9* -少女-《ジカク》
そして女神への文句がひとしきり叫び終わった後アオイはふとあることに気付く。
「…………。待って、ということは今まで私は…………女として…………。」
「はい、見てましたけどとっても可愛らしかったですよ♪」
うがあああああああああ!!!と、ありもしない壁へドン!ドン!と頭をぶつけるアオイ。
そう、今まで自分が女で過ごしたことに急激に羞恥心が襲い掛かってきたのである。
思いだすと確かに視線が不自然に下に集まっていたことを思い出す。
今ならハッキリと分かる、この乳だ。豊満な乳が無自覚に人の視線を奪っていたのであろう。
「ぐっ…………。な、なんでこんな辱めを…………。」
「最初に言ったじゃないですか、私妹が欲しいって♪」
「軽いノリで人の性別変えないで貰えますーーーーッ!?!?」
アオイの怒声もなんのその、上機嫌で少女を見つめてくる女神。
その様子に流石のアオイもたまらずガクリ、とうなだれてしまった。
しかしいつまでも落ち込んではいられない。
羞恥心でうまく回らなくなったその頭をフルに回転させアオイは問いかける。
「戻して…………。私の体…………。」
「可愛いから別にいいと思うんですけどねぇ…………?」
よくないッ!!と即答するアオイに女神は仕方なさそうにある提案を設ける。
「ではこうしましょう。アオイさん、貴女が異世界で良い行いを積み重ねれば貴方の体を元に戻します。」
「…………ぐっ、なるほど…………。最初からそれが狙いだったワケだ……。
……アンタとことん性格悪い女神だよ……。」
「アオイさんに言われたくはないんですけどね…………それに妹が欲しかったのも本当ですよ?」
はいはい、とその戯言を軽く流すアオイ。
そして何やら想定よりかなり大変なことになりそうではあるが、
自分の体が戻ってくることは確認出来たので少しだけ安堵するアオイであった。
「…………。つまりあれね、異世界で魔王的なアレを倒してアレしてこいってコト…………?」
「うーん…………。まぁあながち間違ってはいないんですけどね…………。」
何やら歯切れの悪い返しをする女神、その様子に更に不信感を増すアオイ。
「そんなに不機嫌にならないでください…………。可愛い顔が台無しですよ?」
不機嫌にしてるのはそっちでしょと言わんばかりにそっぽを向くアオイ。
それを見てやれやれ、と仕方なさそうに口を開く女神。
「…………。確かにあの世界には魔王という存在は居ます。
……しかし、アオイさんは自分が信じる良い行いの道を歩んでください。」
と、何やら意味深な言葉を残しつつも女神はパチン!と指を鳴らす。
するとナナの頭上に【0】という数字が現れた。
「この数字はアオイさんが良い行いをすると増える…………言わば、良い子ポイントです。
この数字が増えると使える魔力の上限が増えますし、もしかしたら元の身体に戻せる魔法も使えるかもしれませんね?」
「…………随分曖昧な道を私に示すのね…………どうせ教えてくれないだろうからもう聞かないけど。」
もう、そんなに拗ねないでください!とアオイにベタベタとくっつく女神であったがそれを払いのけるアオイ。
そして曖昧な道標、道は長そうだがこれからやることはハッキリと決まったアオイは自分を鼓舞するように立ち上がるのであった。
「…………自分の信じる道ね……。じゃあ!私はこれから異世界で好き勝手やらせてもらう…………!!
そして体は女かもしれないけど、心は男だ!!それだけは絶対に…………!!」
「アオイさん、さっきからご自身のこと私って言ってることに気付いてません?」
最後の気力を振り絞るもむなしく、女神の鋭い指摘がアオイを襲う。
そしてその意味を理解すると再びガクリとうなだれてしまった。
「…………な、なにゆえ…………。」
「まぁ心は体に引っ張られるとよく言われますからねぇ…………。
それにアオイさん、少しずつですが口調も女の子らしく変化してるのに気付いてませんでした?
これはもう、順調に女の子になってる証ですね♪」
紛れもない事実に、ガーン!と今日一番のショックを受けるアオイ。
思い返せば確かにそうだ。無自覚に女になっていた自分に反論の余地もない深い衝撃を受けるアオイであった。
そんなアオイを尻目に今まで沈黙を保っていたナナが一言。
「そろそろお時間ですね、では女神様。失礼致します。」
「はーい、もうここへ来ちゃダメですよー?…………アオイさんも、ふぁいとっ♪」
「……………………。」
その言葉を最後に、再び辺り一面が光を帯びていく…………。
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そして光が明けたかと思うとそこには先程アオイが鏡を見て絶望した部屋へと戻っていた。
黙ってその鏡を再確認するアオイだったが溜息を付いたかと思うと一言。
「寝る。」
そう言うと自室に備えられていたベッドへ力なく倒れこむアオイであった。
それを見ていたナナは流石に気の毒だと感じたのか言葉を選びながら恐る恐る声をかける。
「あの…………。アオイ様……。その、大変だと思いますが頑張って…………。」
「うるさーーーーーーいッ!!!!なんだよこの体!!女じゃん!!女だよ!?!?
私だけ知らずに立ち振る舞ってて馬鹿みたいじゃんっ!!
どうせナナも私のこと見て笑ってたんでしょーーーー!!!もー!うるさいうるさいうるさーーーーいッ!!!」
体の変化か、あるいは心の変化。もしくは両方か。
その過酷な変化にアオイは赤子のように泣け叫びヒステリックを起こしていた。
アオイのその様子にナナは諦めたかのようにそっと部屋を後にするのであった。
「…………うえーーーんっ!!!ぐすっ…………ぐすっ…………。うぅ…………こうなったら…………。
こうなったら………!
異世界で女として覇道を往ってやるーーーーーッ!!!!!」
ーーーーーー枕を濡らしながら決意を胸にするアオイ、
そして家主からうるさいと怒られ再び涙するアオイ。
果たして彼…………もとい、彼女のこれからの人生はどうなるのか…………。
それは女神すらも分からないのであった。
Tips!!
果たしてアオイちゃんはこれからどうなるのでしょうか。
たぬきは僭越ながらアオイちゃんを応援します。
がんばれアオイちゃん、まけるなアオイちゃん。
でもたまに恥ずかしい姿は見せてくれ、アオイちゃん。
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