第七話 魔力検査
この作品を選んでいただき、ありがとうございます。
初めての作品になります。至らない点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
更新は毎週火・金予定です。
翌日、約束の時間に司令室へ。
司令室には凪隊長の姿があった。
「おはようございますっ!」
ましろは元気一杯。
昨日一緒にゲームした甲斐があったってもんだ。
「ましろ、おしごといっぱいします!」
……昨日の約束のおかげかな。
「それは嬉しいね。
それじゃあ、魔力検査をしてもらおうかな。
昨日、久遠にましろの魔力が気になると言われてしまってね」
「気になるとは、どういうことでしょうか?」
「んー、それを調べるためなんだけどね……。
簡単に言うと、ましろちゃんの魔力が、あまりにも少ないらしいんだ」
「……少ない、ですか?」
「うん。普通、魔人っていうのはね」
凪隊長は少し考えるように視線を上げてから、続けた。
「技術とか才能以前に、単純に魔力の総量が桁違いなんだ。
そもそも、魔人に進化するためには、莫大な魔力が必要になる」
凪隊長はそこまで言って、一度言葉を切った。
そして、ましろの方へと視線を向ける。
「それなのに……ましろちゃんからは、進化に必要なはずの魔力がほとんど感じられない。久遠が違和感を覚えたのは、そこだね。
――それに、この部隊は、軍でも手に負えない魔物を相手にするのが主な仕事だ。ましろちゃんの魔力次第では、任せる内容は少し考えないといけない」
「……それは、結果次第では、また異動ということでしょうか?」
思わず、そんな言葉が出てしまった。
「いやいや、そんなことはしないよ」
しかし、凪隊長は即座に首を振った。
「そもそも、ましろちゃんを他に任せるつもりはない。
魔人は、新しく生まれること自体がとても珍しいからね。
――だから、なるべくなら、目の届くところで守らせてほしい」
凪隊長のその目からは嘘を言っているようには見えなかった。
「っと話が脱線してしまったね。それじゃあ魔力検査に行こうか」
「うん! ソーマもいっしょにやろっ!」
凪隊長の方を見ると、首を縦に振ってくれた。
「よし、それなら勝負しようじゃないか」
「いいよ! ましろが勝つもんっ!」
検査はこの基地の中で行うらしい。
俺たちは凪隊長について行った。
************
エレベーターでさらに地下に降りた先、そこには広いだけの無機質な部屋だった。
部屋には研究者の他に、久遠副隊長の姿も見える。
……そして、部屋の中央には巨大な石――おそらく魔力測定石が置かれていた。
両腕を広げても抱えきれないほどの大きさがある。
俺たちも毎年魔力を検査している。だけど、その時に使う石はせいぜい拳大だ。
「これは魔人用の測定石さ。普通のだと魔力が多すぎて壊れちゃうからね。
ましろちゃんも、まずはこっちの測定石で試してみて欲しい」
「ナギたちは、どれぐらいなの?」
ナイス、ましろ!
それは俺も気になっていた。
「んー、僕で出力が300、総魔力量は8000ぐらいかな。巌斗も同じぐらいだったはず。久遠はどれぐらいだっけ?」
「我が本気を出せばこの石でも耐えられんからの。正確な値はわからん。
まあ、出力が1000、総魔力量は20000ぐらいかの」
「すっごい!」
……いや、凄いとかのレベルじゃないんだが。
桁が違いすぎる。
軍基準で災害レベルと呼ばれる魔物ですら、出力50の総魔力量1000とかだぞ……。
「それじゃあ、ましろちゃん、これに魔力を流してみて」
「うん!」
ましろは石に両手を付き、むむむと声を発しながら、力を込めている。
しかし、石に変化はないように見える。
研究者は困った顔をしながら結果を伝えてくれたのだが……
「えっと、その……反応が、ほとんどありません」
「ふむ。やはりの。
――ましろ、もう良いぞ」
「どうだった??」
「ごめんね。もう一回測定させて欲しい。次はこっちで試してみようか」
渡されていたのは、見慣れたいつもの測定石。
ましろがその石に魔力を流すと、石が黄色く発光した。
「出力18の総魔力量が342です」
ふむ。猫だった時と変わりはないようだ。
しかし、研究者は興奮を隠しきれない様子で口を開いた。
「測定不能……いえ、正確には“下限未満”です。魔人用測定石でも反応せず、通常石ではこの数値……」
「これは非常に珍しいケースです。追加測定と、しばらく経過観察を――」
「……それ以上は不要じゃ」
久遠副隊長がキッパリと断った。
けれど、研究者たちは納得しきれない様子で、互いに視線を交わした。
「ですが、このような例は前例がなく――」
その言葉が、途中で止まった。
久遠副隊長が研究者の方へ視線を向けただけ。
それだけだった。
声も、表情の変化もない。
なのに、部屋の空気が一瞬で張りつめる。
「……失礼致しました」
誰かが、そう呟いた。
研究者たちは一斉に視線を落とし、それ以上、何も言わなかった。
「測定はここまででよい」
久遠副隊長は、それだけを告げる。
……たぶん、これ以上踏み込んではいけない。
理由はわからないが、全員がそう理解していた。
「ましろ。よく頑張ったの」
「え、もう終わり?」
「うむ。十分じゃ」
ましろは少し首を傾げながらも、俺の方へ戻ってくる。
「じゃあ次は、ソーマね!」
――ちなみに俺は、出力13の総魔力量208でした。
これも毎年検査している結果とほとんど同じだった。
「やったー! ソーマに勝った!」
ましろはぴょんぴょんとジャンプして、喜びを全身で表していた。
なんかちょっと悔しい。今後のためにも魔トレでもするか。
といっても、すぐに数値が増えるわけでもないんだけどな。
そんなことを思っていると、少し離れたところで、凪隊長と久遠副隊長の会話が耳に入ってきた。
「久遠はましろちゃんが進化した理由、気にならないのかい?」
「気にはなる。
――じゃが、知らねばならぬ理由もなかろう?」
その声は、どこまでも静かだった。
……たぶん、この人は。
理由よりも先に、ましろという存在そのものを受け入れている。
今は、それで十分なのだと。
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