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時過ぎても、想いは変わらず  作者: 美緒
第四章 第一王子
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Ⅲ 返答

遅くなって申し訳ありません(土下座)

 翌日、日が高々と昇りつつある中レイはようやくベッドから起き上がり活動を始めた。

 起きるのが遅いと普通ならば怒られる時間帯だが、彼女の場合こんな時間に起きて活動すること自体が極めて稀な人物であると言える。

 何といってもバンパイア。

 本来ならば日の光にあたるだけで塵と化して滅びてしまうはずなのだが、残念ながらというべきか功を奏するというべきか、彼女には今までのアンパイアの定義を嘲笑うようにして成り立たない。

 日の光は血を飲んでいないときは幾ばかりか、身体が重くなるがそれだけで身体が滅ぶ傾向すらない。

 これは多くの力のあるバンパイア達の多くが払拭してきている弱点である。

 そして、バンパイアの敵と言われ続けている、十字架、にんにくなどはもちろん彼女に傷一つ付けることはない。ただし、銀製品は若干彼女に軽い火傷のような状態になるがただそれだけである。

 遅くに起床しだした自分を何とも思わずに考えていたレイはとあることに気がついた。

 バンパイアというおとぎ話ともいえる存在すらないこの世界では自分が日中に活動すること自体がおかしいという認識を彼らに伝えていなかった事に。

「まぁいいか……」

 特に何かが関係してくるわけでもない。

 そう結論付けて彼女は誰にもそのことについて知らせることはなかった。

 もし、知らせることになるとしたら思わず自分が口を滑らしたときだろうという楽観視である。



 恐らく侍女のミリアが用意してくれた洋服と水差しで身なりを整え、寝室から応接室へと出た。

 応接間には誰もおらず、昨日最後に見たときと変わらずそこにあった。

 レイは侍女のミリアを呼ぶために用意されているベルを鳴らした。

 ベルを鳴らしてすぐに部屋の片隅にある扉が開きミリアが現れ、身支度を整えているレイを確認すると静かに微笑えで挨拶をした。

「ご朝食は、いかがなさいましょう?」

 自分が人外だという事も知っているが、恐らく中途半端な時間なために聞いてきただろう問いに答える。

 もちろんシュアークから血を貰っている為、食事をする必要は特にないのだが、この世界の食に若干の興味があった。

「ありがとう。では、軽くつまめるものをお願い」

「かしこまりました。すぐにご用意いたします。

 それと、ブロイア様からの伝言を預かっております」

 ブロイアが誰なのか最初分からなかったが、そういえばシュアークがそんな加盟だったと思いだし先を促した。

「用意が出来次第、執務室にいらしてくださいとのことです」

「わかった」

 ミリアは無言で礼をして室内を後にした。

 シュアークの用事は恐らく昨日話していた答えを握っているだろうとレイは確信していた。

 あの男は仕事をするのが早い。


 

