話の流れ上、字数が少なくなる回でも何とかあがくのがうちの子の強みでした。
──深夜の夜道。
「よし。とりあえずこの夏の見通しは立てたぜ……」
空を見上げると、星が綺麗に輝いている。
こんなに星空を観察したのは、小学校の夏休みの天体観測の宿題以来だな。
今から踏切でも行くか? 午前2時には間に合うけどな。
……にしても、まさか16歳にしてバック一つの軽装で家出少年になるとは。
所持金も五千円くらいしかない。
そもそも、居候の身にお小遣いなどの収入源は皆無だ。さすがに厄介になっている家庭からお金を恵んでもらうわけにはいかない。
元々、お金を使うことは基本的に全くない。
3月末日に、母親が俺に1万円手渡して海外に行ってしまった状況を踏まえると、現在の所持金はなかなか健闘した方だと思う。
幸いにも、夏休みなら状況的にも気温的にもホームレス日和だ。
誰かひげを剃っているサラリーマンでも拾ってくれませんか? まあ拾われるのは美人JKなんですけど。
とはいえ、とりあえず宿の場所の当たりはなんとなくつけてある。
だが、まずはノートパソコンを使って二宮に現状を連絡だ。
深夜アニメでも見てるだろうからこの時間でも起きていると思うが……。
そのためにはWiFiが使える場所を……思いつかねーからとりあえずネットで検索……はできねーのか。
つーかWiFi探しなんて小学校の頃を思い出すな……。
──あの頃って、どこ行ってたっけな?
つか、やっぱ夜でも暑いな……ちょっと喉も乾いたし……。
◇
「ありがとうございました~」
そうそう、コンビニって無料でWiFi使えたわ。
連絡ついでに、飲み物とコスパの良いカロリー源であるパン類を確保できたし、滑り出しは上々。
ついでに旧部のSNSを動かしといたし、これで布石は整った。
「さーてと……行くか!」
俺は目的地に向かって歩き出した。
*********************
ユーザ名:cube@so cube!!!
文責 参謀ソラ
日付変わって本日の昼。
旧校舎でso cube夏休み出張版を放送させてもらう。
あんたらと二宮のせいで俺は現在進行形でとんでもない目に遭ってる。
少しでも俺に悪いと感じてる3年は聞いてくれ。
3年は明日の午前中、夏期講習の特別授業があるからちょうどいいと思う。
今回の放送場所は追って連絡する。
*********************
「そーいや、全然長文の後書きやらなくなったよな」
『それには理由がある。条件を満たしていないからな』
『……条件?』
「以前の大賛辞という名の大惨事を受けて、izumiは
・そもそも本編がつまんない
・やっても本編の邪魔にならない場面転換の時
・本編のノリと後書きのノリが一致している
という時だけやろうと決めていたらしい』
「一番目の条件は作者として絶対言っちゃいけない」
『言ってやるな。ストーリーに山があるということは自ずと谷もある』
「……まあ普通やっちゃいけないことばっかしてきたからな。もう今さらか」
『ああ、盤外戦ならお手の物だが……そんな物語も次回で終幕だ』
「……はあ!? 1学期で打ち切り!?」
『いや、2学期はいつかやりたいとは思っている。そしてやりたい内容もすでにまとめてある。izumiから借りてきた資料がこちら』
<2学期のお品書き>
*住む家を失った山市に対して、親戚だからと山市を拉致ろうとする主人公イベント、それに付随する形で、柊木の兄(生徒会長)と柊木の祖父(学園長)に会うキーイベント。
そして柊木ファンクラブ(会長:祖父。代表:兄)による、最近豹変した柊木の意中の人捜索イベント。
*二宮先生が親切心で二宮家にしばらく泊まらせたら、期せずして同棲の既成事実を作れてしまったウエディングイベント。
*旧放送部の影響をもろに受けて、お前らももっと面白い放送しろと不当な謗りを受けている新放送部とのいざこざイベント。
さらに、旧部の後期(10月)からの活動のために部員が3人以上必要ということで、部員勧誘イベント(新放送部からのヘッドハンティング)
*なんといっても更科さら。
すでに消された感想の返信にも書いたけど、『so cube!!!』は更科さらのための物語。ビックリマークの数も山市・二宮・更科の3人という意味が込めてあるのに、助走が長すぎてほんとに後悔。
*柊木学園1年10組理数科リア充討伐委員会の結成と学園寮への入寮イベント。
……。
「さらっととんでもないネタバレがあったんだけど?」
『どうした? ネタバレを差し込むのはいつものことだろう?』
「感覚麻痺ってんぞ」
『まあこれがちゃんとネタバレになるのか、エタった後の設定集になるかはこれからだ。2学期をいつ実現できるのか正直見当がつかないというのがizumiの正直な心境だ』
「いつまで待たせるのも申し訳ないぞ?」
『待たせると内容忘れるし、振り返ろうにも3日間で10万字の頭おかしい構成の文章を読んでくれる奇特な読者は少ない』
