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時過ぎても、想いは変わらず  作者: 美緒
第四章 第一王子
29/36

Ⅶ 

毎回のごとく更新遅くなり申し訳ありません。

それでもご覧いただきありがとうございます。

 暴れる侍女を抑えるバルーゼと暴れる原因となっている物を手にして飄々とそれをいじっているレイを見守る3人の騎士と王子2人がいるという何とも言えない空気が漂っていた。


「――――これか……」


 ボソッと小さく呟いた言葉は意外な柄にも部屋内に反響しすべての者の耳に入った。

 何かを見つけたということが分かったという事実に、侍女は身を固くしまさかという表情でレイを見つめ、他の6人は何か重要な事を見つけたのだという期待を抱いた。

 レイがいじった次の瞬間カメオに少しの隙間が現れ、そこから細かい粒子が出て来た。

 それを何のためらいもなくレイは少量であるが口にし、納得がいったようにその隙間をすぐに元に戻した。

 すぐに見つかってもただのカメオにしか見えないように特殊な細工をされているのにも関わらずすぐさまその構造を把握して空け、その中の物を猛毒と知りながら舐めたレイを信じられないものを見るかのように侍女はただレイを見つめるしかなかった。


「あたりだ。フリューテル、彼女の身柄を拘束します。

 よろしいですね」


 問いかけているが、それは断られないと確信した言い方だった。


「分かった。

 シュアーク、デリアを牢へ。

 なお、この件に関して明らかになるまで他言無用とする」


 ハッと、騎士らしく礼をする3人に(バルーゼは侍女を拘束しているため声だけ出し)納得したように頷いた。


「この国には女性の騎士はいますか?」

 レイの問いに訝しげに首をかしげながらフリューテルが答える。

「いや、いないが。

 それがなにか?」

「ちょっとした隙に逃げる可能性と自殺することも考えられます。

 隙が出来ないように女性の騎士が居れば付けてもらいたかったのですが、いないのですね」

「ええ。

 当国では女性が騎士になることを認めていない」

 そういうことかと納得顔で頷きながら返答する。

「では、ミリアを彼女に付けてください」


 ハッとフリューテルとシュアークが驚いたようにレイを見た。

 まさか気付かれているとは思ってもみなかったからだ。

「いつ気付いた?」


 思わず出たシュアークの問いにレイは最初からと答えた。

 初めて暴かれたという事実に驚きを隠せないでいたがそれはほんの数秒といったところだ。

 すぐにいつもの平静さに戻る辺りはさすがとしか言いようがない。

 取りあえず深く聞くことは後でというフリューテルとシュアークの二人のやり取りの後、その線で動くこととなった。


「では、私はナルザのところに行きます。

 少し時間がかかるとは思いますが安心して下さい。

 その間信頼のおけるものから以外飲食物を受け取らないように」


 分かったと深く頷くフリューテルはフォルテにレイの案内をさせるようにいい。

 レイはフォルテと共に第一王子の寝室を後にした。



** *



 まだ覚えきっていない道順をフォルテは縫うようにして進んでいく。

 レイはその背中を無言で追いかけて行った。

 彼がどういった心境でいるのだろうかとその背中を見れば分かった。

 絶望に近かった兄の生の希望の灯が見えて来たのだ。

 これが好戦的で権力にどん欲ならば話は別だっただろうが、あいにくと彼は争いごとを好まない。

 自分が国を治めるという考えすら持っていないのだ。

 あくまでも兄であるフリューテルの手助けと国民を守りたいという考えしか持っていない。

 誰かの安否を心から願うその姿勢に思わず兄であるフリューテルが羨ましいとさえ思えた。

 生前の私にもたった一人でもそう思ってくれる人が身内にいただろうか……そう僅かな疑問にさえ一筋の光を見出す事も出来ない。


 遥かかなたに忘れたはずの記憶。


 しかし、その記憶は今でさえも己の奥深くにひそみふとした瞬間彼女に思い出させるのだ。


 孤独という檻を。



 そんなことを考えていればすぐに二人はナルザのいる診療室についた。

 レイとフォルテの二人だけという奇妙な組み合わせに驚きつつも、ナルザに事情を話せば詳しい事は後回しにしてすぐに取りかかる姿勢にはいるのはさすがプロだと感心した。

 レイに指示されながらナルザは解毒薬を調合していく。

 中にはレイの知る調合薬がないかと心配したが、代用できる物や名前が違うだけですぐに作ることが出来たのは幸いだった。わたわたとせわしなく動くナルザの助手であるカヌアの邪魔をしないように、その光景をフォルテは心配そうに見つめていた。

 あともう少しで出来るというところで後を三人に任せ、レイは室内を後にした。

 最後まで付き添う必要を感じさせなかったのと、信頼できる者たちだということもある。そもそも、第二王子であるフォルテの目の前で不正をすることもないだろうと思い、次の事をするためにあてがわれた自室へと向かった。


 もうすぐ彼が戻るころだ。


今回は短くなってしまいました。

前回をもうすこし短くすれば良かったと少し後悔……申し訳ありません。

今回から新章にしようかと考えていましたが、話しの流れと章の関係で入れ替えました。

次回新章に移ります。

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