Ⅴ 腹の探り合い
「――レイと申します。リーベルア国王」
分かったと言いたいのか、リーベリア国王は軽く頷いた。
「わが名は、アドヌス・フォル・リーベリア。
レイ殿、そなたは我が国、リーベリアに害をなす者か?」
普段ならば何をバカなことを問うのかと思うところだが、今回は皆王の堂々たる威勢に感服した。
この謁見室に居るある数名以外はその場に膝をつきひれ伏したいのを必死で我慢していたからだった。
ほんの少し力を抜けばそうなるだろうという状況だ。
「あなた方が私に害がなければ」
答えは簡潔な物だった。
それで調子を良くした国王はシュアークから聞いたある交換条件について話し出す。
目の前に居る少女が敵国の味方になったら国を揺るがす――いや、国の存亡にかかわる事態になりかねないと瞬時に判断したからである。
「先日の取引応じると言ったらどうする?」
「条件は?」
そう問い返したレイの瞳が一瞬光ったように感じた。
「我が国に加勢してもらいたい」
不敵に微笑んで問う。
「それは、どのようにして?」
はぐらかそうとしているのを見破って陛下も口元を引き上げて笑って答える。
「謙遜する必要はないでしょう。あなたの力はここにいる私を含めてすべてが認識している」
思わず視線が交差した。
腹の探り合いは面白いが、今回はここまでとしておくことにする。
目的はシュアークを死なせないこと。
その為に、取引を持ちかけたのはこちらだ。
レイはちらりと斜め前方に居るシュアークの背を一瞥した。
「それはそうと……一番関係のある彼の意見はどうなのかしらね?」
そう問えば、気を良くした国王は口元を引き上げシュアークに視線だけで問う。
「……御意」
苦いものを誤って口の中に入れてしまったかのような苦々しい声が絞り出された。
自分が食料になるのを承諾するのと同じ様なものだからしょうがないと言えば納得できる。
たとえ百戦錬磨を乗り越えて来ただろう筆頭騎士だとしても人の子だということだ。
そんな事よりも、先ほどから不穏な雰囲気を感じていた。
狙いは何か……
王
王妃
どちらも考え、気配を探ったが違った。
また両名は近衛騎士達によって堅く守られている。
どちらかというと自分かとも考えたが、何者かもわからない、たかが小娘に刃を向けるような危険を犯すようなことはしないだろうと即座に否定する。
例え威厳な雰囲気を漂わせていようが、見た目はただの小娘でしかないのだから。
余計なことを考えながらも気配を探ると、刺客はどうやらフォルテを狙っているらしいというのが分かった。
命の恩人ともいえるあの幼い王子を殺す事は許さない。
そう思うのと同時にレイは動いた。
瞬間的にその場から姿を消した。
ギィンという剣がぶつかり合う音が部屋の中にやけに大きく響き渡った。
音のなった方を注目した者は即座に顔を青くした。
防いでいるのは先ほどから王と話していたレイという少女だった。
そして狙われたのは、この国の第二王子であるフォルテだということに驚愕していた。
更新遅くなってしまい申し訳ありません。
読んでくださっている方、お気に入り登録してくださっている方ありがとうございます。そんなありきたりな言葉にできなく申し訳ありあません。
自分のボキャブラリーのなさに涙が出るこのごろです(号泣)
書きたくても表現出来ずに手が止まります(沈)
よろしければこれからもお付き合い頂けれたらなと思っています。