第7話♥過干渉がうっとうしいって思うのは仕方ないでしょ
第2節スタートです!
ローテは崩さずにユミィ視点です。
馬車を待機させていたセグおじさんのもとへ戻ったわたしたちは、もうあたりも日が暮れているということで、とりあえずミュアちゃんと名乗った兎獣人の女の子を連れて、ひとまずユボーラ村まで帰ることにした。
もう村まであと少し、というところでのことだったので、こみ入った話もろくにできないまま、わたしたち4人は村に到着した。
ミュアちゃんはとりあえずセイヤくんちでもある村長さんとこに行くことになって、わたしとアイちゃんもまずはそれぞれ自分ちに寄ることになった。
「ただいまぁ~。」
ドアを開けて玄関に入る。
「おっ!おかえりユミィ!」
「ユミィちゃんおかえりっ♪」
「おかえりなさい。ユミィ。疲れたでしょ。」
「無事で良かった。お疲れさま。ユミィ。」
「ユミィおねえちゃんおかえりぃ!」
アデル兄ちゃん、カイラ義姉さん、ママ、パパ、弟のアルカスの家族全員が玄関でわたしを待っていて少しびっくりした。
「ついにユミィも冒険者かぁ~!」
「ユミィちゃんユミィちゃん!
その革の胸当て?かっこいいわねっ!!」
「ユミィ?お腹すいてない?」
「コラお前ら、ユミィは疲れてるだろう?!」
「ユミィおねえちゃん弓ぃ見せてっ(ぷぷ)」
いや待って。
ひとりずつしゃべってくれないかな。
てゆか、話進まないでしょこれw
「ん。ちょっとお風呂もらってきていい?
そのあとみんなとお茶飲みながら
リビングでお話するからっ。」
みんなの間を突っ切って、長弓を置いて革鎧を脱いだ。
「えっおいユミィ!もっと顔を見せておくれよ!」
「ユミィちゃん?お背中流そうか?」
「ユミィ、ご飯はなにがいいかしら。」
「そうだな母さん!今日はユミィのお祝いだからな!
ユミィの大好きなホットシチューパイはどうだ?」
「ユミィおねえちゃん今日は一緒に寝たい!」
―――いや、まじうるさいw
バタン
家族全員を手で制して、脱衣場に入りドアを閉めた。
そして魔道具に魔力を通して、水が張ってあった浴槽の水をあっためる。
「――――ふーう。」
あったまったお湯に身体を沈めると、心地よいぬくもりが疲れをほぐしてくれてるような安らぎに包まれた。
うちはそこそこ大きな果樹園をやってるので、経済的にもあるていどは裕福だ。
収穫した果実は村の卸市場を通すと、だいたいキャスティアとかの近隣の大きな街や王都とかにも流通して、けっこうな売上になってる。
なんか、ちょっとした人気のブランドになってるらしくて、我が家もそれなりの水準の暮らしを送らせてもらっていたりする。
こないだまでパパが頑張って果樹園を切り盛りしていたけど、最近になって結婚したお兄ちゃんが跡を継いで、パパは隠居していつもおうちでニコニコ過ごしている。
ただでさえママは過干渉ぎみだったんだけど、最近家族になったお兄ちゃんのお嫁さんのカイラお義姉さんとパパが新たに加わって、なおかつお兄ちゃんも弟もシスコンばりばりで、わたしに対する干渉がホントのホントにガチのまじでうざかったのだ。
「そりゃー、家を出たいって思うの、ふつーでしょ。
うっとうしいったらありゃしない。」
だから、セイヤくんからの冒険者になるお誘いは渡りに船だったんだよね。
今日はじめてモンスターと戦ったけど、自分でも思った以上にやれたし、手ごたえをすごく感じた。
ちょっと心配してた命のやり取り?とかも、ためらいとか罪の意識とかほぼなかったし。
「―――楽しくやっていけりゃ、
あとはなんとでもなるもんね♪」
ほどよくあったまったわたしは、浴槽から立ち上がった。
* * *
時間もちょっと遅かったけど約束だったし、家族全員すごく残念がったけど、わたしはお風呂を出たあと身なりを整えて、セイヤくんちに向かった。
ご飯も食べてくるって伝えた時はさすがに申し訳ないなって思ったけどw
ごめんねみんな。
お茶とおしゃべりはまた明日ねっ☆
まぁ、いいや。
そんなこんなでわたしはセイヤくんのお父さんでもある村長さんちのリビングに通された。
「アイちゃんこんばんはっ!」
「んっ!ユミィさっきぶりっ!!」
アイちゃんとキャッキャしながら、2人並んでソファーに腰かけた。
「うっす。」
「あっ、どうもですっ……。」
テーブルを挟んだ向かいのソファーにはセイヤくんとミュアちゃんが座っていて、お誕生席?てか主席にはセイヤくんのパパである村長さんが座っている。
「……みんな揃ったみたいだから、
そろそろ始めさせてもらおうかな。
とりあえずミュアさんには申し訳ないけども
先に我々の案件を済ませてもいいかな?」
村長さんがミュアちゃんにかるく お詫びした。
「あ、はい……。私は大丈夫ですっ。
今日は、もう夜ですし…………。」
たぶん村長さんはミュアちゃんから、少しくらいは話を聞いてはいるのかな。
わたしたちはミュアちゃんの名前くらいしか聞いてないけれど。
おたがいいちおう納得してる感じがした。
ほんで、その言葉にうなずいた村長さんが口を開いた。
「まず、セイヤ。そしてアイちゃん。ユミィちゃん。
無事に冒険者承認おめでとう!
