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第12話●もういっこの理由なんて言えるわけねぇだろ

●なのでセイヤくんのターンです。

この回でまた、ひと区切りってとこですかね。

ですんで、ちょいと長くなりました。

ボス部屋の奥にあった帰還用の転移魔法陣で、オレたちは無事にボーグル穴から脱出すると、ミュラーおじさんが外で待機してくれていた。


「お! お前ら無事か? 良かった……!」


何気に最奥まで行ったしボスにも手こずっちまったしで、結構時間かかっちまってたぽくて、ミュラーおじさんは中々帰って来ないオレらを心配して、ボーグル穴に突入寸前だったらしい。


「いやぁ、ちとボスが厄介だったけどよ、

とりま勝てたんで問題ねぇよ。」


オレはミュラーおじさんに笑顔で答えた。


「そうか。ならよかった。

ボスのボーグルリーダーはまだまだお前らには

強敵だろうしな。」


「「「「は?」」」」


ちょっと意味がわからなかった。


ボーグルリーダーなら、道中に出てくる雑魚敵じゃねえのか?


「…………いや、ボスは、脅威度(モンスタークラス)C-の

ブラックボーグルだったんだけどよ「はぁっ??」


ミュラーおじさんの顔色が変わった。


「そ、そんな高レベルの魔物なんか、

ここじゃ見たことねぇぞ!!?」


「いや、おじさん。確かに真っ黒で

めっちゃ硬くて速いボーグルだったよ……。」

「うん。アイちゃんのいうとーり…。

わたしの弓矢もほとんど刺さらなかった……。」


アイもユミィも言葉を繋いだ。


「ど、どういうことだ……?

しかしお前ら、ブラックボーグルって、

マジかよ……! よ、よく勝てたな…………。」


ミュラーおじさんは少し青ざめてた。


「まァ、オレらにゃ聖女さまが

ついてるからな「あー!また言ったぁ!!!」


アイがぽかぽか叩いてきた。


「アタシ聖女なんかじゃないっつーの!」

「ホラ、おじさん、

これがボスのドロップだったんだけどよ。」


じゃれつくアイをとりあえず無視して、オレはミュラーおじさんにブラックボーグルが落とした黒く輝く石を見せた。


「…………これは、黒曜石(オブシダン)、か……。

そこまで高価じゃないが、そこそこレアだな。」


さすがミュラーおじさんだ。

素材にも詳しい。


「へぇ。聞いた事あるな。これが、か。」

「結構鋭く加工出来るから、大きいやつだと

わりと使い勝手がいい素材だな。

ま、この大きさじゃアクセサリーくらいにしか

ならないだろうがな。」


ミュラーおじさんが黒曜石をオレに返してきた。


「……しかし、ブラックボーグルクラスが、

頻繁に湧くようなら、俺1人の手に余る。

村の自警団を再編してこまめに内部を

見回ることにするか。」


おじさんの心配はもっともだ。


あんなレベルのモンスターなんか、そうそう相手してらんねぇだろ。


「んと。とりあえずユボーラ帰らない?

今日中に闇百合の根っこから

気付け薬をバロンさんに作ってもらわなくちゃ!」


おっと。ユミィの言う通りだわ。


「そうだ! そうだったな!

とりあえず帰るか。つっても油断せず、

気を引き締めて帰るぞ!!」


「おけ」「りょ」「わっわかりましたっ!!」


3人の返答にミュラーおじさんが少し飽きれた顔を見せたので、オレは肩をすくめておどけてみせた。




* * *




ユボーラ村に無事帰還した頃には、もう日も傾きかけていた。


薬師(くすし)のバロンさんは、あとは闇百合の根を調合すれば完成ってとこまで段取りを整えた状態でオレたちの帰りを待っててくれていた。


素材数も充分に足りていたようで、問題なく無事に気付け薬を必要数を揃えることが出来そうだ。

あとは明日出来上がった薬をダット村に届ければクエストコンプリートってとこだな。


んで、オレたちはと言うと、なんとか帰ってこれた安心感からか緊張の糸が切れてしまって、オレもアイもユミィも、おまけにミュアちゃんまで飯食ったあと気を失うように眠っちまった。


ほんで、そのまま寝過ごしちまうかってくらいぐっすり眠って迎えた朝に、父ちゃんから叩き起されて慌てて支度をする始末だった。


他の奴らと待ち合わせた村の広場に行ってみると、寝ぼけまなこなオレと違って、みんな睡眠バッチリ元気満タン!てな感じだった。


「……はよーっす。昨日はお疲れなー。

どうよ、みんなぐっすり眠れたか?」


「んー! おはよ――!! いい天気だねっ!!

