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第11話◆取っておき、ってのはここぞって時に使うから取っておきなんだよね

ついにボス戦です。

少しは緊張感が表現出来てたら嬉しいです。

セイヤが扉を開けて真っ先に部屋に乗り込む。

続いてアタシたちも隊列を崩さないように次々と中に足を踏み入れた。


「…………アイツがボスか?」


リーダーの視線の先、部屋の中央のちょっと盛り上がったところに、小さい人影があぐらをかいて背を向けて座っていた。


突入してきたアタシたちに気づいたのか、チラッとこちらを見るとゆっくり立ち上がり、アタシたちに向き直った。


「あれ、ボーグル、だよね……?」


ユミィの言う通り、姿かたちはどっから見ても、ここに来るまでアタシたちが散々倒してきた雑魚ボーグルだった。


ただひとつ、違う点があるとすれば、そのボーグルは漆黒の黒さを身にまとっていた。


真っ黒なボーグル……。




―――いやな予感がする……。




「【防護壁(プロテクト)】!!」


「お、サンキュなアイ!」


とりあえず防御アップの神聖術をセイヤに向けて唱える。


「!! 来るぞ!!」

「!!??」


防護壁(プロテクト)】を発動するために、一瞬セイヤに視線を移したアタシに隙を見つけたのか、その黒いボーグルが信じられない速さでアタシに向かってダッシュして来た。


「クッ、【強撃(ラッシュ)】!!」


全然反応出来てなかったアタシをかばうように、セイヤが黒いボーグルに横からラッシュをお見舞いした。


「グッ」


しかしそいつはラッシュの直撃にもかかわらず、数歩よろめいただけで、視線はこちらを向いたままだった。


―――やばい! 硬直してるセイヤが狙われる!


「てぃっ!!」


アタシはウッドメイス(丸太)を黒いボーグルに向かって振り下ろす。


ガッ


しかしアタシの攻撃は、黒いボーグルの片手で受け止められてしまった。


「グギギッ……!」




―――え、コイツ、笑ってる……??




ぞわわっ!!と悪寒が身体を駆けめぐる。


「アイちゃんから離れろっ!!」

「ふぁ、【小火球(ファイアーボール)】っっ!!」


間一髪、ユミィの射撃とミュアちゃんの小火球(ファイアーボール)の、援護の攻撃が黒いボーグルにヒットして、そいつがよろめく隙にアタシは距離を取ることができた。

そしてすかさず間にセイヤが身体ごと立ちはだかってアタシをかばう。


「アイ、お前にゃ【祝福】の効果がないんだから

あんま前出んな。お前が倒れたらオレら一気に

崩れちまうんだからよ……。」

「あっ、うん、ゴメン……。」


そしてセイヤの背後に位置したアタシの左右に、ユミィとミュアちゃんが陣取る。


「んと、なにアイツ……。硬くない??

わたしの矢、表面にしか刺さってないんだけど!」

「わっ、私の【小火球(ファイアーボール)】も、

当たっただけで、ぜんぜん燃えてないですっ!!」


2人とも困惑してる。


「ねぇセイヤ……。ボスなだけに、

アイツ、普通のボーグルじゃないよね……?」


セイヤの肩越しに見る黒いボーグルがこっちを見ている。陣形を整えたアタシたちの隙を探してるのかもしんない。


「…………あぁ。

ありゃー、ボーグルの変異種だな。

確か、「ブラックボーグル」……。

脅威度(モンスタークラス)C(マイナス)、だったはずだ……。」


「「「C!!??」」」


待って待って待って!!!

モンスタークラスCって言ったら、かなりのかなり強敵じゃん!!!!


狼男(ウェアウルフ)とかゴブリンキングとか、あとなんだっけ、トロールとかポイズンリザードとか??