わたしとしてもホッとしたよ。」
「ハハッ! 余裕だっつーの。」
「いえっ! ご期待に添えることが出来て
なによりです!」
「ほんとに! 村長さんからは援助も
いただいたりして本当にありがとうございます!」
ドラ息子はドヤ顔かましてたけど、わたしとアイちゃんは恐縮して深く頭を下げた。
と、同時に、わたしは改めて今の状況にすごくすんごく困惑していた……。
まず、わたしとしてはありがたい話ではあったけれども、自分ちの息子であるセイヤくんはまだしも、わたしやアイちゃんの装備のお金まで出してくれるのは、なんとなく意味がわからないな、と思っていた。
つぎに、セイヤくんが、わたしとアイちゃんを冒険者に誘ってきた話だけど、、、
わたしは過干渉な実家がイヤで飛び出したくて。
アイちゃんは聖女になる修行に行ってこいって神父さまに言われて。
……そんな感じの旅立ちの理由みたいのがあったけれども。
わたしたちを誘ってきた、肝心のセイヤくんの動機は?
『名声を得る』『大金を掴む』とか言ってたけど、ほんとにそうなのかな。
そもそも、村長さんからしてみれば、かんたんに跡取り息子を旅になんか出させちゃっていいのかな?
腑に落ちないと言えば、腑に落ちない。
……なんで今まで気にしてなかったんだろ。
そんなわだかまりを感じつつ、わたしはセイヤくんを見た。
「……!」
セイヤくんは、わたしが今まで見たこともないけわしい顔をしていた。
「……セイヤ。」
「……おう。」
村長さんの呼びかけにセイヤくんがこたえる。
「どうか、母さんを、メリアを……頼んだ。」
「ああ。オレが必ず探し出して連れて帰る。」
まっすぐにおたがいを見つめながら、親子が言葉をかわした。
―――えっ? えっ??
確かに、セイヤくんちにはお母さんがいない。
わたしたちは、病気で亡くなったって聞かされてたけど、、、真相は違ったんだろうか……。
「……ごめんね。アイちゃん。ユミィちゃん。
こっちで話を進めてしまって。」
村長さんがわたしたちに向き直り、申しわけなさそうに頭をさげた。
「……あっ、いえ。」
「大丈夫です……。」
わたしとアイちゃんも頭をさげる。
そして、村長さんがわたしたちにほんとうのことを教えてくれた。
「メリア、わたしの妻は冒険者だったんだ―――」
村長さんが言うには、セイヤくんのお母さん、メリアさんは、そこそこ実力のある冒険者で、村長さんと結婚したあとも本来の気質のせいか、たびたびクエストだったり、またはぶらっとした旅だったりと、不定期に家をあけることが多かったみたい。
でも、セイヤくんが4歳くらい(つまりわたしたちも4歳くらいだね)のときに旅立ったっきり、ずっと帰ってこなくなってしまったらしい……。
「…………メリアの護符が、まだ、
白いままなんだ…………。
メリアはまだ、生きているんだ…………。」
ゴールドクラス以上の冒険者に配布されるという、ギルドカードと連動した護符のことかな。
持ち主が死んでしまうと、ギルドカードも黒く灰になって消える。カードと連動している護符も同様に灰になって消える。
どこかの領主さまが、実力のある冒険者をかかえこんで管理するために開発したものだって、ミュラーおじさんが現物を見せて教えてくれたっけ。
メリアおばさんの護符がまだ、白く輝いてるなら、確かにメリアおばさんはまだ生きているはずだ。
「……だからよ。オレは、母ちゃんのために。
本当は、オレは母ちゃんを探す旅に出るために
冒険者になろうと思ったんだ。
……ずっと言い出せなくて、悪かった。」
セイヤくんがわたしたち2人に頭を下げた。
「えっちょっ!待って頭上げて!?」
「セイヤくん謝らなくていいから話を聞かせて?」
あわててセイヤくんに2人かけよって、頭をあげさせる。
「いや、なんつうか、
騙したわけじゃないんだけどよ……、、、」
「セイヤがアタシたちを騙すとかそんなん
できるわけないじゃん!」
「そうだよ!わかるように話して!?
