第20話◆急いで行くから待っててね!
パーティーが分断されちゃいましたが、
無事に合流出来るのでしょうか……?
責任感じちゃってる聖女サマ視点です。
地下2階に降りても、出てくる敵は不死系ばっかだった。
「【慈悲の雨】」
こないだ覚えたばかりのレベル5神聖術、対アンデッド範囲攻撃魔法で、ファントムとナイトストーカーを一掃する。
悪霊や屍鬼あたりの低位不死系ならまだ神聖術レベル2の【浄化】でこと足りるんだけど、ここに出てくる不死系モンスターは脅威度Dランククラスの中位不死系ばかりで、少しレベルの高い神聖術じゃないと効果が出ない。
「急ご。」
ドロップした魔石を素早く拾ってセイヤをうながす。
「お、おう……。」
ゆっくりしている暇なんてない。
アタシが浅ましい欲をかいたせいで、ユミィが危険な目に遭って、大変なことになってるかもしれないんだ。
セイヤの言葉じゃないけど、
自分を責めるなら後でも出来る。
そん時に飽きるくらい後悔すればいい。
でも、今出来ることは今やり切らないとダメなんだ。
アタシに出来ることはモンスターをなぎ倒しながら、ユミィたちがいる場所へと少しでも早くたどり着くことだ。
「アイ、魔力はまだ大丈夫か「大丈夫まだ平気。」
先頭に立つセイヤが気遣ってくれてるけど、アタシは即座に返事する。
どこか遠くに飛ばされてしまったユミィのことだけでなく、こうやってアタシのことも心配してくれているセイヤの優しさに、気を抜くと涙が出そうになる。
でもダメだ。
ここで甘えてはダメだ。
セイヤ好き。
大好きだよ。
でも、、、
今は、これ以上アタシに優しくしないで。
今のアタシは優しくされる価値なんてない。
大好きな、大切な幼なじみを、欲に目がくらんで大変な目に遭わせておいて、なにが聖女だ。
自分自身に心底嫌気がする。
アタシなんかが聖女であるはずはないんだけど、いつも周りから「聖女」「聖女」言われて、きっと無意識のうちにまんざらでもなく調子に乗っていたんだろう。
自分にホント腹が立つ。
たとえ違っても、聖女と呼ばれるからには少しはそれに見合った働きをしないと。
そうでないと、
アタシはユミィにも、セイヤにも顔向け出来ない。
そうじゃないと、アタシは―――――
「えっと、アイさん?」
「……え?」
地下3階に降りて少し進んだところで、最後列のナーシュが後ろからアタシに声をかけてきた。
「少し、肩に力が入りすぎです。
僕が召喚してる地精霊も心配していますよ……。」
ナーシュも周囲の警戒のために、光精霊とは別に、いつもの水精霊ではなく、地精霊を召喚してる。
臆病な地精霊は、些細な変化にも敏感だかららしい。
「あっ、うん……。でも、、、」
「そんなに気に病まなくても大丈夫ですから。
今のペースだと潰れてしまいますよ。」
返事を返そうと振り向くと、優しい笑顔でナーシュが労わってくれる。
そんな価値なんてアタシにないのに。
「いやでも今は「セイヤさん!」
頑な態度を取ろうとしたアタシの返答は、ナーシュのセイヤへの呼びかけで潰されてしまった。
「……どうした。」
慎重だった歩みを止めたセイヤが振り向く。
「レイトに着けている風精霊との繋がった感覚だと、
恐らく2人はここの下の階、地下4階にいるようです。
急ぎたい気持ちはやまやまですが、
ここまで全力で進んできたので、どうでしょう。
ここらで小休止でも。」
―――え!!?
一刻も早くユミィたちを助けに行かなきゃなのに、休む暇なんか……!!
「そ、そうか? でもよ……やっぱ「そうだよ!!」
ナーシュの提案を否定しそうだったセイヤの言葉の流れにかぶせて、アタシも否定に回る。
「アタシならまだまだ行けるよ!
こんなとこでぐずぐずするより、今すぐにでも
進ん「あ~、でも少し休むって言っちゃいました。」
………………。
「…………は?」
休む? 休むって言った?
いつ? どこで? 誰に??