とにかくとにかく、いまのうちらにとっちゃかなり脅威的な強さってわけだよねっ……。


このまま戦い続けてたら、ジリ貧になって追い込まれちゃう気がする。()()()()()()()


「お前ら聞いてくれ。

このまんまだとラチあかねぇからよ、

オレがあいつに突っ込んで1対1で抑え込むから、

後衛の2人は都度援護。

アイはこまめな【治療(ヒール)】を頼む。」

「えっそれセイヤが危ないって!」

「そうだよ!無理しちゃだめだよっ!」

「あわわわわわわわ。」


セイヤの提案にアタシたちはしり込みしてしまう。


「なぁに。アイの【祝福】と【防護壁(プロテクト)】があるんだ。

おまけに【治療(ヒール)】の回復まである。

こりゃ完全に勝ち確だろうよ!

てかよ、冒険てのは多少のムチャとか

つきもんだろ!!?」


ビリビリとしたセイヤの緊張感がアタシにも伝わってきた。


「頼んだぜぇぇっ!! 聖女サマっ!!!!」


そしてそう叫ぶと同時にセイヤはブラックボーグルに向かって駆け出した。




―――ずるい。




そんな言われたら、

セイヤにそんな言われたら、

アタシが絶対にセイヤを護る。

そう思わずには、

いられないじゃないかぁぁぁぁぁ!!!!




「いけっ! セイヤァ!!

もいっちょ【防護壁(プロテクト)】っっ!!!」


効果あるのかわかんないけど、セイヤに防護壁を重ねがけする。


「……サンキュっ!」


ガイン!!


セイヤの斬撃がブラックボーグルの左腕で受け止められた。


「ガガッ」


逆にブラックボーグルの拳をセイヤが盾ではじき返す。


「えぃっ!」

「【小火球(ファイアーボール)】っ!」


合間にユミィとミュアちゃんが援護してブラックボーグルを削る。


ガイン!! ドガッ!! バギィン!!


セイヤの斬撃がヒットする回数が増えてきた。


けれどもいくつか盾で防ぎきれず攻撃をもらっている。


「【治療(ヒール)】っっ!!」


「サンっ……キュ。」


合間を縫って、セイヤを回復する。


ユミィとミュアちゃんも後方から援護しているけど、じりじりとセイヤが押され始めて来ている気がする……。


そりゃそうだよね……。

ただ撃ち合うだけじゃなくて、ブラックボーグルをアタシやユミィたちのところへ行かせないようにカバーしながら戦ってるんだもん。


本当に、このままじゃアタシの予想通りジリ貧だ……。


このままじゃ、今のままじゃ……、、、




―――()()()()()じゃ、ダメだ……!




治療(ヒール)】や【明光(サーチライト)】とか【浄化(ターンアンデッド)】使うために魔力(マジックポイント)節約してたけど、このボス倒せば終わるわけだし、出し惜しみしてる場合じゃない。


まだ1回も唱えたことなかったから、どんだけ魔力持ってかれるかわかんなくて、今まで使ってこなかったけど、きっとアイツには効果があるはずだ。


普通のボーグルはきっと土属性。

けれど、あのブラックボーグルは波動からして闇属性に違いない。

それなら、きっと()()は効果があるはずだ!!


行ける。

いや、行けなくても行ってみせる!


セイヤを護るのがアタシの役割だ。

聖女だろうが村娘だろうが、アタシがセイヤを護るんだ! 支えるんだっ!!!


アタシは右手のひらを前にかまえて、左手を添えた。


ガコン!


「うわぁっ!!?」


セイヤがその打撃を盾で防ぎはしたものの、ブラックボーグルに吹っ飛ばされて、両者の距離が少しだけ開いた。




―――今だッッッ!!!!




「【聖光弾(ライトボール)】っっっっ!!!!」




アタシの手のひらから生み出された光の弾が、まっすぐブラックボーグルへと撃ち込まれていく。


【神聖術】レベル2の、聖属性攻撃魔法。

その攻撃力は魔法使いの【火魔術】レベル1の【小火球(ファイアーボール)】と同程度かやや劣るくらい。


でも、【聖属性】が『弱点』の【闇属性】が相手なら、、、!!!




ドシュウウウ……!!!


「ギョガァァッッ!!!???」


聖光弾が撃ち込まれたブラックボーグルの胴体が大きくえぐれていた。




―――行ける!!




