第38話◆しあわせのかたちと、こころのかたち
いつぞやの昔のお話が長くなりそうで
「後半に続く」とか言って逃げたんですけど
結局なかなか書けなかったので、
今回ちょっとまとめてみようと思います。
細かいとことか矛盾ないように詰めたり、
自分なりに深堀したり、設定見つめ直したりしたので
少しお時間頂きましたすみません。
礼拝堂で倒した下級悪魔は、中ボスというより複数ボス?のうちの一体?だったっぽくて、トレジャー回収したあとに帰還用の魔法陣が出てきた。
そんでもボルさんからの依頼の『呪い返しの護符』は手に入らなかったので、アタシたちは次に王の間に向かうことにした、んだけど、、、
アタシはちょっと気になってることがある。
「―――ねぇ、セイヤ…………。」
さっきと同じように、先頭はユミィとクリストフさん。最後尾はレイトとナーシュで隊列を固めているので、アタシは同じく中列を並んで歩いているセイヤに声をかけた。
「――あん? どした? アイ。」
セイヤがアタシに顔を向けた。
「……いやさ、下級悪魔が依頼の護符を
落とさなかったから、アタシたち王の間のボスに
向かってるわけじゃん?」
「おう。そうだな。」
「でも、もしかしたらさ、下級悪魔が
たまたま護符を落とさなかっただけで、
ほんとは王の間のボスじゃなくて、
礼拝堂のほうのボスが護符を
ドロップするんだとしたら……「あ~~……、、、」
アタシの言葉にセイヤは腕を組んで考え始めた。
歩きながら。
「そんでもよ、ボス級になるとよ、復活するまでの
タイムラグが24時間くらいあっからよ、
これから行くボスもドロップしなかったら
王宮跡に再チャレンジだな…………「げぇ!」
いやまじ聞かなきゃよかったよ……。。。
「……まァ、下級悪魔はさすがに
1回戦ったし立ち回りとかなんとかなるだろ。
クリストフさん頼みなのは
変わらねぇかもだけどよw
オレらが護符手に入れるまではなんとか
あの坊ちゃんにゃ、
呪いに耐えてもらわねぇとなwww」
「ふふふっ。笑っちゃ悪いけど、笑っちゃうw」
「人の命がかかってるのになwww」
それでも、出来るだけ早く約束のものを手に入れて届けてあげないとって気持ちには変わりないんだけどね。
* * *
お城のエントランスまで戻ってきたアタシたちは、王の間に向かう前に少し食堂とかそういった施設を探索することにした。
さすがにお宝とかそういうの目的じゃなくて、ちょっと比較的安全だろうって思われる場所で休憩しようって流れになったからだ。
クリストフさんの案内で、エントランスから今度は左に進んで、アタシたちは大きめの広間にたどり着いた。
「―――フム。
なかなかの静謐な空気だな。」
クリストフさんが頷く。
言われてみれば確かにこの空間は、よそより魔素が薄い気がするもんな。
「このダンジョンにも"安全地帯"が
あったってことか。
したらちとここいらで休息するか。」
「おけっ」「りょ♪」「賛成よ愚図」「はい」
セイヤのひと言で、食堂だったっぽい大広間で休憩を取ることになった。
なんでなのかどういう仕組みなのかはまったくわかんないんだけど、ある程度のおっきさのダンジョンにはいくつか魔物が出てこない"安全地帯"が存在する。
まぁ、この世界のルールというか、きっとそういうもんなんだろうな。
「……それにしても本当に綺麗なメダルね……。
身につけられないのが残念だわ……。」
レイトが、ナーシュが首から下げている銀色のメダリオンを羨ましそう見ていた。
レイトは銀製品大好きだもんな。
「……でも、これ、本物なんですかね……?
あのボスを討伐したのって、別に
僕達が最初って訳じゃないし……。」
ナーシュがメダリオンを手に取った。
「ふむ。恐らくドロップ判定のお陰だろう。
サルアーフ大神官の血統がパーティーに
いたことで基準が満たされたのだろうな。」
「…………本当に、僕が、、、
大神官の、末裔………………。」
クリストフさんの言葉にナーシュがいまだに信じられないって顔をしている。
「んね、大神官のメダルがあるんなら、
女王サマのそういうのもあったりするの?」
ユミィがお気に入りのマグカップで紅茶を飲みながら口を挟んできた。
「当然存在しておったぞ。
金色に輝く女王のメダルがな。」
「やっぱ金なんだ。」
思わずアタシも言葉が出ちゃった。
「―――あの、クリストフさん…………。
僕の血筋が、昔の王国の大神官を引き継いでるなら、
やっぱり聞いておきたいです……。
どうして、王国は滅びたのですか……?」
「私も詳しく聞いておきたいわ。
だってもう他人事とは思えないもの。」
白黒エルフの2人が、まっすぐクリストフさんを見つめていた。
「―――――フム。
先日は話の途中で朝が来てしまったものな。
この機会だ。私の知っている全てを
語るのも吝かではないが、
セイヤ、構わないか?」
きっと長い話になるんだろうな。
だからリーダーのセイヤに、まとまった時間をもらってもいいか?っていう意味なんだろうな。
「あぁ。かまわねぇよ。
多少はオレも気にはなってたしな。
ボルさんとバーンさんにはちっとだけ
我慢してもらおうぜ。」
セイヤはニヤッと笑って、クリストフさんに快諾した。
* * *
