二
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ありがとうございます。
そして、さらに続きます駄文にお付き合いくだされば幸いです。
しばらく三人は私の発した言葉が理解できないようだった。
その間私が理解したことは、私の今いる場所が地球ではないということ。
もし地球だとしても現代ではなく過去ということになるだろう。
彼らの恰好は映画によくある中世ヨーロッパ時代のような服装だった。
一番年若い少年の恰好はきらびやかで素材も装飾も申し分ないほど整っているものであり、現在の地球にあるTシャツやジーンズなどといった類のものではない。
懐かしく感じる時和の生まれ変わりの青年は3人の中で一番がたいも良く、身につける服装は騎士がつける簡易なものに似ている。
腰にはまぎれもなく生剣であり、飾り物でないのは一目でわかった。
最後の物静かそうな青年は騎士らしき青年と容姿がよく似ているが彼の恰好は地球の医者が着るような白衣を身に着けていた。
先ほどの言動といい、おそらくこの時代の医師なのだろうなと推測できる。
また、この世界ではバンパイアなどという生物は存在せず、そういった想像の産物もないようである。
それなのに目の前に死人と同じような身体を持っている自分のような異形が現れればこのような反応になってもいたしかたないと思う。
実際現在の地球で自分の正体を知って真面目に受け取ってくれる人間はないに等しく、私の異形の姿やありえない力を見て初めて納得するのだ。
「生きる屍とはなんだ? 貴様は、エルバイヤ国の密偵ではないだろうな?」
不審者を見るような冷たくきつい視線で私を疑う。
騎士であろう彼の反応はごく当り前である。こういった反応は面白いが、残念ながらエルバイヤなどという国は聞いたことがないので、首を横に傾げるしぐさをする。
分からないものは分からないのだからしょうがない。
そもそも今いるこの国の名だけでなくこの場所の名前も知らないのだ。
「言葉の意味そのままだ。死んでいるが生きている。
簡単にいえば、異形なものと言えば分かるか?」
余裕な表情で穏やかに答えれば、相手の騎士の青年は苛立ったように表情を硬くした。
答えているようで、一番知りたい内容について答えておらず、子供に諭すように言われては苛立っても仕方がない。
一般的に長寿を誇るバンパイアである自分も例外ではなく、生きた年月は長い。
目の前にいる人物はただの赤子と一緒。若造が苛立ち殺意を振りまいても痛くもかゆくもない。
苛立つ青年に対して余裕の笑顔で答えているため、周囲に冷たい戦慄が走る。
そんな中、遠慮がちにまだ幼さを残した少年の声が問いかけてきた。
「死んでいるって、本当にあなたは死んでるの? 今、私の目の前にいて話しているのに??」
疑問をすぐさま口にできる素直さが残る少年に私は近づいて触れようとしたが、騎士の青年に阻まれた。
敵かもしれない人間に近寄らせないつもりらしい。
残念だが自分から触れるのはあきらめる。
「ええ、本当に死んでるわ。触れてみれば分かるし、見た目でも若干青白いこの身体を見れば不自然でしょう?」
にっこりと妖艶に微笑むと今度ばかりは魅了されずにはいられなかった。
バンパイアは、その身にまとう美しさで人間を魅了させて血をすすると言われる。
その言い伝えの通り、バンパイアには見目が悪いものはまずいない。
そして、目の前にいる彼女は例外にもれず若く美しく、容貌はひどく丁寧に作られた人形のように一つ一つのパーツは整っている。
また瞳は闇の生き物の証である血を滴らせたような深紅に染まり、怪しげな雰囲気を醸し出しながらまるで夢見る少女のように半ばまでしか開かれていない。
一見、恋する幼い少女を連想させる印象を一瞬与えるが、成熟な大人が持つ色香を冷たいながらも放っているため誘惑しているようにも見える。
そんな女に微笑まれては同性であっても頬を染めてしまうほどだ。
しかしそこで流されて終わる人たちではなかった。
騎士の彼のせいで――――。
「あなたは何者ですか?」
幾分か硬い声音の質問はいい加減に答えるなという強い牽制が含まれていた。
これにいい加減に答えてはいけないことを知っている彼女は素直に彼が知りたかっていることを話してあげる。
「私が言い切れるのは、敵でもなければ味方でもない」
先ほどのような妖艶な雰囲気はなく、強い意志のある視線で彼を見つめ返した。
疑うのならば疑えばいい、さあどう受け取るか心の中で楽しみながら騎士の行動を待った。
「……たとえ、あなたが敵でなかったとしてもすぐに信用するわけにはいきません。
今の我が国の状況はご存知でしょう?