「そもそも第3回放送終わってからの”後日談”って言ってもう数万字いってるからな」
『そのあたりの構成も正直、これ以上話が進むと修正不可能なレベルに差し掛かっている』
「今ならまだぎりぎり……いけるか?」
『だから──極薄の伏線を回収した、一応キリが良い次回で一旦完結とする』
「……ほう?」
『そして、2学期編をいざ書くとなったら、新たに別の作品として、まず構成を修正した1学期を書いて、そのまま2学期編へと繋げていこうと思う』
「お、おう……ただ仕事量増えてるだけな気もするが。まあ当分待たせるだろうから内容忘れるし、それがいい……のか? 例の後書きが本編回とか絶対なくなるよな」
『感想や後書きの整合性を残したまま修正する方法がなくてな……正直これでいいのかも迷っている状況だが──ともかく次回で完結だ!』
「……ついに完結か」
『……正直、まさか10万字を超える作品になるとは思わなかったぞ』
「……だな。良い読者に恵まれたし、本当に幸運だったんじゃねーか?」
『ああ。こんなに感想もらうこともなかったからな』
「感想にかなり助けられたけど……そーいや、今までの感想で二宮が印象に残ってるのってなんかある?」
『そうだな……やはり小学生妹からの感想は記憶に残っているぞ!』
「あれは衝撃だったなあ……」
『今冷静に考えても、小学生でコメディを読もうとはならんぞ? 恐るべし……』
「初めてなろうのサイトを開いた時なんて、異世界とハイファンと現実恋愛の面白さに熱中するよな。コメディから入るやつなんて絶対いないと断言できる」
『そういう山市は何か記憶に残っている感想はあるか?』
「何かあるかなあ……中学生からの感想はよくあるし……」
『感覚が麻痺しているぞ』
「あー、あれだあれ。ほら、お前は中学生の感想欲しいけど、俺はなろう歴のある人からの分析が欲しいって言ったやつあったじゃん?」
『おお、確かにそんな回があったな。izumiはなろう歴2年くらいだから分析できないというような話をしていた記憶がある』
「それでその後、たしかなろう歴10年越えのリスナーからの貴重な感想が来たんだよ」
『おお! 本当か!?』
「それでその内容が……ほら、これよ。読んでみ?」
『ふむ……”王道や流行りの設定より変化球的な作品の方が楽しめる”……いい分析じゃないか!』
「俺──ストレート投げてるつもりだったんだ……」
『……』
「……まあ? 俺だって薄々分かってたよ? 俺たちの作品──何にも新しいことしてないってさ」
『おい! 最後だからってそれだけは言っちゃ駄目だ!!』
「だってさ? 周りを見れば? 婚約破棄に悪役令嬢とか? Vtuberとか? スローライフにざまあとか? みんな何かしら新しいこと取り入れてやってんじゃん?」
『最終回を前に卑屈になってどうするんだよ!?』
「それに引き換え? 俺らのメインって? え、校内放送? なにそれおいしいの? 多分50年前でもこの小説書けちゃうよ?」
『ひ、否定できん……』
「もし2学期ができたら──ゲームの世界の悪役令嬢に転生して婚約破棄してVtuberになったあとに異世界転生させて、ざまあと成り上がりをして最終的にすべての地位を捨て、幸せなスローライフを築いて異世界チーレムでもう遅い──という作品を目指して構成を変更しようと思う」
「誰が読むんだ……」
『分かんねーよ! でも誰かは読んでくれんだろ!? こんなタイトル面白過ぎるだろ!?』
『ま、まあ! 逆に考えてみないか?』
「……なんだよ?」
『読者のおかげで、一度は打ち切った作品が謎の急上昇で続ける機会に恵まれたわけじゃないか?』
「そ、そうだけど……」
『イレギュラーな連載再開から2か月が経ったが、日間も週間も月間も1位が取れたじゃないか?』
「で、でも! それでも俺は!!」
『幸運なことに現在コメディ部門で四半期2位、年間9位だ。正直、実力とはかけ離れた身に余る光栄だろう?』
「ぅぐっ……!!」
『確かに目新しいものは何もなかったかもしれない。それはきっと気のせいではないのだろう』
「……ああ」
『だが──今はそれを誇ろうではないか?』
「二宮……」
『何も新しいことをやっていない、ありふれたものだった分、小学生にもオレたちの作品が読んでもらえたとは思えないか?』
「…………いらねーんだよ最後にそんな綺麗なまとめはさあ!! 最終回を前に俺の許可なく主人公ムーブかましてんじゃねーよ!!」
※こんなにも2枚目も3枚目もボケもツッコミも変幻自在にやってくれた、主役ではないけど確かに主人公だった凛空に感謝。
唐突な報告となってしまって申し訳ないです……っ!!
何卒ご容赦を……!
ちなみに後書きが長くなったのは、つまりそういうことです。
というわけで次回!
全然最終回っぽくない最終回 because 最終回って決める前に書いた奴を流用
 




