第4回放送~ever after~
「3年の諸君、夏期講習お疲れさん」
『待たせたな!』
「so cube夏休み出張版だ」
『だからオレにタイトルコールさせろよ! ……そもそもオレは今日の放送内容を一切知らないんだが』
「まあそれは追々。で、実は今回の放送は諸事情があって放送圏を縮小してお届けしている」
『ほう?』
「今回の放送は旧校舎の大講義室にのみ届くように、こちらの放送室から設定している。リスナーが大講義室に集まってくれてるといいんだけど」
『残念なことに、先ほど様子を見てきたが……そう上手くはいかなかったようだ』
「まじか……リスナー全然集まってなかったのか?」
『ああ……腕にカラフルなシリコンバンドをしている不気味な連中がたむろしていた』
「それ確実にリスナーだな」
『しかしなぜ旧校舎全体に放送しないんだ?』
「それは……so cubeリスナー以外、特に先生に聞かれないためだ」
『……先生に?』
「ああ……今日の放送内容は先生に聞かれたら終わりのヤバい内容だからな。絶対に他言無用で頼む」
『お、おう。妹からの質問はいつも通り、公式SNSのDMに頼むぞ』
「昨日の放送内容はちゃんと二宮の約束通り、SNS上では黙ってくれているみたいだしな。リスナーを信用して放送させてもらう」
『了解だ。ところで参謀よ、そろそろ今日の放送内容を教えてくれないか? 無事に旧部の活動ポイントも集めたんだ。今の我々に何も問題ないのではないか?』
「大ありだ! 今俺はとんでもねー状況になってんだよ! てめーと3年のせいでな!」
『オレと3年?』
「まず3年! 3日前、旧部OBが悪ふざけで悪意のあるネタを投稿したこと! それを他の3年が面白がって拡散させたこと!」
『そのおかげで旧部の名が知れ渡ったとも言えるが』
「そしてお前! 一昨日、微妙な事件を引き起こしたこと! それに加えて、昨日のダメ押しのプレゼント!」
『おお! さっそくプレイしてくれたか!?』
「違うわ! なにエロゲをプレゼントとして送ってんだよ!? 何も知らない純粋無垢な子供がそれを手に取ってたんだぞ!? お茶の間が凍り付いたわ!」
『……』
「何が、”恥ずかしいから家で開けてくれ”だ! どこで開けても恥ずかしいもんじゃねーか!」
『……』
「はあ……やっとお前も事の重大さが分かったか」
『……』
「……いや、まあそんな黙んなくても。これに懲りたら──」
『──その純粋無垢な子供は女の子なのか!? 幼女か!? 妹か!?』
「……はあ、もういいわお前。……あーもう! 俺の家庭事情説明すんのめんどいし、今の状況をリスナーにも分かりやすいように一言で言うと!」
『一言で言うと?』
「昨日から俺──学校に住んでる」
◇
『えー……先ほどの発言を経て、ものすごい数のDMが寄せられてこちらで処理するのが大変になった。よって急遽前回と同じように先ほど公式SNSにリンクを貼ったので、ここにメッセージを投げてくれ。オレのスマホに表示する』
【やばすぎw】
【そりゃ先生に聞かれたら終わりだわ笑】
【お茶こぼした責任取って】
「この誰が言ったか分かんないシステム嫌なんだけどな。DMならアカウント分かるし──」
『そんなことはどうでもいい! それより話の続きだ!』
「いや……まあ手短に言うと、ロリコンの風評被害とか諸々で居候先でいたたまれなくなった結果、旧放送室に寝泊まりしているという状況だ」
『道理でオレが今日放送室に来た時、お前が椅子を並べて寝ていたわけだな……というか参謀、居候していたのか?』
「まあその辺の説明はめんどいからいつかするけど……まあとりあえず学校が住所になったんでよろしく」
『いや待て! 超展開すぎてついていけないが、とにかく住む場所がなくなったのは分かった。だが、他に住む場所の当てはないのか?』
「んー、もともと家庭事情的に親戚付き合いとかあんまりしてなくて、全然当てがねーんだよな。母さんも今海外だし」
『そ、そうか……』
「まあネカフェに泊まろうかとも思ったんだけど、いかんせん金がなくてなー。で、よく考えたら無料の宿泊施設あったわって思ってここにしたわ」
『ふ、ふむ……なるほど』
「まあ旧校舎ならセキュリティガバってるし侵入が容易い。治安もいいし、電気もある。おまけにトイレや水道も完備。妥当だろ?」
『まあ、そうだが……いや待て! お前──落ち着き過ぎだろう!?』
「は、どゆこと?」
『いやいや! “急に変なこと言い出してどうした”みたいな顔するなよ! 明らかにおかしいぞ!? 高校1年生にして家飛び出したんだぞ!? 冷静すぎるだろう!?』
「どした二宮? そう慌てんなって」
『どうして逆に慌ててないんだよ!?』
「おいおい──変にテンション上げて放送を盛り上げようとしなくていいんだぜ?」
『違う違うお前がおかしいんだって!! これ世紀の大事件だぞ! ちょっと妹たちも黙ってないで何とか言ってやれ!』
【代表……どうしたの?】
【いつものソラだよ?】
【変にテンション上げなくていいよ? そういうの冷めるから】
『まともなのはオレだけか!? オレだけなのか!?』
「逆に考えてみ? お前だったらどうするよ?」
『えっ、いや、オレだったら……どうすると言われても……』
「まあ迷う気持ちも分かるけどさ、常識的に考えて学校一択だろ?」