いやー、アタシめっちゃ寝た!!

たぶん魔力けっこうすっからかんになるまで

神聖術使いまくったからかなぁ??」


「みんなおはおはー♪ ほんでみんなお疲れさまっ。

わたしも【集中】使いすぎだったのかな?

こんな寝たの初めてかもしんないw」


「あっ、おっ、おはようございますっっ!

わっ私もしっかり眠らせてもらいました!

えっと、今日あらためて

よろしくお願いしますっ!!」


最後に挨拶したミュアちゃんがオレらにぺこりと頭を下げた。


そうだな。まだ終わりじゃない。

気付け薬(コイツ)をダット村に届けて初めてこのクエストは完了するからな。


「よし、お前ら、

そろそろダット村に向かうか。」


「おけ」「りょ」「おっ、お願いしますっっ!!」


―――お? 新パターンか?


思わず苦笑いがもれちまった。




* * *




オレら人間種(ヒューマン)の村と違って、ミュアちゃんたち兎人種が住むダット村は、結構森の深いところに存在している。


兎人種は自然と共に生きる自給自足の営みが中心だからってのが大きな理由だろう。

他の村や種族との関わりも必要最小限てな感じっぽいし。


まぁ道中、グレイウルフやゴブリンあたりを何匹かぶちのめしながら、オレたちは昼過ぎに無事ダット村に到着した。




「―――なんか、空気が重いね…………。」




アイが顔をしかめた。


確かに、見た感じまともに動いてる兎人はほとんどおらず、うちの村よりもさらに小さい村はかなりゴーストタウン的な空気を醸し出していた。


「んと。とりあえず、お薬を誰に渡せばいいのかな?」


「あっ、族長に渡そうと思いますっ!

こちらのほうに族長の家がありますっ!」


ユミィの問いにミュアちゃんが答えて、オレらを先導し始めた。


「――――んーーー……………………。」


しかしアイが立ち止まって、あごに手を当てて考え込んでいた。


「? どうした、アイ?」


「…………やるだけやってみよっかな!!」


オレの声も耳に入っていないのか、アイは返事もせず村の中心の広場に駆け出した。


そして広場の真ん中で立ち止まり、両手を胸の前で組んで目を閉じて祈りを捧げ始めた。




「―――――【慈愛】………………!!!」




アイは女神官(プリーステス)固有スキルの【慈愛】を発動していた。


「……ふぁぁぁ……。」


隣のユミィも感嘆の息が漏れていた。


アイを中心に、眩く暖かくそして神々しい光が、村全体に降り注ぎ始めた。アイの祈りとともに。


「………………!!!」


なんだろう。

上手く言葉として表現出来ないが、、、


生きる喜び。

命を慈しむ心。

自分がここにいる自己肯定感。


そういった感情や感覚がゆっくりと心に染み渡り満たされていくような、そんな充足感を感じさせられた。


それは【慈愛】が発動している村全体に、オレたちもその対象に含まれているからなのだろう。


「…………ううっ。」


ミュアちゃんなんか、もう泣き出している。


時間にしてみれば、わずかだったのかもしれない。

しかしオレらからしてみれば、その救いとも呼べる至福の時間は永遠にも感じられた。


そして、祈りを終えたアイがいつもの笑顔で、小首を傾けながら少し照れくさそうに笑いかけてきた。


「…………アイ。えっと、、、」


「アハハっ♪ お薬で病気治すにしても、

村のみんなの体力が少しでも回復してたほうが

治りもいいかなって思って^^

ホラ見てアレ!!」


オレの呼び掛けにアイは答えながら、とある方向を指さした。


「―――教会……?」


オレの回答に、アイは満足そうに頷いた。


「そう! この村にもノネミアさまの教会があったから、

きっとここのみなさんも

そこそこの信者なのかなって思ってね!」


「……んと? どゆこと……?」


ユミィはまだピンと来てなさそうだったが、オレにはなんとなくわかりかけてきた。




「えっとね、【治療(ヒール)】だと

生命力を活性化させちゃうから、

病原菌も元気になっちゃうじゃない?

