前回の後書きを踏まえると我々は、ハーレムと書いて上条さんと読み、ロリコンと書いて一方通行と読む必要がある。
──めのまえがまっくらになった5分後。
『そんな……!』
『俺たちの先生が……!』
『山市の彼女って嘘だろっ!?』
「いや、私の話を最後まで聞いてほしいのだが……」
「……話す順番って知ってます?」
おかげでこっちは全身血だらけで死にかけてるんですが?
身体の節々が悲鳴を上げている。
「……つーかお前らなあ、先生ってそんなにいいか?」
『何言ってんだ!? ちょっとアレだけど先生、めっちゃキレ―じゃんか!』
『そうだぞ、ちょっとアレなだけで!』
『まあ、確かにアレだけども!』
「アレとはなんだ!? 言ってみろ!」
やはりクラスメイトの皆も、俺と概ね同じ評価のようだ。
──外見は文句ない。
この一言に全てが集約されている。
『ていうか、先生って生真面目な教師に見えて……意外に生徒に手を出すタイプだったのか!』
『うわ、えっろ……!』
『真面目ぶってすぐに手を出す清楚系ビッチ女教師とかまじでたまんね──』
──バキィィイイッ!! (大切な何かが弾ける音)
確かに先生はすぐに手が出るようだ。
彼らも手を出されて本望に違いない。
『それにしても山市!』
『お前の彼女って先生かよ!?』
『担任の美人教師が彼女とか主人公気取りか!』
「んなわけねーだろうが……!」
「そうだ山市、頼むから誤解を解いてくれ……」
困ったように先生が嘆く。
……しょうがねーな。
もう場も荒れてきてるし、ここらで謎の誤解を解いて事態を収拾しとくか!
「いいか、よく聞け! お前らの疑いは根本的に間違っている!」
『『『……』』』
クラスメイトの視線が集中する。
「確かに先生はデキるオトナっぽくて思春期の男子高校生にドストライク!」
「お、おお……」
「さらに、美人で巨乳で背も高くてかっこいいし完璧だ」
「面と向かってそう言われると……照れるというか……」
「だが外見に騙されんな──性格はどうだ? 内面はどうだ? 年齢はどうだ? 腹筋はどうだ?」
「そう褒められると──え?」
「熱に浮かされるな! 見てくれに騙されずに先生の内面を見ろ! 今までの振る舞いを思い出せ! 己の身体に刻まれた傷痕に問いかけて──冷静になれっ!!」
『『『──っ!』』』
……。(先生を見つめる時間)
…………。(先生の振る舞いを思い出す時間)
………………。(冷静になる時間)
満身創痍である俺の熱い演説に彼らは心打たれたのか、まるで憑き物が落ちたような穏やかな表情を浮かべる一同。
「お前ら──分かってくれたかっ!?」
『ああ……疑って悪かった』
『相手が先生だなんて……』
『なんか……ありえねーこと聞いちまったな』
『俺たち……どうかしてたよ』
おかえり。
──バキィィイイッ!!
さよなら。
◇
──とあるクラスメイトの会話。
『あ、やべっ……!』
『どうした?』
『さっき、山市を処刑する時に一斉に飛び掛かってもみくちゃになっただろ?』
『ああ、まあ濡れ衣だったみたいだが山市なら別にいいだろ?』
『それはそうなんだが、もみくちゃになった際に奴のカッターシャツの胸ポケットに──男性用避妊具を仕掛けておいたことを思い出した』
『……いやそれどういう嫌がらせ?』
『仮に、奴が気付かずに家の洗濯かごに入れたらどうなると思う?』
『そりゃあ、まあおそらく母親あたりが洗濯物を干すときに気付くだろ?』
『何とも言えない気まずい家庭内の空気の出来上がりだ』
『なんて陰湿な嫌がらせなんだ……!』
『誤解だと分かったなら、あの場で謝って回収しとけばよかったんだが……すっかり忘れていた』
『ま、後で連絡しとけばいいだろ』




