プロローグ ~冒険のはじまり~
国語苦手の森の隅の虫というものが、幼いころに想像した世界を実際に会ったらどうなるのだろうと必死に言語化した作品になります。
読みづらい箇所が多々あると思いますが、お楽しみいただけると幸いです。
私はしがない研究所の助手として働いている。この研究所に入所してか3年が過ぎようとしているが、未だに周りと馴染めずにいた。周りからは距離をおかれてしまうのだ。それは、私が助手としてつかえている「一石 貴光」教授が一般的に言う変人であるからだろう。
年齢は45歳で体格は私より少し大きいくらい、見た目で言えば変なのはレオナルド・ダ・ヴィンチに似せた立派な髭くらいだ。彼は確かに優れた研究者で、しっかり成果を挙げているし、鋭い観察力と思慮深さもあわせ持っているが、好奇心旺盛な性格から突拍子もなく実験を始め、いつも周りを振り回している。当然助手の私も付き合わされてるのだが、1年を過ぎる前には慣れてしまった。それどころか、いつも意気揚々に動き回る彼に私はいつしか尊敬のような感情も覚え始めていた。
しかし、今日は彼の様子が少し違った。いつもなら私に会うなり、次に行う実験内容を次々と話始めるのだが、今日だけは椅子に深く腰掛け机に向かったまま、深く神妙な顔つきで考え込んでいた。
さすがに不思議に思った私は、何があったのか尋ねてみると、少し安心する返事が返ってきた。
「海底に国があるのかも知れない。もしそうならすごいぞ。」
これでいつもと考えていることは同じだというのがすぐにわかった。いつもと違うのは教授自身が考えている規模に驚いていたからだった。
このあとの教授はいつも通りで、私に詳細は伝えずに、すぐに出掛けるとだけ言って去ってしまった。この場合は今日中にも、海外へ飛び出して現地調査をするということだ。
私も急いで支度をしなければならないわけだが、いつものことでもう既に最低限は整ってしまっている。そこで、机の上に散らばった様々な文献を読んで教授が戻ってくるまで時間を潰してみることにした。
そこにあった文献は、ほとんどが海洋生物についてのもので、特に目立ったのは頭足類についてだ。頭足類と言えばイカやタコが一般的に有名で、知能が高く人間の次に地球に繁栄するのはこの中からだとも言われている。
教授の返事から察するに、この仲間が社会的に繁栄している可能性が見つかったということだろう。しかもその規模は国と称される程に文明が発達したものだと考えられる。確かにこれが本当なら大発見に違いない。前述した説の直接的な裏付けになることはもちろん、収斂進化や人間の発達過程といった様々な進化論の学術的説得力が高まることとなる。
私は、まだ知らされてもいない内容に、見たこともない社会的頭足類の繁栄に、心を躍らせ机上の文献の最後を読み終わる。そして、机一面に広がった世界地図には複数個所に丸印がつけられていることに気づく。
丸印はアフリカ大陸の赤道以北の大西洋に面する所と同じ大陸のインド洋側、オーストラリアの西側、アメリカ東海岸、そしてひときわ目立つように、何重にもなったものが南米の大西洋側に大きく描かれている。
どうやらこれから向かうのは南米のブラジル辺りらしい。正直に言うと、この地図からはそれしかわからない。だが、今までヨーロッパ中心だった現地調査とは違い、かなり過酷なものであることは間違いなく、様々な部分で覚悟が必要になりそうだ。
そうして、教授と別れて6時間がたったころ、ようやく研究所に教授の声が響く。
「準備はできたか!?いくぞぉ!!」
教授は子供の頃に思い描くような探検服を着て私を迎えに来ていた。私は、いつになく高い彼のテンションを収めつつ、空港へ向かうタクシーに荷物を乗せる。