でも【慈愛】はノネミアさまの信徒をはじめ、

魔に属さない神さまサイドの亜人たちの、

生命や存在に加護を与えてくださるような、

そんなスキルだからさ。」




なるほど。

そのオレたち生命への加護が結果として、特に戦闘中なんかは体力回復に繋がっているってわけか。


「だからダット村も教会があるくらいだから、

ノネミアさま信仰が根付いてるって思って、

そのぶんきっと【慈愛】の効果も

かなりあるんじゃないかって思ったんだ☆」


アイが説明を続けている間に、周りの民家のあちこちから、驚きや喜びに満ちた声が聞こえ始めていた。


「―――せっ、聖女さまっ!!!」


その声を聞いたか聞かずかわからないが、ミュアちゃんがダッシュしてアイに抱きついた。


「へ? へ? みゅ、ミュア、ちゃん……??

だっだからアタシ違うってばっ……///」


アイは少し困惑していたが、ミュアちゃんはアイから離れると大声で叫び始めた。




「―――みんな―――――――っ!!

聖女さまを連れてきたよ――――――っっ!!!

聖女さまがみんなに、お祈りして

くれたよ――――――――っっっっ!!!!!」




それをきっかけに、兎人たちが次々と家から外に出てきた。


「おお!! 聖女サマ!!」

「熱が、熱が引いたのは聖女さまのお力?」

「身体が、身体の痛みが引いたんです!!」

「うちの子が目を覚ましました!!!」

「ミュア、本当に聖女様を連れてきてくれたんだね?」

「聖女さま! 聖女さま!!」

「美しい!!!」

「頭の痛みがすーっとなくなりました!!!!」


そしてあっという間に、アイは兎人たちに囲まれて揉みくちゃにされ始めた。


「えっ!

ちょっ……!!

まっ、待ってっ…………!

あっ、アタシっ

せせ聖女なんかじゃっ

なっないからっっ!!!」


あれ?

もしかして、気付け薬(コレ)、、、

いらなかったんじゃ………………。




* * *




それから、少し落ち着いたタイミングでミュアちゃんが族長と話して、経緯とあらましの説明と、オレたちの紹介をしてくれた。


「いや、このたびは本当に助かりました。

村を代表してお礼を言わせてください。

本当にありがとうございました。」


族長がオレたちに深々と頭を下げた。


「いやっ、そんな!

頭を上げてください!」


やっぱ歳上から頭を下げられるのはどうにも抵抗がある。


「生命力と体力が病気回復でいちばん大事ですけど、

みなさんしっかりお薬も飲んで下さいね。

それで谷風邪は全快すると思います。」


横のアイが補足を繋げる。

しかしコイツはほんとよそ行きモードだと清楚で可憐だよな……。


「はい! ありがとうございます!!