消費魔力も思ったほどじゃない。

浄化(ターンアンデッド)】のほうがまだ多かったくらいだ!

おまけにこれはスキルじゃない。魔法だ。


詠唱さえ終えてしまえば、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!




「【聖光弾(ライトボール)】!!!」




続けて2発目をブラックボーグルの頭部にぶち込む。


「ゴガァァァァァァァァ!!!!!」


やっぱり効果てきめん!

有利属性2倍ダメージ!!


「まじナイスだアイッ!

喰らえッッッ!【強撃(ラッシュ)】!!」


ドガッ!!!!!


セイヤの【強撃(ラッシュ)】がひと目でわかる急所直撃(クリティカル)で入った。


すごい勢いでぶっ飛ばされたブラックボーグルが岩壁に激突する。


「【聖光弾(ライトボール)】!!」

「【小火球(ファイアーボール)】っっ!!」

「えいっ!!!」


追い討ちで放たれた、アタシたちの遠距離攻撃を受けて、ブラックボーグルは小刻みに震えたあと、両ひざを付いて、そして煙になって消えた。




「―――――勝った……………………!」




やばかった。

今まで順調すぎるくらい順調だったアタシたちだったけど、初めて「勝てないかもしれない」って思わせるくらいの強敵だった。


でも勝った。勝てた。


よかった。誰も死なずに済んだ。


セイヤを護ることが出来たんだ………………。




「やるじゃねぇかアイィィィッ!!!」


大声とともにセイヤがアタシに抱きついてきた。




―――は? え? ちょっ、ちょっと……!!




アタシの声にならない叫び声なんか当然聞こえないセイヤは顔をくしゃくしゃにしながらまくしたてる。


「お前あんな奥の手あったのかよ!!

いやマジで助かった! アイのお陰で勝てたわ!!

アイのお陰でオレたち勝てたわ!!!!」


「あ……、うん……、、、」


自分の顔面に尋常じゃない熱を感じながら、アタシはされるがままになっていた。


「アイちゃんもセイヤくんも

どちゃくそカッコよかったよぉぉぉぉ!!!」


続けてユミィがアタシとセイヤの間にタックルと言わんばかりの勢いで飛び込んで抱きついてきた。


―――あははっ。心配しすぎ!


ちょっと驚いたけど、ユミィの考えてることが手に取るようにわかって、アタシは思わず笑ってしまった。


アタシは神に仕える身なんだから、そんなに気にしなくていいのに。


……ユミィの邪魔なんてしないからね。


「あっ、あのっ!

ボスがドロップ品落としてますっ!」


ミュアちゃんがブラックボーグルが倒れたとこにかがんで何かを拾ってきた。


「……?? なにこれ黒いキラキラ?」

「なんだろ? 鉱石のカケラっぽいけど。」

「んー、、、なんかの素材なんだろうけどな……。」


ミュアちゃんが見せてきたその黒くてキラキラした綺麗な4個の鉱石みたいなものは、小石くらいの大きさだった。


「……これで、全部か?」

「はっ、はいっ。」


セイヤがミュアちゃんから受け取って、まじまじとそれを見た。


「…………まァ、こんな大きさじゃ、

装備の素材にもなんねーしな……。

ちょうど4個あるし、今日の記念によ、

みんなでひとつずつ分け合おうぜ!」


「おけ」「りょ」「わっわかりましたっ!!」


「…………いや、そこはもっと、

喜ぶなりなんかあるだろお前ら………………。」


苦言をこぼしながらも、セイヤがとても楽しそうに笑ったので、釣られてアタシも笑ってしまった。

ゲームだと個人的にヒーラーが好きなので、

前回に続いてついついアイちゃん大活躍させちゃいました。


ブラックボーグルのモチーフ?は

FF5に出てくる雑魚敵のブラックゴブリンですね。

物理攻撃一辺倒なので、前衛が倒れなければなんとかなる、みたいな感じで考えてました。

これで遠距離攻撃とかあったら相当やばかったかもしれませんね~。

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