「……もうレイト達に休むと伝えたってことか?」
セイヤがアタシの言いたいことを代弁してくれた。
それにナーシュが言葉を返す。
「はい。つい先ほど、ですが、
風精霊を通じて、レイトたちに
無事に地下3階まで来たけど、
万全を期したいので、ここらで少し、
休憩させてもらう、と。」
「……んで、レイトたちは?何て?」
「こっちは心配要らないから、
慎重に気をつけて来てくれ、と。」
ナーシュの説明を聞いたセイヤは、少し目を閉じてなにか考え込んだ後、口を開いた。
「……確かに、ここは外じゃない。
ダンジョンだ。さっきのトラップみたく、
何が起こるかわかりゃしねぇもんな……。
ついつい気が急いちまったが、
慎重に行かなきゃ、だよな……。」
セイヤの目が柔らかくなった。
でも、でもアタシはじっとなんかしてらんない。
アタシのせいで、ユミィもレイトもトラップに引っかかってしまったんだ………………!
「いやでもさ!「ユミィ」
まだ反論しようと口を開いたアタシの言葉は、セイヤに遮られた。
そして、大事な宝物を慈しむかのような優しい目で、アタシの瞳を覗き込む。
「あんま自分を責めんな。」
そう言いながら、片手でアタシを抱き寄せた。
だから。
だからさぁ。
アタシに優しくしないでよ。
こんなアタシに優しくなんかしなくていいよ。
アタシ、浅ましいからさぁ。
自分のしちゃったこと忘れて、
甘えたくなっちゃうじゃんかぁ!!!!
「ふぇぇぇぇぇぇぇ。」
気付いたらアタシはセイヤにしがみついて泣き出してしまっていた。
そんなアタシの頭を、セイヤが ぽんぽん と優しく片手でたたく。
「ほら見ろ。オマエはナーシュの言う通り、
少し張り詰めすぎなんだよ。
よっしここらで小休止な。」
言いながらもう片方の手でマジックバッグから簡易テントを取り出し、魔石をはめて発動させた。
「ふふふっ。では、僕のお気に入りの
紅茶でも淹れますね。」
ナーシュがくすりと笑顔をこぼすと、柔らかい仕草でこちらも自身のマジックバッグから喫茶器具一式を取り出した。
* * *
ナーシュが淹れてくれた紅茶を口に運ぶと、自分でもびっくりするくらい心が落ち着いてきた。
さっきまでのアタシは、確かに気が逸っていたし、焦っていたんだろうな。
自分が原因で大事な仲間に迷惑をかけてしまって、罪の意識を感じて挽回しようとしていたのかもしれない。
そこにユミィに対する後ろめたさと心配が混ぜ合わさって、前のめりになっていたんだろうな。
もうひとくち、紅茶を口に入れる。
―――おいしい……。
「――――――………………。」
深いため息とともに、心のとげがまるくなっていくような感覚に包まれた。
「…そういやよ、
大したことない話なんだけどよ……、、、」
片膝付きながら紅茶を飲んでいたセイヤが口を開いた。
「ナーシュは、何体同時に精霊を召喚出来るんだ?
ここ入ってからずっと光精霊出してるだろ?
あとさっきから地精霊がいて、
ほんでレイトに風精霊付けてんだろ?」
言い終えて、紅茶をごくりと飲み込んだ。
「えっと、精霊術師が同時に使役出来る精霊の数は、
自分のレベルの十の位の数+1体かな。
僕は最近レベル20になったから、
やっと3体同時に召喚出来るようになったんだ。」
ナーシュも質問に答え終えて、紅茶をひと口、口に含んだ。
「なるほどねぇ。
召喚1枠常に彼女に張り付けてるってわけか……。
……てゆっかよ、レイトもよ、
いっつも精霊付けられてたら
面倒くさがったり嫌がったりとか
しねえもんなんかね?」
「んー。レイトは特に何も言ってこないし、
嫌がってる素振りも見せないけど、どうだろう?」
なんかよくわからないので、アタシは男2人のやり取りを黙って聞いていることにした。
「どうだろう?ってお前、もしレイトが
言えないだけで本当は
いっつも監視されてるみたいなその状況を
嫌がってたら「関係ないよ」
ナーシュの声が冷たくダンジョンに響いた…。
「何があっても僕がレイトを護るんだから。
例え嫌われたとしても彼女が無事ならそれでいい。
僕にとって彼女より大事なものなんて、
この世には存在しないんだからね。」
そう言って、ナーシュはニコッと笑って紅茶を飲んだ。
「そ、そうか…………。」
「……あーね…………。」
…………いや、ヤンデレって初めて見た気がするけど、思ったより怖いもんなんだなって思っちゃったよアタシ…………。
なんか知りませんが、
今日もなんとか毎日更新継続出来ましたw
どうでもいいかもですが、
アイちゃんどちゃくそ可愛くないすか?
そうでもない? そうですかすみません笑
(2026/01/24)




