11* -冒険者の集い-《ギルド》
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「よし、ついたね。」
アオイ達が向かった先はこの街一番の大きな商業施設、【花車】というギルドだ。
そう。ここトー平原街は様々な冒険者達が行き来をする場でもあり、様々な情報が交換出来る。
将又、ギルドからの依頼をこなしてその日のお金を稼ぐものも居る。
とりあえず冒険者であればここへ立ち寄るであろう鉄板の場所だ。
そんな常に賑わいの絶えない場へアオイ達は慣れた様子でギルドの奥へ進むのであった。
「アオイだけど、依頼の品はこれで良かったかな?」
受付嬢が居るテーブルへ先程の大きな麻袋をドサッ!と置くアオイ。
どうやらアオイ達はギルドの納品依頼を済ませる為に立ち寄った様だ。
「えぇと…………。アオイ様……確か薬草の納品依頼でしたね…………。
…………ってえええぇぇっ!?もしかしてこれ全部…………。」
「うん、薬草一つで銅貨10枚だったよね。いくらぐらいになりそうかな?」
すると受付嬢は慌てた様子で、精算するので少々お待ちください!と言ってテーブルの奥へ引っ込んでしまった。
…………あれほど大量の薬草だ、恐らく数を数えて選定するのにしばらく時間がかかるだろう。
それを察したのかアオイ達はギルドの待合所で時間を潰すべく歩み出した。
「しっかしあんな草一つが銅貨10枚とはねぇ…………。
薬草10枚で銀貨1枚なんてボロい商売ね。
風魔法でそこら辺の平原から、かっさらうだけで大して苦労もしてないし。」
と、言いつつも楽に金を手に入れられる事実により表情はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべているアオイであった。
「この街は新兵の冒険者が多い様ですしね、回復薬なども重宝されるのでしょう。
…………あと金儲けではなく、もっと人の為になるような魔法を使ったがよろしいとは思うのですが…………。」
と、アオイの抜け目の無さに呆れつつもツッコミを入れるナナなのであった。
「ふーん…………。一攫千金でツルハシを売ってた人が結局一番儲けてる様なものかな。
…………あと、金儲けじゃなくてギルドの依頼をこなして良い行いをしてるだけだからね?」
といいつつパチン!と指をならしナナの頭上に【7】という数字を浮かばせるアオイ。
そう、一応あれからギルドからの依頼を毎日こなしていたアオイは良い子ポイントを地味に稼いでいた。
(と言っても、たったの7ポイント…………。こんな簡単な採集依頼じゃダメね…………。
魔法の扱いも慣れてきたし、もっと大量に稼げそうな依頼にそろそろ移るべきか…………。)
ふとそこへ掲示板に提示してある、他とは明らかに大きさの違う依頼の張り出しがアオイの目に止まる。
どうやら【ホブゴブリン】というモンスターの緊急討伐依頼らしく金額も金貨10枚と中々に羽振りの良い依頼である。
しかも何やら注意書きの様なものが多く中でも目を引いたものが、
【ギルドから認められた冒険者、または4人以上のパーティに限る】
というものだ。
…………どうやら自分達にはまだ早いか、と肩を落とすアオイであった。
そして再び歩みを進めると待合所付近で何やら、キャー!キャー!と黄色い歓声が上がっていた。
何事かと思い待合所へ入ると…………。
そこには眼鏡をかけて黙々と読書に更けている男が居た。
その落ち着いた雰囲気とは裏腹に程よく筋肉質な体付き、ギルド内でも主に女性人気がある有名な男性だ。
もちろん実力もあり、相方の女性と2人パーティでモンスターの討伐依頼をこなしているのもよく見かける。
そんな男に普段のアオイだったら唾を吐いて塩でも撒く所ではあったが、先程の依頼が脳裏を過る。
(こいつのパーティに入れて貰えば依頼を受けられるんじゃないか…………?)
そう、ギルドからの実力も折り紙付き。しかもアオイとその男性のパーティを合わせれば3人と1匹。
先程の条件はなんとか達成してる様に見える。
それに気づいたアオイは少しの沈黙の後に、ヨシ!と気合を入れてその男性へと駆け寄るのであった。
そして一言…………。
「あのぉ…………ごめんなさーい!私ちょっと受けたい依頼があってぇ…。
良かったら一緒にパーティ組みませんかぁ……?」
瞬間、先程まで賑やかだった場がアオイの猫なで声によって静かになる。
これは決してアオイが可愛いから、などではない。もっと恐ろしい事態が起きているのだ。
そう、囲いの女性達が一斉にアオイに対して厳しい目を向けている。それも凄まじい殺気だ。
それも当然だろう。
当の女性達は遠くから眺めているだけだったのに、いきなりどこの馬の骨とも分からない女が憧れの存在に対してずけずけと迫っているのだから。
要するにアオイは地雷原をヒールでタップダンスしているのだ…………。
(…………ん?なんだ…………?私、何かやっちゃったかな?)
しかしアオイは女だが男である。そんな事情は一切分からない。
そしてそんな静けさを破るように目の前の男が口を開く…………。
「…………えぇと、君はたしか……アオイさん、だったかな…………?」
「わぁ!私の名前を憶えて貰えてるんですねー!?光栄ですーっ!!」
慣れない女の演技にアオイはキャピキャピとはしゃぐ。
それを見ていたナナは呆れた様子で静観を続けていた。
「ここ最近、ギルドへ薬草をあり得ないぐらい納品している女の子が居るって話題だったからね…………。
それで、どんな依頼を受けるつもりなのかな?」
アオイの色仕掛け?にも全く動じず笑顔で優しく諭す男。
なるほど、これはモテるわと思いつつもアオイは先程の依頼を示す。
「【ホブゴブリン】の緊急依頼……………………ふむ。」
すると先程まで穏やかな表情が一変、何かを考えこむように険しい表情になる男。
ーーーーーーー再び静寂に戻ったかと思うと、
そこへ新たな女性の黄色い声が待機所で響き渡るのであった…………。