薬の対価と謝礼を用意しますので、

どうか受け取って下さい!」


「あっ! いやっ!!」


見たところ、この村だってそこまで裕福じゃないだろう。オレらはダンジョンや道中で入手した魔石を売却すればそれなりの収入になるし。

これは、どうしたものか。


と、躊躇しているオレの手をユミィが握った。


「セイ…、リーダー。

ここはきちんと受け取っておくべきだと思うよ。

報酬をしっかりもらわないと、クエストシステム

そのものが成立しなくなっちゃうから。」


「……っ。」


そうだよな。

ユミィの言うことはもっともだ。


報酬がうやむやになった前例がもしどこかに流れでもしたら、今後ダット村の関係者の信用はそれなりになっちまうかもしれないし。


なにより「当たり前」の積み重ねで、オレらの社会は機能しいるわけだしな。


「……わかりました。

ありがたくいただきます。」


謹んで返答すると、長老もその横のミュアちゃんも安心したように にっこりと微笑んだ。




* * *




日が暮れて夜になる頃には、村の兎人たちもほとんどがすっかり風邪も良くなったようで、村民の回復を祝って宴席が用意されることになった。


そもそもオレら3人もダット村に到着したのが夕方近かったので、日帰りでユボーラに帰る訳にもいかず、一晩泊めてもらうことになっていた。


そういった流れで、村の恩人ということでオレら3人はその宴席の主賓扱いを受けることになっちまったわけだ。


「聖女さま!ありがとうございました!!」

「いやいや! たいしたことしてないからね?」


「聖女サマのお祈りで心まで救われました!!」

「ほんとにっ? それなら良かった!!」


「あぁ、聖女さまがいてくださって、

本当に良かった……!!」

「……ちょっ、そん、そんなこと、

ないって……!!??」


……まァ、わかっちゃいたけどよ。


村の皆さんのほとんどがアイに集まって取り囲んでもてなしていた。


「…すげぇな、アイ……w」

「んね。さすが聖女サマってとこだねww」

「ま、オレらはのんびりやろうや。」

「そだね。んでもセイヤくん、

あんま呑みすぎちゃダメだからね??」


てな感じでオレはユミィと落ち着いた感じで酒を酌み交わしていた。


一応15になったんで、オレらの年齢も酒を飲むのも解禁されてるわけだ。


「あっ、あのっ、私もいいですかっ??」

「おっ? ミュアちゃんもお疲れなっ! 」


ユミィと二人で果実酒を呑んでいると、ミュアちゃんも混ざってきた。


「んと、ミュアちゃんていくつだっけ?」

「わっ、わたしは、21歳になりますっ……!」


「「!!!???」」


おいちょっとマジかよ……!!


てっきりタメか年下と思ってたわ……。


ミュアちゃんはピンと上に伸びた両耳と、発達した前歯以外はほとんどオレら人間種(ヒューマン)と変わらないけど、人種的に幼く見えるんかな。


ライトグレーのロングヘアーが三つ編みに編み込まれているのと、ぱっちり開いた両目とか、自信なさげな喋り方とかでどことなく幼げな印象を持ってたんだけど、、、


―――オレらより6個も歳上だったのかよ……。


「ふ―――っ。やっと落ち着いたっ。

アタシも混ぜて混ぜてっ!!」


なんとか合間を縫ったのか、アイも合流してきた。


そのタイミングで、ダット村の族長もオレらの席に近づいてきた。


「楽しんでおられますかな?」


「はいっ。もちろん!」

「とっても楽しいです!」

「アハハありがとうございます!」


オレらの返事を聞いて族長は満足そうに目を細めた。


「それは良かった。3人にはこのたび、

本当にお世話になりました……。

改めてお礼を言わ「もういいですからっ!ね?」


族長がまた床に頭をこすりつけそうになったので、オレは慌てて族長の身体を起こした。


「いや、しかし「しかしも茶菓子もねぇって!」

「アハハセイヤなにそれウケるw」

「セイヤくん甘いもの苦手じゃんwww」


オレの咄嗟のボケも幼なじみたちがしっかり拾ってくれた。


「…………。わかりました。

しかしわしの気持ちが収まらない……。

謝礼もあれだけしか用意「いや、充分ですから!」


またも族長の言葉をさえぎる。


すると、族長は何かをひらめいた!みたいな顔をした。


「そうだ! セイヤ殿ほどの一廉(ひとかど)の御仁なら

我々の村でいちばんの器量良しの

ミュアを嫁に迎えてもらうのは

どうで「「「はぁ!!!???」」」


斜め上からの族長の爆弾投下に、オレは果実酒を吹き出しそうになり、女子3人はあからさまに驚きの声を上げた。


「そ、そ、そんなっ! わっわたしなんかがっ!

せせせセイヤさんと一緒になるとか……!!」


白兎が皮をむかれたように赤く染まっていた。


「ダメダメダメっ!!セイヤはダメっ!!!

とにかくダメほんとにダメどうしてもダメっ!!」

「ちょっとそれは無理です。セイヤくんは

無理です絶対に無理です。」


オレの左右から幼なじみ2人がガッチリと抱きついてガードしてきた。


「ふっふふふふふ……っ。いや、申し訳ない。

酒の席での冗談にしては度が過ぎましたかな。」


慌てふためくオレら人間種(ヒューマン)の姿を見て、族長は満足そうに麦酒(エール)をあおった。


なんだよ冗談かよ。

ったくキツイぜまじで。


てゆっかよ、アイもユミィもそろそろオレから離れても良さそうなもんなんだがな。




* * *




やがて宴席は大人たちの深酒の泥沼と化したので、オレら4人は外の空気を吸いたいという名目で村の広場に来ていた。


しかし皆さん病み上がりだったり薬飲んだばかりだっつーのに、あんなに酒飲んで平気なんかね?