 しばらくして、ミリアが持ってきた軽食は日本でも良くあるサンドイッチだった。

 中身は野菜を使ったものとほんの少し何かの肉が挟まれている物の二種類で、量は女性が軽く食べる程度だった。

 味も申し分なく食したレイは、ミリアに礼を言って今度は自分が室内を後にする。

 昨日帰りに送ってもらったので、シュアークの執務室までの道筋は覚えていたのでミリアの案内は辞退した。

 もう日がすでに高く上っているのもあって、城内にいる人は昨日よりも数段多い。

 見慣れない人物が歩いているのに気付いた幾人かが怪訝な顔をしているのに気付いたが、レイはまるで何も見ていないかのようにその視線に対して気にも止めずに進んでいく。

 その姿はまるで王者のように堂々としていた。

 不審に思った幾人かが身近にいる人に訪ねるという事態が起こり、芋づる式にレイの存在は多くの城内の者に広まっていった。

 しかし、彼女に直接話しかけようなと度思う度胸のあるものは誰一人もいなかったことを付け足しておこう。



 そうとも知らないレイは、昨日最後に訪れたシュアークの執務室に辿りついていた。

 入室を許可されたレイは、シュアークに昨日と同じ椅子に勧められクメールが入れたお茶をいただく。

 武家人でありながらクメールのお茶の腕までは上手かった。

 わずかな渋みの中に甘い味が調和している。

 まだ仕事が残っているのか、シュアークはレイが室内に入ったのを一瞥するだけで執務机から離れなかった。

 それでも、ときどき訪れる部下やクメールの質問には答えている。

 それを見ていたレイは、それなら大丈夫だと昨日の答えを問う。


「それで、昨日の件はどうなったの?」

 ずっと書類を見ていたシュアークの手が止まったがすぐに動き出した。

 声をかけられると思わなかったのだろうか?

「その件は、許可が下りた。

 今日を入れて三日後……二日後の昼食後の14時頃に面会予定だ」

「そう……アドヌスはなんて?」

 カチャリとカップをソーサーに置いて尋ねる。

「国王は、助かるものなら試してみればいいという考えだ……それだけでは納得しないものも多かったが、話を聞いていたフリューテル様が会ってみたいという意見もあって通ることになった」

「……フリューテル…?」

「ああ、貴方が会いたがっている第一王子の御名前だ……」

 若干呆れているシュアークが答えるが、第一王子の情報は全くと言っていいほどなかったのだから仕方がない。

「それよりも気になっていたが、誰構わず呼び捨てにするな……」

 そう忠告する声音は不服に思うというよりも呆れと気遣いが見えた。

 呆れていたのはそっちの方だったのかと思うと同時に、会ってほんの少ししか経っていない自分の事を気遣ってくれるのか不思議に思った。

 思わずゆっくりとシュアークの顔を見れば、その視線は手元にある書類に向かっていた。

 しかし、その顔を伺うことはでき、何と表現していいか迷う様な表情をしていた。

 眉間に皺をよせ困惑しているように見えるが、呆れているようにも見受けられる。

 そんな表情を見たレイは思わず表情を和らげ微笑んだ。

 空気が和やかになったのに気付いたシュアークが不審に思って顔を上げて目にしたその表情に怪訝な顔をした。

「心配してくれているんでしょう?

 ありがとう」

「……あぁ…………」

 まさか礼を言われるとは思っていなかったらしく、シュアークは言葉を濁した。

 それによって敬称云々についてはぐらかされたのだが、彼女が意図しての事だけではなく(全くなかったとは言えない)、本心からの出来事であった。

「話は以上かしら?」

「ああ、昼食はどうする?」

 もうそんな時間かとシュアークの後ろにある窓の外を眺めると、だいぶ太陽が真上に来ているようだった。

 起きた時間も遅かったのだから無理もない。

 先ほど軽くつまんだのであまり空いていないが、これから動くことも考えて食べておいた方がいいだろうか……と思わず人間じみた考えが頭に過った。

「貴方はいつもどうしてるの?」

「騎士団専用の食堂があるからそこで食べる用にしている」

「では、そこで私もご一緒してもいいかしら?」

「……どうぞ」

 恐らく女性が一緒がそんな食堂で食べようなどと思うと思っていなかったのか返答が遅れた。

 クメールに視線を送り、小さく頷いて彼も立ち上がった。

 彼もいっしょに昼食を取ることになるようだ。

 執務机の上を片付ける二人を待ち、三人は室内を後にして食堂へと向かった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

久々に書いて自分の文章と知識の不甲斐なさに沈んでいく私です……(沈)

これから指南するとかいうレイの事を表現すればいいのだろうと考えて、何か武芸でも嗜んでいれば……と思いました。。。


話は変わりますが、最近風邪をひいて声が出なくなるというアクシデントが発生しました。

話せない、伝わらないというもどかしさを改めて実感。

皆さま風邪にはご注意を。。。

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