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2* -全ての始まり-《キッカケ》

ーーー時は遡り、ここは日本人なら誰しもが馴染みのあることであろう日本のとある中心部の都市。


 物語の始まりはこの目付きが鋭く、憔悴しきった様子の少年により幕を明ける……。




 時刻は深夜、場所は繁華街より離れた人気の少ない薄暗い夜道。

その薄暗い闇からポツリ、と愚痴が静かに響く。



「はぁ……。疲れたな……早く帰りたい。」



 息を吐くように溜息をつく少年。


名は金木 蒼(カナキ アオイ)


青春真っ盛りであろう、ごく普通の平凡な高校生だ。



「久しぶりに遭うや否や部屋の引っ越しを手伝いをさせられるなんてね……。もう真夜中じゃないか。」



 そう、この《金木 蒼》。

決して夜遊びに更けている不良などではない。

実は彼の肉親である()に、お願いと言う名の()()()()を強いられていたのである。


「大体なんで俺なんだよ…彼氏でも呼べばいいじゃん、どうせ片付いたらあの部屋でヤルことヤるんだからついでにハッスルしとけよ……。」


…とまぁ下品な言葉を吐きながらも、ようやく彼の住まいでもあるアパートへと到着する。



「さぁて、とりあえずお風呂の準備をして……っと。」



 そしてようやく休めるという安堵感からコツコツ、と鼻歌交じりに二階への階段をゆっくりとかけ上がっていく。


ーーーしかし彼の玄関手前でその鼻歌がピタリ、と止まる。




「誰か……居るのか?」




 そう、彼の部屋の小窓から明かりが漏れ出しているのだ。

蒼は私生活は荒いが鍵をかけ忘れた、ということは一度もない。


ましてや彼は独り暮らしである。

不審に思った(アオイ)だが、しばらくすると軽く溜め息をつき覚悟を決めたようにドアノブへと手を伸ばす。



 ガチャリ、とその手を捻ると部屋の中からーーー。






「アオくぅーーーーん!!遅いよぉ!!!!」






 バンッ!と扉が開いたかと思うとそこからなんとも甘ったるい女性の声が深夜に響き渡る。




「はぁ……やっぱり君か。念の為聞くけど、どうしてここに居るの?」


 呆れた様子で今日何度目か分からない溜め息つく(アオイ)




「えへへ!だって私アオくんの彼女だしぃ?おまけにラブラブだしぃ?」


「そういうことを聞いてるワケじゃない、何で鍵をかけたのに当然のように居るんだって話だよ。

あとラブラブじゃねぇ!!!」





 そう、この女性は(アオイ)の彼女……というワケではない。

名は南川 もあ(なんかわ もあ)

年齢、出身などは不明。

常にヒラヒラの洋服を身に纏い、化粧も俗に言う地雷メイク。





 ……一言で言うならば《痛い》、女性だ。





「うーん?どうしてここに居るのかぁ?そ・れ・は!……ジャーン!!この愛の結晶のお陰だよ!!」


「ただの合鍵じゃねぇか!重たい愛を勝手に解釈しないでくれます!?!?」




 と言い放つや、もあの合鍵を直ぐ様に奪い取る(アオイ)


何だかんだで仲良さげな二人だが、知り合うキッカケは単純に蒼が歩道橋で声を掛けた、それだけだ。

……それだけだったのだが、それ以来このように非常に懐かれてしまっている。




「……うん、あの時のことは本当に嬉しかったよ……私、いっつも失敗して怒られてて何の為に生きてるのかなって毎日考えて考えて、頭がどうにかなっちゃいそうだったもん……」



 先程までのハイテンションは何処へやら。今度は悲しげにポロリ、ポロリと語りだすもあ。



挿絵(By みてみん)


「っ…ぅぅ……。私、やっぱりみんなと違うのかな、変なのかなって……。そしたらアオくんが……。」




「別に変だって良いだろ。それに俺は可愛いと思うぞ。」




「認めてくれた!私のこと変な目で見ないで、ちゃんと見てくれた!!その時に思ったの!もあの生涯を誓う相手はこの人しか居ないって!!……ぐすっ……うぇぇーーーんっ!!」



 かと思うと今度は小さい子どものように突然号泣し出すもあ。

普通ならば目の前の女性が泣き出したら多少たりとも動揺はするであろう、それが人間だ。

しかし対面にいる蒼はビクともしない。むしろまたか、という呆れた表情を続けている。






(いや……。道のど真ん中でやべー奴に絡まれたから下手に刺激しないようにしただけなんだけどな……。)






 そう、この《金木 蒼》はクズである。

決して泣いているもあを励ます為に優しい言葉をかけた訳ではない。

面倒な出来事から避ける為に常に保守的に考えて動いているだけだ。

しかしその保身が今度は蒼のアダとなってしまったようである。



(しかしこの騒音は非常にマズいな……。先週お隣さんと深夜に壁ドンバトルをしたばっかりだぞ……。

なんとかこの事態を納めなくては。)



 と決めたが早く、もあを抱き寄せる蒼。



「え、ぇぇ!!!?アオくん……急にどうしたの。」



 どうしたのは、お前じゃい!と言いたくなる衝動をどうにか抑えて言葉を並べる蒼。



「いや……。もあが泣いている姿をもう見たくないんだよ……。」




 そう、嘘は言ってない。蒼はもあがどんなに泣こうが胸は痛まないが時間が時間帯だ。

このまま騒ぎ続けられると住民バトルでのヒエラルキーが非常に下がってしまう、それだけは避けたい一心で絞り出した言葉である。




「アオくん……。私の為にそんな……。」



 しかしそんな策略に掛かっているとはつゆ知らず。

もあはうっとりとした様子で蒼をゆっくりと抱き返す。



(ふぅ……。とりあえず収まったか……。とりあえず部屋に入ってご飯でも食べて落ち着くか……?)



 どうにか危機的な状況から脱した蒼。

そして次の一手を考えて行動しようと思った矢先に……。







「……知らない……女の匂い……。」







 刹那、ドスッ!!と何かに貫かれたような激痛が蒼を襲う。



「が……ッ…!?はっ……ッ…。」



そして自分が目の前の女に刺されたと気づく頃にはもう遅く意識が朦朧と堕ちていくのであった……。

Tips!


ナイフで刺されると、とても痛いのでなるべく控えましょう。

たぬきさんとのお約束だよ。ぽんぽこりん。



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