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7* -姫と従者-《オモイ》

 場は変わり、ここは緑豊かで穏やかな平原に囲まれているトー平原。

一応モンスターは僅かに存在するがどれも下級のモンスターばかりで駆け出しの冒険者がこよなく自己研磨する場でもある。

そして平原の先には()()()()()という各地方から冒険者達が集まる街が存在する。


 そのトー平原街の付近で真夜中に静寂を破るような音が響き渡るのであった…………。




ーーーーーーーーー


ーーーー


ーー




「でぇええええええええええええっ!?」



 漆黒の夜空に星の輝きとはまた違う光が急に現れたかと思うと、けたたましい叫び声と悲鳴がこだまする。

そして2人と1匹の光が平原にドンッ!!と叩きつけられる。




「ぐぇっ…………!?……………。もっと安全な転移は出来なかったの……。」


「座標が曖昧なので安全な転移は保証しかねます、と言おうと思ったのですがアオイ様が急かされるので。」


「………それ、はやく言って……てか。お、重い………。」



…………どうやら命に別状はないようだ。

ただアオイは落下の衝撃とミュールの下敷きという二重苦を受けており体は相当ダメージを受けてる様子である。



「も、申し訳ありません!アオイ様!……………………かのものを癒したまえ…………初級回復魔法(ヒール)!!」


 

 すぐさまにアオイを下敷きにしていたそのお尻を上げると、今度は魔法を唱えるミュール。

するとアオイの周りに光が集まりみるみるダメージが回復していく。

どうやらこれは先程アオイが唱えた攻撃魔法とは対を成す回復魔法の様だ。



「お、おぅ…………何だか不思議な感覚だな……痛みが引いていく…………助かったよミュール、ありがとう。」


「い、いえ。元はと言えばわたくしのせいでこのような…………。感謝の言葉を述べるのはわたくしの方ですわ。」



 どこか目を泳がせて頬を染めながら謙遜するミュール。

初対面は最低の出会いであったがどうやらもう命の恩人であるアオイに悪い印象は無くなってる様子である。

その謙虚な静寂に耐えられなくなったアオイはふと気になっていたことを尋ねる。



「あー…………。そういえばミュールはどうしてあんな所に居たの?」

(まぁ俺達が言えた義理じゃないんだけどね…………。)



「それは…………。」



 ミュールが口を開こうとした瞬間、何やらトー平原街の方から何本もの灯と人影が声を上げながら迫ってくる。






「姫様ーーー!!!!ご無事でございましたかッ!?!?」






 その怒声と共にみるみると人影がミュールを囲んでいく。どうやら森で従者、と言っていたのはこのことであろう。

ミュールが無事であると確認が済むと、今度はアオイに厳しい視線が一斉に向けられる。



「姫様…………。この者は?」



 先程から声を張り上げてミュールを姫、と慕う従者。

その見た目は鎧で包まれており顔はハッキリと確認出来ないがその言動や立ち振る舞いからして恐らく姫を守る騎士、と言った所であろう。

そして姫を守るべく腰元に控えていた剣先がアオイの元へと向けられる。



「およしなさい!!()()()!!…………この者はわたくしの命を救って頂いた恩人です!!」


「なッ…………。それは、申し訳ありませんでした…………。非礼を詫びよう、旅の者よ。」



 ミュールの一喝によりその剣先を再びあるべき場所へ戻す、フィーと呼ばれる騎士。

剣を突き付けられたアオイだがこんなテンプレみたいな騎士って異世界に本当に居るんだな、と心の中でむしろ関心していた。



「あぁ、気にしないで。その()()()()は金の為に助けただけだから。」



 まな板、その言葉に先程までの暖かい空気から一変して吹雪が吹き荒れる。






「ま、まな板………ですって!?」





「あぁ、いや。ごめん、その安心して気が緩んじゃったらつい本音が……。」



挿絵(By みてみん)



「余計悪いですわッ!?何ですの!?小さいのはそんなにいけませんか!?確かに貴女はずいぶん()()()()()をお持ちのようですが!!嫌味ですのッ!?!?」


()()()()()、という意味がよく分からないアオイであったが何やら地雷を踏み抜いてしまったことは薄々感じていた。

場は荒れる一方であったがそこへ先程のフィーという騎士がミュールを諭すように声をかけるのであった。



「ひ、姫様……私は可愛らしいと思いますが……。」


「全然フォローになってませんからね!?フィー!!…………はぁ、なんでこのような方を……。」


 

 ポツリ、と後悔したかのように愚痴を漏らすミュールであったが気持ちを切り替えたのか再び凛とした表情でアオイと二度目の対峙をする。



「それでお金、でしたわよね?……フィー、この方に金貨100枚を渡しなさい。……今は()()()()()の途中であまり手持ちはありませんがそれほどあればこの街で()()()()()()()()()()()()でしょう。」


「ハッ!…………では旅のお方、これを。」


 

 そう言うとフィーは厳重に保管してある箱の中から輝く硬貨のようなものを袋へ取り分けてそれをアオイに渡す。

恐らくこれがこの世界の通貨なのだろう。初めて手に入れるお金にアオイはウキウキでそれを受けとるのであった。



「………では、これでサヨナラですわね。」


「あぁ、そうだね!んじゃまたどこかであったらヨロシク!!」


「よろしくありませんわッ!?」





ーーーーー金と同時に何かを失った者、そして金を手に入れて歓喜する者。

相反する二人はここでそれぞれ違う旅路へ向かうのであった…………。




 

Tips!!


巨は無自覚に巨であることでマウントを取ってきますが、

わざとではないので仕方ありません。


なのでこちらも無自覚に巨の巨をイタズラすることは仕方の無いことなのです。

ぽんぽこちん。



ーーーーー

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