13* -ゴミ処理場-《レキシ》
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予期せぬ強敵との遭遇があったものの、【ホブゴブリン】の緊急討伐依頼をこなす為にトー平原街を後にするアオイ一同であった……。
「さて、自己紹介が遅れたね。
僕はトーリ、職業は騎士でこのパーティーでは前衛を務めさせてもらうね、よろしく!」
そう言って等身大はありそうな大盾を眼鏡と共に光らせるトー。
そして不服そうな表情をしながらもトーに促されて自分のパーティーでの役割を説明するユリ。
「…………わたくしの職業は戦士、ですわ。
不本意ながらもトー様が引き付けられた敵をこれでぶっ潰しますわ。」
そう説明するとユリは自分の身の丈の倍はあるであろう巨大な斧を軽々と片手で掲げるのであった。
……どうやらトーが守り、ユリが攻めるスタイルのパーティーである様だ。
「まぁホブゴブリンなんてわたくし達二人で十分討伐出来ますけどね……。一応尋ねますが、貴女何が出来ますの?」
そう言って明らかに不機嫌そうにアオイへ言葉を投げるユリ。
それに対してアオイは魔法などが使えることを伝えると……。
「へぇっ!?……ってことはアオイさんは貴族の出なのかな?」
まただ。
ミュールの時もそうだったが魔法が使えるとやたらと家柄などを確認されてしまう。
その不可解な現象に口をつぐませているアオイであったが……。
「っとと……。ごめんね、こういったプライベートな話はあまり聞き入るべきではなかったかな。」
まるで自分に言い聞かせるかのように謝罪するトーであった。
「あぁ!いや、その……まぁ色々あって冒険してるだけなのでお構い無く……。」
……どうやらこの世界では限られた人間にしか魔法は使えないことを確信したアオイ。
もしかして私ってスゴい!?と笑みが自然と溢れ出す。
そしてその様子が気に食わなかったのかユリがチクりと棘を刺す。
「……ふぅん…?でっかい乳ぶら下げてるからてっきり遊び人かと思ってましたわ……。まぁ魔法使いさんは適当に後ろに下がってて貰って結構ですわよ??」
そう言ってトーには見えない角度で肘を付くユリ。
(いだっ!?……このクソガキ……!いつか絶対泣かす……!!)
……そんなアオイの殺気を感じとったのか、今まで静観を貫いていたナナが口を開く。
「ちなみに私はアオイ様の使い魔のナナと申します、以後お見知りおきを。」
ふわふわと浮かびながらペコリ、と一礼するナナに驚愕するトーとユリであったがそこはいつもの様に慣れた様子で適当に説明するアオイであった。
そして場が落ち着いた後、ナナから一つ問いが投げかける。
「……所で【ホブゴブリン】の発見報告があったのはドラブアゴミ処理場……でしたか?実はアオイ様は転移魔法も使えるので周辺の場所をざっくり説明して頂けるとありがたいです。」
「あっ!ちょっと……何勝手に……!!」
そう、今日魔法を薬草集めで一つ使っていたアオイはなるべく魔法を消費しないように転移魔法の件は伏せて説明していたのだが今目の前に居る運命共同体にあっさりとバラされてしまったのだった。
それを知ってか知らずかナナも、おや申し訳ありません。と軽く謝罪をする。
「転移魔法まで!?……それだったら話は早いね……!!じゃあこれを見てもらえるかな……。」
そう言ってトーは何やらウキウキしながらもケザーシュ大陸の地図を広げるのであった……。
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「ふふ……。さて、じゃあまずはボク達がいるここ、トー平原街だね。
そして目的地はここから北西にあるドラブアゴミ処理場なんだけど……。」
「まずは北にあるオウゼブル地方!ですわね!!」
……先程までの不機嫌な表情はどこへやら、ユリはトーの説明に笑顔で参加しているのであった。
「そう!……西にある首都ルゲートでも行けるんだけどあの辺りは出現するモンスターも強いしそれに…………。」
いや、止めておこう。と何やら言葉を濁らせるトーであったが再び説明を続ける。
「……ごほん、そしてオウゼブル地方から道なりに西に行った先にドラブア地方が存在するんだ。」
「ゴミ処理場は確か……首都ルゲートとドラブア地方、オウゼブル地方の3つの地方間にあるのでしたわね?」
「その通り!!!実はここが面白い所で昔この3つの地方が争っていた時期があってその時に出来た大穴、これが今はゴミ処理場として有効活用されているわけだね!!」
熱弁するトーに対してへー、と冷めた表情で適当に相槌をうつアオイ。
その間も歴史を熱く語り出すトーであったがアオイのある疑問で中断する。
「……ん?待って。3つの地方が重なった場なんだよね?だったら何で地方外のここに依頼が来てるの??」
そう、今アオイ達が居るのはその3つのどちらでもないバーコ地方である。
何故わざわざ地方間での依頼がこちらに来るのか?という疑問はもっともだ。
その問いに対してトーが再び眼鏡を光らせて語る。
「……良い所に気付いたね、アオイさん。表面上このゴミ処理場は3つの地方が協力する、という形にはなっているんだけど実際管理しているのはドラブア地方だけなんだ。…………元々この地方はそこまで豊かではなかったからね……。恐らく手が回らなくてここにまで依頼が来たんだろうね。」
「まったく!!ルゲートやオウゼブルが意地悪しなければいいのに!ですわっ!!」
私に対して絶賛イジワル中のお前が言うな!と思うアオイであったが何となく事情は察した様だ。
「ではそのドラブア地方へ転移、ということでよろしいでしょうか?」
「そうだね……目撃情報もそうだけど、色々話を聞いておきたいしね……お願いできるかな?」
どうしますか?と横目でアオイを尋ねるナナに分かった分かった!!と諦めたように転移魔法の準備を行うアオイ。
「はぁ……じゃあ座標はしっかり頼むからね、ナナ。」
「善処します。」
そう言うとアオイ達の周りに見慣れた光球が集まりだし一瞬で姿を消すのであった…………
Tips!
旅行のチラシとか見てるとワクワクしますよね、行きませんけど。
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