『常識的にそれは選択肢に浮かばないんだ……っ!!』
「いや分かるよ? 参謀なのに学校という安パイの選択を責める気持ちは。ありきたりっつーか、レアリティがないっつーか……」
『いやリアリティがないんだよ! というかやめろそのキャラ! 薄気味悪いぞ!?』
「?」
『……食料はどうするんだ! 飲み水はあるとは言っても、さすがに食べるものが無ければ生活できんぞ!』
「それなら問題ない。これがある」
『学生証……? ポイントか?』
「そうだ。昨日の放送で20万とリストバンドで5万集まっただろ? そのうち、10万はもう支払って残り15万。まあ来期の活動分に10万はとっておくとしても、5万残ってんだろ? そのポイントを食費に充てる」
『な、なるほど。食堂に毎日通うというわけか……だが、そのポイントはあくまで寄付してもらったものだ! 妹がそんな使い道を認めるはずが──』
【許可】
【いいよ】
【ok】
【今度一緒にメシ食おうぜ!】
「ほら、いいってよ」
『いいのか!?』
「実は、今日の放送場所である大講義室はリストバンド所持者のみ入室可能とSNSで告知しといた」
『だからリストバンドみんな持っていたのか! つまり、昨日リストバンドを購入するほどの熱心な妹たちしかいないというわけか……!』
「これで、リストバンド購入者から5万の使用許可も降りたな」
「だが! 他にも解決しないとならん問題はあるぞ!? 洗濯だったり、シャワーだったり──』
【合宿用のシャワーくらいこっそり貸せるぜ? 後輩に言っとくわ】
【マネージャー用の洗濯機の使い方教えますよ!】
【ソラ、裁縫が必要だったら家庭科室開けてあげる!】
【部室でいらなくなった大きめのソファあるよ! 寝る時に使って!】
「お前ら……行き場を失った俺なんかに! うぅ……ぐすっ……俺ぁいい仲間を持ったぁ……!!」
『冷静になれ参謀! 元凶はこいつらだ! ただのマッチポンプだぞ!?』
「やめろ! 俺の仲間を馬鹿にすんじゃねえ!!」
『頼むから目を覚ましてくれよ! 山市ぃい!!!』
こうして、奇妙な文字通りのハラハラドキドキサマースクールライフが幕を上げた。
Next → 2学期!
so cube!!! ~色々あって勝手に学校に住むことにした~
今はこんな状況でしょうか?
サブタイトルはノリで変えると言って、結局一度も変えませんでしたね……べ、べつに忘れてたわけではありませんからね!
というわけでso cube!!! 1学期が完全終了です!
以降は不定期ですが、好きなのに諸事情で没にせざるを得なかったした没ネタを、番外編として供養していこうかなと思っています。
というわけで番外編を除き、次にちゃんとお会いする機会は2学期編、もしくは夏休み編の続きが書けたら……ですかね!
前回の後書きで二人が言ったように、ちゃんと長編仕様に書き直すにあたって、愉快な読者の皆様の協力もあって成り立っていた後書きや感想をそのまま残しておきたかったので、別の作品として書こうと思います。
そのためにせっかくこの作品に寄せられたブクマと評価、いいねを全部なしにして再出発するというなかなか頭の悪いことをやっちゃうizumiです。多分もうこれは越えられなさそう……。
ちなみに読者の方々に「お待たせ! 続き書けたよ!」と、お知らせするいい方法ってあるんですかね……?
活動報告って普通目に入ることないですよね……ユーザのお気に入り登録という未知の機能というものがあるそうですが、使ったことがないので機能不明という無知。
新たな作品を書いた時にちゃんとランキング入りすれば、皆様の目に留まると思いますが、それ狙ってできるやつなんていねーよというツッコミが今聞こえました。
またどこかで『so cube!!!』という文字列を見かけたら、その時はご縁があったということで、ひとつよしなに!
話の流れはガラッと変わっていることでしょうし、こんな中途半端な形には終わらないことを約束します!
……でもよく考えたら、全く同じタイトル作品は流石にまずいだろうから、書き直す方は、何かしらタイトルを変える必要が……?
あと、反省を活かしてコンパクトに書き直すにあたって、ごっそり消失する回、やり取りが出てくると思います。
なので、この回が好きだったとか、このやり取りが好きだったとか、ここが好き! みたいな声は是非ください!! 多分一番これが欲しい。
反映するかは確約できませんが、残す部分の参考にさせてください!
まだまだ、「なぜかこの回がいいねが多いけど理由が全っ然分かんない。誰か教えて?」みたいな話が尽きませんが、これ以上後書きを長くするのも忍びないので、続きは機会があれば活動報告にでも記しときます。
おそらく、皆様の多くが納得のいく形で完結! ……ではないですよね。絶対。
「なんだよ! 書き出したんなら責任もって最後までしっかり書いてくれないとね!」
という正論に対して思うことは──ぐうの音も出ません! ほんとそれな!
単純にizumiの実力不足なので、もうほんとにこれしかないです。
ですが、そんな本作をここまで読んでくださった読者、山市風に言うとリスナー、二宮風に言うと妹の、三者三様の皆様、本当の本当に感謝です!
最高に楽しいビッグウェーブでした!
この反省をしっかり踏まえて……またご縁があれば、必ずお会いしましょう!
izumi
 




