「先ほど、アドヌスにも報告してきた。

隣国エルバイヤ国が戦争準備を始めている」

 避けては通れないとは思っていたが、また先の事だと考えていた事だった。

それを突き付けられ、思わず全員が息を飲む。その小さな音は数多く重なったことで、大きく室内に反響した。

 大昔から争いの絶えない隣国。

 だが、それはいままでは小さな領地での生じだったりする事だった。

それがついに多くの者を交えた戦いに発展してしまったのだ。

これは、第一王子であるフリューテルの毒殺未遂が発覚した今日の時点で逃れられない運命だったのかもしれない。

そうというのも、国の要である王族の王太子を暗殺を目論み、その陰謀を阻止し明確に直訴したとしてもエルバイヤ国が下出に出て要求に応じるとは思えないからだ。


「それは確かなことか?」

 うろたえることなく聞き返してくる鋭いまなざしを正面か受け止め、レイはそらすことなく肯定した。

「ええ。

また正式に布告があったわけではありませんが、確かな情報です。

徐々に兵力と武器を集めてくるでしょう。

布告があってから準備をするのでは間に合いません。

こちらも気付いていることを悟られないように準備を始めるべきです」


 その意見に、騎士であるシュアーク、ビュー、フォルテ、そして王太子であるフリューテルも神妙に頷いた。

「ですから、何か合った時に王太子であるフリューテル貴方には自力で逃げるだけの体力は取り戻して頂かなくてはいけない。

私がいるのでそのような事態にはならないかと思いますが、最悪の事態も考えておかなくてはなりません」

「わかった。

ナルザ、カヌア今まで苦労をかけたが、もうしばらく苦労をかけるが頼む」

 真摯に受け止めたフリューテルは信頼できる医師とその助手にその手助けを乞う。

「心得まして。

出来る限りの事をさせていただきます」

 その王族らしい威厳に満ちた言葉に、ナルザとカヌアは礼をとりこの方のために自分達のできる限りの事をしようと誓った。


 フリューテルのことは何とかなった事を確認したレイは、今度はフォルテに顔を向けた。

「フォルテ。

貴方には、出来る限り自分の身を守れるくらいの力をつけてもらいます。

フリューテルの死が遠のいた状況ですがこの状態では貴方に付けられる護衛の数も少なくなるでしょう」

 その言葉に、フォルテは驚いた。

 兄であるフリューテルが完全に動ける状態でないことから、自分の護衛の数を減らし兄にあてるのはもちろん賛成だった。

誰かが否定しても、健康体で徐々に力をつけていっていると意見も貰っている自分よりも兄に付けてくれと頼んだだろう。

だが、その言い様は自分が戦場に出れないと言っているようなものだった。


「私は戦場には出れないのですか?」


 若干震える声音にレイはそっと頷いただけだった。

「なぜですか!?

 私が、未熟だからですか!?

 でも、多くの兵たちが駆り出されるのでしょう!

 ならば私も一緒に戦いたい!」


 何のために騎士になったのか、なりたいと思ったのか分からなくなりそうだった。

多くの民と、家族である父・母・兄を守りたいと思ったからなったのに、肝心なところで守られてしまうのかと頭が真っ白になり反発した。

 一番に分かってもらえたと思っていた人物からの言葉だったからなおさらだった。

 そんなレイは動じることなく自分に歩み寄ってくる。

理不尽だと叫ぶ中、取り乱すことない彼女の相貌にさらに怒りを感じた。

しかし、肩を掴まれ顔を覗きこまれたところで一気にその勢いがなくなる。

「フォルテの気持ちは分かる。

でも、貴方はまだ駆け出しの騎士にすら届かない見習い騎士の様な状態。

段々筋は良くなってきているけれど、戦場の様な所に行くにはまだ早い。

国を治める王族が戦場に出れば士気も高まるのは確かだけれど、貴方を守りながらでは今回の戦いは難しい。

それに、フリューテルの容体が良くなってもすぐには良くならない。

何かあった時にあなたまでもが戦場で失うことになれば継承者がいなくなる。

だから、分かってほしい」

 レイは静かに思っていることを告げた。

 フォルテは頷かなかった。

 分かりたくもなかったし、分かりたくもなかった。

 もしもの時ということは、兄であるフリューテルが死んだときの場合をさす。

 自分の望みは、兄が治める国で騎士になり支えることだ。

 だから未熟でも力になりたかったのに――――。


「すぐに分かってくれとは言わない。

でも、今のこの国の現状を分かって」


 そう言われ、レイの瞳を見れば自分の未熟さと許可してもらえない苛立ちが治まっていくのを他人事のように感じる。

 これが彼女がいう人外である彼女の力のせいなのかとどこかで思っていた。


 しかし、苛立ちは治まってもすぐに納得できるわけではなかった。

遅くなりました。

いつも読んで下さる方、新しくお気に入り登録して下さった方ありがとうございます。

鈍足更新になりますがこれからもどうぞよしなに。


最後の方なんかもの足りないなと思って付け足したので若干違うかもしれません…^^;

おかしかったら後で修正入れたいと思います。

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