もしそれを平気にしてるのがアイの【慈愛】なんだとしたら、オレが思ってる以上に凄い効果だったんだな。


よくわからんが。


「うわっ! 星がすごいキレイ!!」


ユミィが声を上げたので、オレも星空を仰ぎ見た。


「あぁ。メチャクチャ 綺麗だな。」

「うん! 今にも降ってきそう!」


オレとアイも続く。


そして、オレはずっと気にかけていたことを切り出してみた。


「なぁ、ミュアちゃんさ、これからオレら、

冒険者としてやってくつもりなんだけどさ、

もし良かったら、ミュアちゃんも、

オレらと一緒に行かないか?」


オレは真っ直ぐミュアちゃんを見据えて本音を伝えた。


「……え、……え??」


ミュアちゃんは困惑し切っている。


「んと。わたしも賛成。すごく賛成。

ミュアちゃんの魔法はすごくたよりになるし。」

「アタシもセイヤやユミィと同意見!

もっとミュアちゃんと一緒に冒険したいかな!」


ユミィもアイもオレと同じ気持ちだったようだ。


「…………あ。」


しかしミュアちゃんは戸惑いながらうつむいてしまった。


オレらは余計なことを言わずに黙ってミュアちゃんの返事を待った。


「……き、……き、気持ちは……、、、

お気持ちは、嬉しい……です…………。

すごく、すごく嬉しいですっ……!!

………………でも……っ、、、、、」


ミュアちゃんの瞳に涙が浮かんでいた。


「わっ、私のお父さんが、あ、あんまり、

その、身体が、強くなくて…………、

私がいなくなっちゃうと、、、

おっお母さんに負担かけるのも、なんだか、

私には、そのっ、むっ難しくて………………。」


「「「!!」」」


オレは、ミュアちゃんの境遇とかなんも考えずに気軽に誘ったことを後悔した。


それでも、僅かな時間ではあったけど、ミュアちゃんとの冒険が本当に楽しかった。そして彼女はとても頼りになった。


そんな気持ちをどうしても伝えたかったんだ。


「そ、そっか……。

そうだったんだね…。

無責任なこと言ってごめんね。」

「アタシもゴメン。ちょっと軽率だったかも……。」


2人もミュアちゃんに詫びる。




「そっそんなことないです!

無責任でも軽率でもないです!!

わっ私だって! みなさんと一緒に

少しの間でしたけど一緒に戦えて!

とっても楽しかったですっ……!!

……あと、それだけじゃなくて、私、

これでも冒険者職ですし、

ちっ小さい村だから、私も自警団として、

村を守らなくちゃいけなくて…………。

だからっ、近くを一緒に、

とかなら大丈夫なんですけど

セイヤさんのお母さまを探しに世界各地とかっ、

むっ、難しくて……………………。」




「―――なァ、ミュアちゃん…………。」




オレは、泣きながら下を向いたミュアちゃんの手を取った。


「……ふぇっ? あっあのっ? そのっ……!」


「……持ってるだろ? 出してくれよ、黒曜石。」


「…………え?」


「アイも、ユミィも。」


「へっ?あっうん。」

「……はい。わたしも出したよ。」


そしてオレも懐から黒曜石を出す。




「例え離れてたってオレたちゃ同じパーティーだ。

こういうのは気持ちが大事だろ?

オレたち『黒曜の剣』は、心はずっと一緒だ。」




オレは真っ直ぐ真剣な気持ちで、3人をかわるがわる見つめた。




アイ。ユミィ。ミュアちゃん。

……そしてオレ。


この4人でしか共有出来ないなにかが、確実にいまここにあるってオレは確信していた。




……の、だが、、、


「………………え?」

「ちょっと待ってセイヤくん。

()()って、パーティー名?」


あれ?

わりと感動的な場面を演出を出来たと思ったんだが、アイもユミィも反応が微妙じゃね?


「……いやっ! ダサッ!! なにその名前!!」

「んと。なんで勝手に決めてるの?