いきなり城の敷地内にいたあなたを信用できません」
騎士は最初戸惑いを見せたもののきっぱりと言い放った。
その度胸に思わず口元が緩む。
自分に圧倒されずに意見できる彼が依然と変わらない意志を持っていることに嬉しさが思わず出てしまった。
威圧感を出すつもりはなくとも、よく否定や拒否する言葉を放つのに躊躇すると彼女は言われる。
逆らうのをはばかる雰囲気を持っているらしい。
長き年月を生きて来て、さらには類稀なる力を持っているのだから仕方がないといえばそうなのだが……。
「信用できないのはいたしかたないだろう。
だが、私はこの国のことも知らなければここに来た覚えもない。
気づいたらここにいたんだ。
さきほど城の敷地内にいたといっていたが、それがどんなところだったのか知りもしなければ、城内に入れたのは先ほどの会話ではあなたたちではないのか?」
「……ちょっ……ちょっとまって、リーベルア国を知らない?!」
黙っていた医師らしき男がようやく口を開いた。
その狼狽ぶりを見ると、知らない人はいないほどの国であるようだ。私は当たり前だと自信を持って頷き肯定の意味を露わした。
「ますます怪しい……我が国、リーベルア国を知らないなんていうのはどこの小国から来たんだ?」
ますます人を信用しない目つきで見てくる男を見るのは面白いなと普通の人間ならば必死に取りなおすところで、さもなんでもないかのように当たり前の事実を述べた。
「どこの小国もないわ。この世界とは違う、別世界から来たのよ」
「………………」
3者同然。開いた口が閉まらないとはこのことだと言うように心に抱いている考えは全く違うだろうがまさにその光景だった。
「よくもそのような戯言を……」
これはすでに分かるだろう騎士の言葉。
馬鹿げた戯言を言って逃れようとする怪しい奴と考えているのだろう。
声音を低くし威圧感を浴びせる。
が、残念ながらこのような男の怒気に怯むような小娘でも人間でもない。
これならまだ口うるさいあの因縁のバンパイアの方が恐ろしい。
「信じる信じないはそちらの自由。どう取ってもらっても結構だ」
言い放つ言葉に騎士の男はやはり眉間にしわを寄せ、残りの二人は怪訝な表情を見せた。
おそらく大抵の人間はここで、殺さないでくれや私は怪しいものではないんだと必死に取り繕うだろう。
だが、私にはその必要は全くない。たとえ殺されたとしても全く問題なければ、幽閉されても簡単に逃げ出す事も出来るのだ。
それに出来ればこの目の前にいる騎士に極力関わりたくなかった。
自分が関わってしまったがために歪めてしまった過去をまた同じように繰り返したくない。
だた、一つ気がかりなのは先ほど言っていた戦争についてだ。
騎士になった彼は当たり前に戦場に立つだろう。
また彼を死なせたくない。
彼女はどうするべきか即座に決めた。
自分が関わるがゆえに死なせてしまう可能性は以前のように限りなく少ない。
ならば傍にいて彼を助けることに尽くす方が彼を救う方法はいくらか簡単だ。
その為には、彼に呑むしかない交換条件を持ちかける。
そうときまればどのように持ちかければうまく乗ってくれるか、彼女は目の前にいる男たちを見据えた。
読みずらかったら申し訳ありません。
なるだけ見やすくなるように配慮しているつもりですが、どの程度改行を入れるべきなのかまだ把握できていない状況です。
よろしければアドバイスいただけたら幸いでございます。