第十話 作戦会議
この作品を選んでいただき、ありがとうございます。
初めての作品になります。至らない点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
更新は毎週火・金予定です。
会議室の空気は重い。
ここに集まったのは、俺とましろ、それに凪隊長と久遠副隊長の四人。
しかし、俺の隣のましろだけは明るい。
椅子の上で落ち着きなく足をぶらぶらさせて、ワクワクした表情をしている。
「まずは初配信としては合格かな。……話題にはなった」
隊長が口を開くと、ましろはビシッと背筋を伸ばした。
確かに視聴回数はえげつないし、チャンネル登録者も三百万人を突破してしまった。
それほどまでに魔人というインパクトは強いということだろう。
しかし、あくまでそこだけ見れば……だが。
「しかし……思ってたのとは違いますね」
俺が言うと、隊長は苦笑してタブレットを差し出した。
「そうなんだ。これを見てくれよ」
そこに表示されていたのは、とある番組がSNSで取ったアンケート。
・魔人だと思う:15%
・思わない:73%
・わからない:12%
ましろにもその数字が頭に入ったのだろう。ぱちぱちと瞬きをして、こてんと首を傾げた。
「……ましろ、マジンだよね?」
「ああ、そうだな」
俺はそう言いながら頭を撫でてやる。
隊長はそれをチラッと見て、バツの悪そうな表情で続けた。
「それに動画のコメントもこんなのばかりだ」
タブレットの画面には、容赦ない文字が並んでいた。
:AIでフェイク動画作ってるってマジ?
:猫のコスプレさせてるのやばい
:魔人の証拠出して
予想以上に酷い。
もちろん好意的なコメントもあるにはあるが、埋もれてしまうぐらい少ない。
「なんて書いてるの?」
しまった。ましろが覗き込んできた。
咄嗟にタブレットの向きを変えて、見えないようにする。
「えっと……可愛いって言ってくれてる人がいるな」
嘘ではない。このコメントも少なからずある。
「うん! ましろかわいい! みんなそう言ってくれる!」
よし、なんとか誤魔化せた。ギリギリだけど。
「んー……でも、ましろって“マジン“だよね」
ダメだったようだ……。
普通に見られていたっぽい。
しかし、落ち込むと思っていたけど、本人はあまり気にしていないように見える。
そこだけは本当に助かった。
「我にも見せてくれ」
そう言われたので、副隊長にタブレットを渡す。
しかし、その直後、
バキッ。
その音と同時に、全身が凍りついた。
怖……。
副隊長の周囲から、あり得ないほどの魔力が滲み出していた。
「こやつらを生かしておく意味はあるかえ?」
怒鳴ってはいない。むしろ、静かすぎる声。
……だけど、それが逆に恐ろしい。
「お、落ち着いてください。
俺もましろが侮辱されて、許せない気持ちでいっぱいです。
しかし、魔人はそれほど稀有な存在ということです。
魔人だと理解してもらえれば、相手の考えも変わると思います」
自分でもびっくりするほどの早口で言い訳をしている。
だけど、副隊長みたいに純粋に怒れるのは、少しだけ羨ましい。
しかし、副隊長のせいで空気が重い……。
そんな中、ましろが声を上げた。
「ねーねー、あいさつの話はまだ?」
ましろの言う挨拶は、チャンネルの“開始挨拶”のことだ。
「こんにちは」では味気ないということで、新しいものを考えることになっていた。
空気が悪かったので、非常にありがたい。ちょっとした息抜きには良いだろう。
隊長もそう思ったのか、ましろに話を促す。
「もう考えてきたのかい?」
「うん!」
そういえば、少し前から何か考え込んでいる様子だった。
なるほど、これを考えていたのか。
「見ててね!」
そう言うと、椅子からシュタッと立ち上がり、挨拶を始めた。
「んーーー、みゃみゃ! みなとはらましろチャンネル、はっじまーるよー!」
しかも両手を胸の前で猫の手みたいに曲げて、ちょこんと首を傾げるポーズまで付けてきた。
これぞ猫って感じで、可愛く仕上がっている。
「可愛いではないか。我はそれで良いと思うぞ」
副隊長に笑顔が戻る。
会議室の空気も一気に温まった。
ナイス、ましろ!
しかし、
「うんとね! これをみんなでやりたい!」
「え? 俺もやるの?」
「うん! 前ね、ドウガで見たの! みんなでやりたい!」
その無邪気な瞳に押され、俺は変な汗をかいた。
「いいではないか。蒼真がやるのも可愛いではないか」
ちょっと待ってくれ。流石にあれは恥ずかしい。
「副隊長もやらないとダメなんですよ?」
だけど、副隊長は胸を張って答えた。
「我は美人じゃからな。そんなポーズ、余裕じゃ」
くそ……。これだから美人は……。
「じゃあ、挨拶はそれで決定。次の動画からやっていこう」
くそっ! こっちもか!
まあ、隊長も男なのに可愛い見た目をしているからな……。
「やったー!」
挨拶はあっさりと決まってしまった……。
「さて、本題に戻ろうか」
隊長がそう言うと、副隊長の目つきがまた鋭くなった。
しかし、隊長がすかさず続ける。
「別に魔人だと証明すること自体は、そこまで難しくはないと考えている」
「なんじゃ、言ってみよ」
「僕か久遠の力を見せれば、視聴者は納得するだろうね。
少なくとも、この部隊には“魔人がいる“って分かってもらえるさ」
それが一番簡単な方法だと俺も思うけど……。
「なんじゃ、そんなことで良いのか。
ならば、我が力を見せよう」
「内容次第では、編集ややらせを疑われてしまうと思うのですが」
念のために、懸念点は言っておく。
「ふむ。ならば、我が眷属――竜を喚ぶ」
竜を喚ぶ?
「え、えっと、どうやって喚ぶんですか?」
「普通に喚ぶだけじゃが?」
「……ああ、そう言えば、君たちには言ってなかったね。
久遠は竜の頂点――竜王なのさ。だから竜ぐらいは簡単に喚べるんだよ」
口が勝手に開いてしまう。
竜の魔人ってのは見た目でなんとなく分かってはいたけど、竜王ってことは、その王ってことだよな……。
「でも、久遠。あまり派手にはしないでくれよ? 軍もうるさいしね」
「ああ、我に任せよ!」
「ソーマ、ソーマ! りゅうさんだって! 楽しみだね!」
「お、おう……」
テンションMAXのましろとは裏腹に、俺は胃がキリキリする。
しかし、これで次の方針は決まった。
――その後、SNSで告知を行った。
【明日14時よりライブ配信します!】
思い立ったが吉日、というべきか。本番は明日。しかも初のライブ配信だ。
AIやCGだと疑われたくないので、このタイミングにやるしかない。
詳細は副隊長任せで台本も今のところ穴だらけ……正直、ものすごく不安だ。
どうか、明日はうまくいきますように!
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