こういうのみんなで話し合うもんじゃないの?」


一瞬で詰められるオレ。

個人的にメチャクチャかっこいいと思ったんだが……。


「……プッ! アッハハハハハハ!!!」


そんなオレらの様子を見ていたミュアちゃんが吹き出した。


てか、やっと笑ってくれた。

それだけでもオレは満足なんだがな。


「ね?ね?ミュアちゃんもおかしいと思うでしょ?

ちょっと言ってやってよコイツにっ!」

「やっぱり笑っちゃうよね?

セイヤくん、昔からセンスがちょっとずれてて。」


アイもユミィもミュアちゃんに同意を求めたが、ミュアちゃんはすっきりした顔でオレらに向き合った。


「……アイさん。ユミィさん。

そして、セイヤさん……。

本当にありがとうございます。

わっ私も心は『黒曜の剣』の一員だってことを

忘れないで生きていきますねっ。」


晴れ晴れとした笑顔を見せながら、ミュアちゃんの頬を涙が伝った。


「そして、メンバーの1人として、

3人のこれからの成功を願っています!

セイヤさんのお母さまが1日も早く見つかるよう、

心の底から毎日祈ってますねっ!!」


「……うん。パーティー名はさておいてw

ミュアちゃんありがとねっ。」

「そうだね。それがわたしたちの

最終目的だからね。」


言いながらアイとユミィがそれぞれの手でミュアちゃんの手を取って、3人輪になったかたちになった。


オレ抜きで。


「応援してますねっ!!」

「ハハッ! ミュアちゃんサンキュなっ!!!」


ミュアちゃんの笑顔にオレも全力で笑顔を返す。


3人の輪の外から。


どさくさに紛れて、勝手にパーティー名を決めちまったけど、これから本格的に『黒曜の剣』が始動するんだって、パーティー名を付けて改めて実感した。


この先どんなことが待ち受けていたとしても、今夜のことを思えば何でも乗り越えられそうな、なんの根拠もないのになぜかそんな気がしていた。


「じゃ、呑みなおそっか!」

「ん! さんせい!

ほらミュアちゃんもセイヤくんも!」

「あっはい!行きますっ!!

……って、セイヤ、さん?」


3人とも族長んちに戻ろうと歩き始めていた。


けれども、


「わりぃ、オレ もちっとここにいるわ。

少し1人で考え事さしてくんね?」


「……? ん。おけ。冷えるから長居しちゃダメだよ?」

「りょ。んじゃ先に行ってるね?」

「わっわかりましたっ!!」


ここにもう少し留まることにして、3人の後ろ姿を見送った。




―――旅の、目的……、な…………。




つい今しがたのユミィの言葉を思い出した。


オレの母ちゃんを探し出すことが、『最終目的』と言ってくれた。


それが嬉しかった。

ものすごく嬉しかった。


でも、

でもよ……、、、


オレ、そんなにキレイなことばかり考えてるわけじゃないんだ。


同時に、さっきの族長とのやりとりを思い出していた。


ミュアちゃんをオレの嫁さんに、って話に、

アイとユミィが猛烈に反発して、

オレの左右にべったりくっついて、

誰にも渡さない!って勢いだった。


オレだってバカじゃないし、

そこら辺の石ころでもなければ、

中身が空っぽの大木ってわけでもない。


2人の気持ちに気づいている。

てか、充分痛いほどオレに伝わっている。


物心付いた時からずっと3人だったんだ。

何年一緒にいるんだって話だよな。


アイも、ユミィも、オレのことを、

真剣にそういう目で見てくれて、

本気で考えてくれている。


アイも。

ユミィも。

2人とも本当にオレのことを好きでいてくれている。


知ってる。

まじで痛いほど知ってる。


オレだって。

オレだって好きだ。大好きだ。

2人のことが本当の本気で大好きだ。

2人の為なら死ねるってくらい大好きだ。


けれど。

けれどよ……、、、


オレは1人しかいねぇじゃん。


オレがアイを選んだら、ユミィは?

オレがユミィを選んだら、アイは……?


