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時過ぎても、想いは変わらず  作者: 美緒
第三章 第二王子の葛藤と悩み、そして決意
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Ⅰ フォルテの悩み

 先ほどシュアークに出歩くなと言われたのにも関わらずその命令を全く無視してレイは一人で城内の廊下を歩いていた。そもそもシュアークの命令に対して同意した覚えはない。

 だからいいんだという安直な考えである。

 国王から城内の散策を自由にしていいという許可を貰っているのだから別にシュアークの許可を貰う必要もないのだ。

 それにレイはある人物の事が心配でを探していた。

 あのとんでもないハプニングのあった謁見により、彼の事が気になっていた。


 シュアークから血を貰ったことで自身の力の制御が出来るようになったレイは、あれほどにまであった威圧的な存在感を抑え込むという本来ならば日常的に行っていた事が出来るようになっていた。

 他者が畏敬のまなざしをこめるほどにまで威圧的な存在感を表に出す事はめんどくさいので何かあった時にしかそのストッパーを外すことはないのだが、今回は例外中の例外の出来事だった。

 地球に居れば奴らを呼び出して血を貰うこともできるのだが、残念なことに倒れた先は見ず知らずの世界だった。

 この世界に来て一度会った人物は恐らく今の自分を見ればどうしたのか聞いてくるほどにまで威圧的な存在感というものを感じさせなかった。今なら陰にひそむこともできる。

 そもそも、地球にいた時でさえ出来ることならば表だって動くことのない人生を送りたかった。

 だがしかし、レイの周りにいる人たち(異形の物たち含め)が許すはずもなかった。

 その為、厄介なことに巻き込まれたくない彼女は普段の日常生活でさえも存在感を消していた彼女の気配の消し方は、空気の様にそこにいるのを忘れさせるかのようだ。

 それでも容貌が容貌なだけに全く気づかないわけではないのだが、生前から他者に見られることの多かったレイは細かいことは気にも留めてなかった。

 見ているだけならいい。

 敬うかのようにすがりついてきたり、媚びを売ってさえ来なければ。というのがレイの大まかな考えだった。

 彼の気配を探りながら、レイは城内の広い廊下を遠目に伺ってくる人たちを気にすることなく突き進んでいった。



 そうして、彼の気配を探りながら行き着いた先はひっそりとした中庭の様な場所だった。

 貴族や王族が来るような場所にしては質素な造りなそこは、近くに騎士達の鍛錬場などがあるので騎士達の憩いの場の様なところのようだった。

 そこに隠れるようにして座り込んでいるリーベルア国の第二王子にして、レイの命の恩人である少年が居た。


「フォルテ」


 気配を消して近くまで来ていたので気付かなかったのだろう。

 いきなり名前を呼ばれてびっくりしたのか肩が大きくビクついたのが後ろから見ても分かった。

 そろりと後ろを振り返った彼の瞳は悲しみに取りつかれているかのようだった。

 話しかけた相手が誰なのか分かると、フォルテは力のない笑みを浮かべ自分を呼んだ人物の名を呼ぶ。


「……レイさん」


 その様子に軽く微笑んで隣に並んで座った。

 当たり前のように自分のそばに座ったレイに若干動揺していたのを感じたが無視した。

 レイは何かを話しかけるわけではなく、質素だがきちんと手入れされている庭を眺めていた。

 フォルテはてっきり何かを言われると思っていたのに一向に話しかけてこないのを察知すると、レイの横顔から視線を外し俯いた。


 そして、そのままほんの数分時が過ぎてゆく。

 フォルテにとっては何十分もそうしていたかのように感じたが実際はほんの3,4分の出来ごとにすぎなかった。

「……先ほどは助けて下さってありがとうございます」

 別に何か話す内容を考えていたわけではなかったのだが、とっさに出て来たのがこの言葉だった。

 あの時レイに助けられていなければ自分は今ここにいてこうして悩んではいない。

「別に大したことはしていないから気にするな」

 自分の弱さに嘆いているのに言われた言葉はフォルテの心に大きく波紋を巻き起こす。

「でも、あなたがいなければ、ぼ……私は今ここにいません」

 そう言いながら見つめてくるフォルテの瞳はゆらゆらと揺れ動いていた。

「だが、そもそも私があそこにいなければ、この国の騎士の何名かは気付いていたはず。

 特に筆頭騎士のシュアークと近衛騎士の数名は」

 そう言われて自分は弱いものなんだと突き付けられたように感じた。

 ギリギリと知らない間の拳を握りしめていた。

 その様子をレイは冷静な目で見ていた。

 フォルテが自分の弱さに悩んでいることも、これからの自分の行く道が分からなくなっていることも理解していた。

 今のこの国の不穏な動きを見れば分かる。

 以前の生きていた自分のようだと心の片隅で捉える。

 そんな中、突然レイはフォルテに問いかける。


「フォルテ。あなたは何をしたい? 何になりたい?」




第三章に入りました。


ここまでお付き合い頂きありがとうございます。(平伏)

レイの回想がところどころ入っていますので分かりにくいとは思いますが、徐々に彼女についても分かってくるかと思いますので、気長にお待ちください。><

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