15* -ゴミ処理場-《ゲンザイ》
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不可解な現象をひとまずは置いて、少女の言葉を信じて仲間と合流すべくドラブア通り村へと駆けるアオイ。
そしてしばらく道なりに歩いていると何やら集落の様なものを見つける。
「ここがドラブア通り村…………かな?……思ったより近くて助かった…………。」
無力な中、移動中にモンスターにでも襲われたらどうしようかとヒヤヒヤしながら歩むアオイであったがそれは気鬱に終わったようだ。
そのままそそくさと村へと入ろうとするアオイであったが聞き馴染みのある声が突如出迎える。
「アオイ様ッ!?…………ご無事で何よりです。」
ガバッ!とアオイの豊満な胸に飛び掛かるように頭を埋める奇妙な生き物。
そう、アオイの使い魔でもあり運命共同体でもあるナナだ。
「ひゃあんっ!?………ってナナ!?良かった……何とか合流出来た…………。」
「申し訳ありません……。以後このようなことにならないように気を付けます。」
そう言ってグリグリと自分の頭をアオイの胸に押し付けるナナ。
……猫ってこういう所あるよな、と呆れながらもアオイはその言葉に応える。
「あぁ、もういいよ……。おやつのカリカリはしばらく抜きだけどね。」
ナナは恐らくだが自分の転移魔法の座標がずれてしまっていた責任もあり、アオイのことを本気で心配してたのだろう。
…………当の本人はそんなことなど全く気にしていない様子ではあるが。
そんな凸凹な再開の騒動に遅れてトーとユリも合流するのであった。
「アオイさんッ!?……良かった無事で……!!髪を下ろしていたから一瞬気付かなかったよ……!」
「チッ………!!」
こちらも反応はそれぞれだがアオイは早くも慣れたようでヘラヘラと適当に挨拶を済ませるのであった。
「いやーごめんごめん!なんかちょっと調子悪くてねぇ…………。
でもあっちの道標を女の子から教えて貰ったお陰で何とか合流出来たよ。所でホブゴブリンはどうなったの?」
そう言うとアオイは今来た道を指す。
「女の子…………?この辺りで…………?」
アオイの言葉に少し引っかかる様子のトーであったがアオイの怪訝な表情にすぐに話題を切り替え出す。
「あぁ、いやごめん…………。えぇと、ホブゴブリンだったよね…………。
ボク達もアオイさんの詮索をしながらこの村で聞き込みをしてたんだけど、やっぱりゴミ処理場を縄張りにしているので間違いないみたいだよ。」
どうやら先にこの村へ来ていたトー達は依頼の件についても聞き込みをしていたらしく、
ホブゴブリンが縄張りにしているであろう場所も絞り出していた。
村への被害は今の所無いもののゴミ処理場が近く、更には若者が居ないこの村では常に怯えて暮らしている様子だ。
そんな村人達からの期待に応えるべくトーは討伐依頼を早く済ませたいと言わんばかりに早口で説明するのであった。
「へぇ…………。そりゃ大変だね、よし!早速向かおう!!」
そしてそんなトーに応えるべく依頼を早く済ませようとするアオイ。
彼女もまた正義感に駆られて…………ということではなく、自分の身体を戻す良い行いの為の衝動に駆られていただけである。
しかしそんなことを知る由もないトーは嬉しそうに感謝の言葉を述べるのであった。
「むっ…………。でもアオイさんは疲れているのではなくて?この村で休憩していても良いですわよ?
依頼はわたくし達が片付けて来ますので!」
アオイとトーの様子を横目で眺めていたユリがけん制を入れるかのようにようやく口を開く。
「お気遣いどうもありがとう、ユリちゃん。…………でもトー君が言う通り早く解決したいから私も一緒に参加させて貰うね!」
(ぐっ…………!?このデカ乳女…………嫌味ですのッ!?)
そのアオイの言動にギリギリと歯を噛みしめるユリであったが人前もあり、すぐに諦めた様でそっぽを向くのであった。
(いやぁ、本当は休憩したい所なんだけどゲームとかの姫プって私一番嫌いなんだよね…………。
取り合えず付いて行ってさっさと終わらせよう。)
一方のアオイは嫌味でも何でもなく、ただただ自身のプレイスタイルを突き通しているだけなのであった……。
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そして再開の後、すぐにゴミ処理場へ向かう一同。
何やらユリの視線が一層厳しくなった様子ではあるがそんなことは気にせず歩み出すアオイ。
そんな中、遂にゴミ処理場へ到着するのであった…………。
「…………よし、着いたよ!」
トーがそう言うとその先には厳重な柵が幾重にも施してあり、どこか寂れた様子の風景が広がっている。
「へぇ……ここが。ゴミ処理場っていうからてっきり作業場みたいな施設を想像していたんだけど、ただの寂れた土地みたいだね。」
アオイがそう言葉を漏らすと、トーがどこか嬉しそうに説明し出す。
「そうそう!…………前にも説明したけどここは昔争いが起きて出来た大穴にゴミを投げ捨ててるだけだからね。
月に一度、溜まったゴミを捨てに来るぐらいしか人が訪れないんだよ。」
そう言うとトーは柵を潜り、大穴を見下ろす位置まで近づく。
それに釣られて一同もその付近まで近寄ると…………。
「うへぇ…………。何、この穴。デカすぎるでしょ…………。」
アオイが大穴の底を覗こうとすると、昼間でありながらそこは漆黒の闇がひたすらと続いていた。
まるで飲み込まれそうになる闇にゴクリ、と思わず息をのむアオイであった。
(こんな所に落ちたらひとたまりもないね…………。というか本当に底があるの?)
各々がその闇に眼を奪われている中、急遽ユリが静かに声を漏らす…………。
「…………気を付けてくださいまし、殺気がしますわ。」
ユリの言葉に大穴から一旦離れ身構える一同。
ピリピリと静寂が響き渡る中、突如獣の様な怒号が一瞬で静けさを破る!!!