ちゃんと聞くから。ほんとのこと……。」
「ああ……。」
わたしたちは再び腰をおろし、セイヤくんが口を開くのを待った。
「―――オレはガキの頃から、
帰って来なくなった母ちゃんを
探すために冒険者になるつもりだった。
でも、オレ1人じゃ力が足りないって思ってて。
んで、もし出来たら、お前らも一緒に冒険者に
なって旅に出れたら心強いなって思って。
……でも、お前らにはお前らの考えがあって、
お前らの都合がある…………。
それでも、オレが『母ちゃんを探しに行くから
一緒に冒険者やってくれ』って言ったら、
きっと、いや絶対『うん 』て言ってくれたと思う。
……本当は冒険者になんかなりたくないかも
しれなくても『うん』って言ってくれるって
オレは知ってる…………。
だから、だからよ……、
最初から本当の事なんて言えなかったんだ。。。
無理にオレの都合にお前らを巻き込んじまう
気がして………………。」
セイヤくんは唇をかみしめて、うつむいていた。
「……だから、軽い感じで冒険者に誘って、
もし、もしお前らがOKしてくれたら、その時、
初めて頭を下げて、母ちゃん探しの
協力を頼もうって、そう思ってたんだ……。」
わたしと一緒にずっと黙って話を聞いていたアイちゃんが立ち上がった。
「なんだそれ! 水くさい水くさい水くさいよっ!!
セイヤ! アタシたちの仲でしょ!!??」
わたしも同時に無意識に立ち上がっていた。
「そうだよっ!! セイヤくん!!
わたしたち3人でセイヤくんのお母さん、
探しに行こうよっ!!!
せっかく! わたしたちみんな!!
冒険者になったんだからっ!!!!」
わたしのほほを涙がつたった。
「おっ……、お前ら………………。
あっ、ありがとう、な…………。」
セイヤくんも顔をふせて、ふるえていた。
「そういうわけで、アイちゃんとユミィちゃんの
装備に関してもわたしが融通させて
もらったんだ……。
事後報告になってすまない…………。」
村長さんまで頭をさげた。
―――あっ、そういうことか。
きっと、事前にわたしのパパやママにも話を通していたんだろうな。
だから過干渉なうちの家族が、わたしが冒険者になることを引き止めなかった。そうなんだろうな。
そして、きっとアイちゃんちもそうだったんだろうな。
「大丈夫です。だから顔をあげてください村長さん。
わたしたちにまかせてください。」
「そうそう! アタシたちがぜったい!
メリアおばさんを連れて帰るからっ!」
わたしはアイちゃんとアイコンタクトをかわしてうなずきあう。
「あっ、ありがとう、、、
2人ともありがとう…………。」
見ると、村長さんも泣いていた。
「アイ! ユミィ! お前らのことは
オレが!絶対!ぜったい!護るからなっ!!!」
―――くうっ!
セイヤくんの言葉が脳天をかけめぐり、指先までしびれてしまった。
あぶない。あぶない。
今はそんなもだえてる状況じゃない。
落ち着けユミィ。
セイヤくんの言葉はわたしだけじゃなくて、アイちゃんにも向けられた言葉だし、
自分の都合に巻き込んでしまうわたしたちをせめて危険な目から少しでも護ろうというセイヤくんの誠意なんだから…………。
それにしても、自分のお母さんを探す旅か……。
家族って大事だもんね。
あ。わ、わたしもね、ちゃんと、家族を大事にしようって気持ちはね、ちゃんとあるんだよね……!
ちょっと過干渉がうっとうしいって思ってるだけで、ほんとうにみんなのこと大好きなんだからねっ……!
「―――では、待たせて済まなかった。
ミュアさん、あなたの話を聞かせてくれないかな。」
この場が落ち着いてきたタイミングで、村長さんがミュアちゃんに話を振った。
「えっと、恐れ入ります。
すみません。本当に。」
もらい泣きしてたミュアちゃんが、涙をぬぐって立ち上がった。
「えっと、セイヤさん、アイさん、ユミィさん。
改めて危ないところを助けていただいて
本当にありがとうございました。」
「いやいや。そんな気にすんなよ。」
「冒険者なら当たり前だからねっ。」
セイヤくんとアイちゃんが言葉を返す。
「でも、なんであんなところに1人でいたの?
さすがにあぶなすぎだと思うんだよね。」
わたしは気になっていたことをミュアちゃんにぶつけてみた。
ミュアちゃんは、真剣な顔で答えた。
「私は、このユボーラ村を目指していました。
この村にいらっしゃるという、
――聖女さまに、会うために。」
2節に入ったということで、
3人の旅の目的とか少しずつ明らかになってきました。
(旅立ちすらまだだけどw)
ほんで、セイヤくんの背景にまつわるお話なので、少しじっくりと書かせて頂きました。
暖かい家族がいるのが当たり前なユミィと
いなくなった家族を想うセイヤを対比させてみたんすけど、
あんま思うようにいかなかった……。