前の飲み会の時にクリストフさんから聞いたように、今から1000年前のサルアーフ王国は、世界樹を中心とした大森林で、ウッドエルフとダークエルフの2種族が手を取りあって繁栄していたんだって。
魔物を生み出す魔素を世界樹が吸い上げて、それを魔力や生命力に変換して、その力をエルフたちは受け取ることで世界樹の恵みをふんだんに活用して、その能力は本当にとんでもないものだったらしい。
今じゃ考えられないけど、寿命とか何百年もあって、ウッドエルフは上位精霊級の魔力と神聖力、ダークエルフは巨人族に匹敵する身体能力を持っていたとか。
「私がサルアーフに来たのは、特になんの理由もなく
ただの旅の途中と言うか、偶然だったのだ。」
クリストフさんが遠い目でどこかを見つめていた。
その目は、今まで見た事ないほど、哀しみの色が浮かんでいたように見えた。
「……最愛の妻を喪った後だったからな、
何処ぞかで野垂れ死ぬつもりだったのだ。」
「……え? 奥さん?」
ユミィがびっくりしたみたいに反応した。
「…………うむ。
もう1000年以上も前の事なのだが、
今でも昨日のように思い出せる……。」
「も、もし良かったら、その、
クリストフさんのお話も
話せる範囲で聞かせてもらえるかしら…。」
レイトが言葉を慎重に選んだ。
「そうだな。いい機会だ。
若いお前らに聞いて貰えたら私も嬉しい。」
そしてクリストフさんは、半生をうちらに語ってくれた。
「王国の話と関係なくて申し訳ないが、
聞いてくれるか……?」
彼の言葉にアタシたちは黙って頷く。
子爵級とはいえ、夜を統べる上級不死者だったクリストフさんは、他の吸血鬼の例にもれず、共生関係だった人類とは友好的なスタンスなのはアタシから見てもわかる。
そんな中、普通の人間種だった奥さんと出会って恋に落ちたのは必然だったのかもしれない。
淡々と思い出を語るクリストフさんの話を聞いてて、なんとなくそう思った。
「妻は、バティカは、私の総てだった。」
悠久の刻を生きる吸血鬼と、数十年で老いて死んでしまう人間種。
寿命だけじゃなくて、生活習慣も価値観だってなにもかも違うはずだよね。
それでも、お互いを強く愛し合うことで、限られた時間がかけがえのないほどの"しあわせ"となることを、クリストフさんは語ってくれた。
吸血鬼は人間種やエルフなど亜人種を「眷属」とすることで、同じくらい永い刻を与えることが出来るって聞いた。
でも「眷属化」してしまうことで、その人の魂が「隷属化」してしまい、主の忠実な下僕となってしまうらしい。
クリストフさんは、、、
いや、クリストフさんとバティカさんは、、、、
そんな風に歪められた、偽りの永い刻よりも、お互い対等な短くても真実の関係を選んだ。
「バティカと過ごした数十年は、
まさに至福の時間だった。
恐らく私にとってはあれ以上の幸せな時間など
存在しないだろうな。
…………覚悟はしていたのだがな、
実際にしっかりと最期まで妻を看取ると、
私自身どうでもよくなってしまってな…………。」
『純愛』
アタシの大好きなその言葉が頭にうかんだ。
そしていつもならそれっぽいお話に食いついて、胸をときめかせてたんだけど……。
なぜだろう。
胸が、ぐっと締め付けられて、なんでか涙が出そうになった。
アタシも、そんな恋愛をしてみたい。
お互いを対等な存在として、尊重して優先して慈しみあって生きてみたい。
アタシはこっそりセイヤを見た。
次に、自分の胸から下げている十字架を見た。
セイヤには、ユミィがいて、アタシは神様に仕えている身。
難しいのかなぁ。
難しいんだろうなぁ。
目をうるうるさせながらナーシュに寄り添っているレイトがとても羨ましく見える。
―――まぁ、解答なんて考えても出てこないよね。
いつになるかわからないけど、聖都の大聖堂でお祈りして、自分と、そして女神様と向き合って、それから考えてみよう。
いつになるかわからないけどw
そもそもアタシはパパからしか教えを受けてないから、正確に教義とかわかってる訳じゃないしな。
確か、ノネミアさまは慈愛の神さまだから『産めよ増やせよ』って教義だった気がするし、パパとママも神職なのに結婚してアタシが生まれたし、、、
でも神職同士の結婚以外、神職が結婚したって話は聞かないからなぁ、、、、、
「……アイちゃん? だいじぶ?」
「へ?」
ついつい考え込んじゃったアタシをユミィが気遣ってくれた。
「あ、うん! だいじぶ!!」
「フフン。聖女でも色恋話は心惹かれるか。」
「だーかっらっ!! アタシは聖女じゃないって!」
思わずクリストフさんに言い返しちゃったけど、これはクリストフさんなりの気遣いなんだろうなってのも何となく気付いてるけど。
「―――さて、話の腰を折って悪かった。
そんなこんなで、私はサルアーフ王国に
辿り着いたのだ。」
前書きに書いた通り今回で終わらせようと思ったんですが、
ついクリストフさんの背景書きたくなって、
結局今回も核心には触れられませんでしたw
想像の余白を残してふわっと流すことも考えたんですけど、
やはり1章の大詰めに大きく関係してくるので、
頑張って書いていこうと思います。
色々ぐるぐる考えて、
書いては消し書いては消しを繰り返してるので
いつもよりお時間頂いてますごめんなさい。
(2026/02/27)