どちらかが残される未来なんか選べない。

つか、想像つかない。考えらんない。信じらんない。


オレにとっちゃこの世の何より重要な問題だった。


それこそ、生まれる前から、

あるかどうか知らねえけど前世から、

どちらを選ぶかを悩んで悩んで悩んで悩んで生きてきた気がする。


オレは確信してる。


記憶なんざ残ってないけど、

前世でもオレはアイやユミィと一緒に過ごしていて、

そして2人の間で揺れ動いていたって確信している。


上手く言えないんだが、

魂が記憶している気がする。


そして、前世のオレは結局どちらも選べずに、

どちらも泣かしていたんだろう…………。


愛する2人をどちらも泣かすなんざ、

本当に罪で救いようのない大バカ者だ。


しかし、()()は違う。


今生きている、オレは違う。


どっちか片方しか選べないとしても、()()()()()()()


こんなこと、アイやユミィはおろか、誰にも言えねえんだけどよ、、、


オレが冒険者で大成して、それこそ英雄級の大成功を果たして、貴族として叙勲されれば…………!


平民と違って、貴族は複数の妻を持つことが出来る。


どっちが正妻かとかそういう問題はさておいて(どっちも正妻でもいいんじゃねぇか?とは思うけどよ)、アイとユミィどちらも両方ともオレは結婚することが出来る。


恐らく前世では果たせなかったであろう悲願を、オレは今世できっと、いや絶対に果たしてみせる!!


確かに、母ちゃんのことは探している。

本当の本気で全力で探すつもりだ。


でも。

でもよ。


誰にも絶対言えねぇけど、オレが冒険者になった()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「―――っし。」


改めて強く決意すると、まじでやる気出てくるな。


オレはもう一度、懐から黒曜石の欠片を出した。


「…………オレはやれる。オレなら出来る。」


そして、その希望の石に、オレは自らの思いを強く強く誓った。




=========第1章・第2節 了=========




セイヤ:戦士(ファイター)

レベル2→9

筋力 C+

器用度 D+

知力 D→D+

魔力 D

精神力 D

体力 C+→B-

敏捷性 D→D+

スキル:剣術1→2・筋力上昇1・強撃(ラッシュ)1→2

盾術1 NEW!・槍術1 NEW!

装備:長剣(鉄)・革鎧・革盾



ユミィ:狩人(アーチャー)

レベル2→9

筋力 D→C-

器用度 B+

知力 D

魔力 E+

精神力 D

体力 D→D+

敏捷性 B

スキル:弓術1→2・集中1→2・気配遮断1

獣語読解1 NEW!

装備:長弓(木)・革胸当・羽根帽子



アイ:女神官(プリーステス)

レベル2→10(ダット村の慈愛ボーナス)

筋力 C+

器用度 E→E+

知力 C+→B-

魔力 C+

精神力 A

体力 C→C+

敏捷性 D→D+

スキル:神聖術2・杖術1→2・慈愛1→2・祝福1→2

装備:ウッドメイス(丸太)・麻の法衣・太陽の髪飾り



セシル:????



アリサ:????



ミュア【ゲスト】:魔法使い(ウィッチ)

レベル4→9

筋力 D

器用度 E

知力 C→C+

魔力 C-→C

精神力 D

体力 D

敏捷性 E

スキル:火魔術1→2・風魔術1・土魔術1

水魔術1 NEW!

装備:杖(樫)・布のローブ

これで1章2節が終わりましたが、

ちょっと詰め込み過ぎて、他話の2倍くらいの長さの12000字になってしまいました申し訳ない。

気を抜くとすぐ長文癖が出てくるので気をつけないといけませんね~

(本編では5万~6万の単話がゴロゴロしてますw)


ほんで、ここでついに明らかになる、

セイヤくんの真の目的!!


こんなこと思っちゃう時点で、

(あれ?オリジナルの聖夜くんとちょっと違う?)

とか作者でも少し思っちゃいましたが、

転生して同じ魂とは言え、

セイヤくんと聖夜くんは別人なんですよね。

そういうのが伝わればいいなぁとか思いながら書いてました。


てか、この辺でそろそろ次章~アリサの章とか行こうかな~とか思ったんですけど、

あんまり時系列飛びまくるのも、読み手も書き手も疲れるかな、とか思うので、

もう少しこの3人の旅を書き続けて行こうかなって思っています。


でも次の更新はたぶん年明けになりますかね。

皆さんもお身体には気をつけて、良い年をお迎え下さいませ。


(2025/12/20)

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