破滅へのカウントダウン。
「前回の誤字は本当にすみませんでした」
『謝罪からのスタートとはな』
「何かやたら感想来てんな……ってとこで嫌な予感はしてた」
『なるほど』
「だが、”いや……あまりの面白さに一同称賛という可能性もあるっ!”って無理してテンション上げて開いたけど、案の定だったわ」
『感想・誤字報告してくれた妹よ、礼を言う!』
──もう日付も変わって夏休みに突入しようかという時。
ノートPCでオンラインゲームに興じていると──勢いよく部屋のドアが開いた。
「りっくん!」
「……あーちゃんよ、どうして足音を消して来てドアを開けたのか、その理由をお聞かせ願おう」
「びっくりさせようとおもって!」
「そっか。でも次からは止めような」
「どーして?」
「下手したらりっくんこの家にいられなくなるくらいには致命的で決定的な精神的ショックを負うことになる。そしてその光景は、あーちゃんの脳内に死ぬまで永遠に刻み込まれることになる」
「ふえ?」
「今は分からないこの言葉の意味も、あーちゃんならあと10年もすれば分かってくれると信じてるぜ」
あーちゃんは、「ふーん」と不思議そうに顔を傾ける。
「んで、こんな遅い時間にどしたんだ? さては夏休みだから夜更かししてんだな? やはり学生の夏休みは夜更かしに限る──」
「宿題やってた!」
「バケモンじゃねえか……」
夏休みに入ったので、あらゆるタスクをリスケして徹夜でゲームしようという意気込みの16歳男性と、方や初日から鬼のスピードでタスクをこなす6歳女性。
なんなんこれ? この子の将来有望すぎん?
「これ、みて!」
「どんな宿題やってたんだ……ってこれ絵日記じゃん」
あーちゃんの手には、さきほどの夏休みの宿題である絵日記の束。
「ぜんぶかきなおした!」
「へ?」
「ほら!」
確かに、先ほどの絵日記とは内容が違うようだ。
なんといってもあの名作と呼び声高い、わーくらいふばらんすが見当たらないのが動かぬ証拠。
絵日記には未来の夏休みの日記が堂々と描かれている。
つーか、何故にそこまで絵日記にこだわるのだろうか。彼女のタスク管理におけるプライオリティについて二三、質問したいところだがそれは後回しだ。
「あーちゃん、この絵日記は未来の内容について書かれているみたいだが……」
「だいじょーぶ! かいたとおりにすればもんだいなし!」
「え……何という逆転の発想!? 確かにそれならつじつまは何一つ間違いなく通っているといえる。さらに、副次的な効果として計画的な夏休みを送ることができる……!」
なんて末恐ろしい子なんだ……。
「もしかして、天才か……!?」
「えっへん!」
鼻息を荒くして、にっこり笑うあーちゃん氏(6歳)。イケメンすぎる。
「そーいえば、さっきおかーさんとおとーさんがりっくんよんでた」
「それもっと早く言って?」
子どもとはコロコロ気分の変わる生き物らしい。
◇
自室のある2階から1階に降りると、おじさんとおばさんが深刻そうな表情でテーブルを挟んで喋っていた
「り、凛空君、ど、どうしたんだい……!?」
俺を見るなり、うろたえるおじさん。
少し様子がおかしいが、俺を待っていたわけではなさそうだ。
──あれ? もしかしてあーちゃんの勘違い?
「どうやら俺のこと呼んでないみ──」
──その言葉の続きを言うことはできなかった。
なぜなら、テーブルにおいてあるおばさんのスマホに、見覚えのあるアカウント名が表示されていたからだ。
──ユーザ名:cube@so cube!!!
「か、確認なんだけど、ここに書いてあることって、ほ、ほんとなのかい?」
困惑した顔でおじさんが俺にスマホを見せる。
そこには、俺が見たことのないプロフィール画像があった。
おそらく二宮が意匠をこらしてデザインしたものだろう。綺麗にまとまっている。
そして、俺がso cubeのソラという人物であることが一目で分かるようになっている。
さらに、スマホに大きく表示されていたのは
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本日のso cube!!!まとめ
代表リクの姉は腹筋がバキバキ。
代表が女性に求める3要素
妹 児童 幼女
参謀ソラの好み
恋愛対象:6歳の幼女
求める雰囲気:初々しさ
求める身体的特徴:瑞々しさとあどけなさ
454いいね 75リツイート 5のコメント
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例のツイートだった。
「保護者の間でちょっと話題になってたんだけど……これ……凛空君よね?」
おばさんも気まずそうに俺に問いかける。
──そんなに話題に上がるくらいに反響あったのかよ!?
そういえば、今日の放送でもそんなこと……いや、そんなことを考えている場合ではない。
──大丈夫。まだリカバリーできる。
一瞬ステージ外に落ちたけどまだ壁キックで戻ってこれるぐらいの状態のはず──
「──っ!?」
その瞬間、どうでもいいことにおいて抜群の思考力を有する俺の脳内コンピュータが、一瞬にして自分が置かれた状況をはじき出した。
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参謀ソラの好み
恋愛対象:6歳の幼女
求める雰囲気:初々しさ
求める身体的特徴:瑞々しさとあどけなさ
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6歳の幼女って……まんまあーちゃんじゃん……!
──これはまずい……まずすぎる……これは冗談抜きでシャレになんねえ!!
居候として住まわせてやっている親戚の男子高校生が、自分のとこの愛娘(6歳)に手を出そうとしてるとか……ヤバすぎるって!!
最悪の誤解だ……!
こんな不名誉あるか!? まだ校内でロリコン扱いされた方がましだわ!
「あと、その……」
おばさんが言いにくそうに口を開く。
「な、なんですか!?」
「た、たまたま洗濯の時に気付いたのだけど、その、凛空君の制服のポケットに……」
……ポケットに?
なんか変なもんでも入れてたか?
ポケットといえば──あ。
【回想】
(……二宮、ここは俺に合わせろ!)
(ま、任せた!)
学園の女神様の失態を、何とか俺たちの手でリカバリーしてあげなくては……。
俺が逆の立場だったら、羞恥のあまり今すぐ逃げ出しているだろう。
彼女の強靭なメンタルに報いるためにも!
──この膠着状態を、無理やりにでも打開する必要がある!
一旦落ち着いて、深呼吸をする。
そして俺は──快刀乱麻を断つ如く、この場における鮮やかな解答を叩き出した。
「一旦さあ、これ──なかったことにしよう」
「承知」
とりあえず、避妊具を制服のポケットに突っ込む。
【回想終わり】
………………やっば!!
「ちちちち違うんですよ!? 聞いてください! それ僕のじゃなくてっ! え、えと、あの、その、に、二宮の対妹用避妊具、みたいな、じゃなくて! えっと、その、あの!」
「僕としては、そういうのは見えないところでやってほしいというか……」
「うちの茜の教育上、ちょっと……」
「ち、違いますって! やめてくださいよその目!? さすがに居候の身で女の子連れ込みませんよ!?」
何か数時間前とは逆の状況になってる気がするなおい!?
今なら柊木と分かり合えそうだ!
つーか、いち早くおじさんとおばさんの誤解を解かねーと──この家から追い出されるぞこれ!?
何かこの状況を打開する方法は──
「おかーさん、おとーさん、なにはなしてるの?」




