第二章 一 隠し通せるものではない
それから数日がたったある日の事、隠そうと思っても隠しきれるものではなく、人づてに国王の耳に入ることになってしまった。
監視役のシュアークは国王に呼び出され、執務室にいた。
「では、その者はいきなり城内に倒れていたということか……」
「はい、それも見つけられたのがフォルテ様でした」
ふむと神妙な顔つきをしたかと思うと、次の瞬間には口角を持ち上げ何やら不吉な笑みを浮かべる国王。
思わず顔が引きらせるシュアークはとてつもなく嫌な予感が心中によぎった。
「その者に一度会ってみたいな。
どうだ、いいだろ?」
訪ねはしているが、もう本人の中では決定事項となっている。
こうなるのが嫌だったので、国王にも報告せずにレイが何者であるか探っていた。
一層顔をひきつらせて形式上に柔らかく無理であるのことを伝えることにする。
おそらく無駄に終わるだろうが……。
「今の状況を考えて何者か判断できない者と謁見することは賛成致しかねますが」
シュアークが諭しているのを聞くと喉の奥でクツクツと笑いながら言う。
「己の事を異端者と呼び、最後まで冷静に主導権を握られたのだろう?
あげくに、闇の王か……聞いている限りでは危険な感じはせんな。
それより気になるのは、王としての風格はあったのか?」
「はい、王よりはるかに」
迷うことなく発せられた言葉にわずかに眉間に皺を寄せた。
しかし次の途端には面白いおもちゃを見つけたように口元に笑みが浮かぶ。
「ますます会ってみたい。
手筈を整えろ」
話は終わったとばかりに執務に勤しみ始めた王にため息をついてから一礼をすると執務室を後にした。
「――ということで、申し訳ないのだが、リーベルア国王に会って頂くことになった」
心底納得がいっていないのか、未然に防ぐことが出来なくなって申し訳ないからなのかシュアークの表情は厳しく顰められていた。
レイとしては、ただの人間の国王に会うだけなので対して問題ではなかったので二つ返事で承諾をした。
「期日は?」
「早々に会いたいと王の我がま……王たっての願いで明日の昼頃に……」
王も王なれば家臣も家臣だとレイは内心感じたが表情には出さなかった。
厄介な者はどこにも一人はいるものだ。
一番厄介なのは、私を今の地位に陥れたあの男以外にいない。
「わたしは構わないが、王に会うのならば身を整えなければならないですね?」
考えるだけでげんなりする。
願わくはひらひらしたドレスなどに着つけられることをないことを祈るだけだ。
「ああ、身を清めていただく。洋服についてはこちらで用意します」
「シンプルなもので。
ズボンにしてください」
服装について思わず即答してしまったが、こちらでは女性がズボンを履くという習慣がないのだろうか怪訝な表情を見せた。
「今着ている者の様な物がご要望か?」
分かってくれて嬉しかったのも手伝って思わず微笑んでしまった。
普通の人間であれば顔を赤くして慌てるところだが、シュアークはあくまでも冷静だった。
「……あいにく、王だけの謁見ならば良かったのだが、少々他の者もいる故、簡素な服を用意するがズボンはご遠慮頂きたい」
王だけだったらいいのか……、普通王が居るから駄目なのではないのかと思うが、そういった細かいことにとらわれないのだろう。
どんな人物か少々楽しみになってきたレイだった。
服装に関してはそんなに頓着していないので了解の旨を伝えると、では後ほど侍女を来させるといい部屋を後にした。
ほんの数日間ではあったが、この部屋から出ることのできなかったレイは特にすることもなかったのでシュアークの持ってきた本を読んでいた。
それは、レイがここがどこなのか知るために頼んだため主にこの国にまつわる歴史や世界に関することが大半だったため、大半の事は分かってきていた。
一度勘違いされたエルバイヤ国とはどういったところなのか、リーベルア国とエルバイヤ国との関係。
そして、ここ数年リーベルア国を修めている国王――アドヌス・フォル・リーベルア。
先ほどのシュアークの反応からいうと、とんだ食わせ者みたいな様子。
会うのが楽しみだった。
あまり期間を空けずにアップ出来て良かった……!
こんなつたない文章で申し訳ないですが、まだまだ続きます。
よろしければお付き合いください><
蛇足
国王がこんな人物になる(こんなに出しゃばる)予定がなかったのに出てきてしまった挙句、書いてるのが楽しくてびっくりしました。
おそらくいろんなところで出しゃばってくると思いますがお気にせずにお付き合いくださいませ。