砂
サラサラとこぼれていく
白い雲のような君の手から
サラサラと砂がこぼれていく
全ての砂がなくなる前に
僕は砂を足す
「ねぇ、好きだよ」
あの日、波に飲まれた君の言葉
「ああ、僕もだよ」
あの日、返せなかった僕の言葉
海風が君の髪を撫でる
頬についた砂がはらりとこぼれ落ちる
はにかむ君の笑顔
あと何回この言葉を聞けるだろう
あと何回この言葉を返せるだろう
少しずつ痩せていくこの砂浜のように
君の記憶は消えていく
少しずつ積み重なる病のかけらが
僕たちの思い出を削っていく
僕は風がつくった砂の糸をそのままに
そっと砂を足す
空は高くて
雲は白くて
波は穏やかで
僕たちの大切な時間は
寄せては返して消えていく
「ねぇ、好きだよ」
「ああ、僕もだよ」
消えていく記憶と
消せない思い
僕たちはあの日を何度でもやり直す
どうか……