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プロローグ
「わ、私が小説の挿絵を!?いいんですか!?」
ロールプレイが抜けてしまったことに気づいた私は、瞬間的に口を覆う。しかし、無限拍手の使徒さんは気に留めず、朗らかに笑った。
『うん。配信見てて、すごく真面目な子だなって分かってるし』
「あ、ありがとうございます…なのじゃ!」
事あるごとに、小説の挿絵を描くことが夢だと言っていた甲斐があった。リスナーがたまたま出版社の編集者だったなんて、美しいシンデレラストーリーだ。
『じゃあ、早速だけど仕事の話をしようか』
「はい!ーーあっ」
『ハハッ、いいよ、打ち合わせ中はVのガワを気にせず話そう』
そのまま打ち合わせは順調に進み、私はイラストレーターとして、初めて出版物を担当し、報酬を手に入れる…はずだった。
目の前にあるのは、マイナスとなった通帳残高。止まらない通知音、夫の私物が無くなり、空っぽになった室内。
「どうして…こんなことになるなんて」
これは、一攫千金を目指した凡人の物語だ。