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年齢がダブルスコアのヒロインはいかが?


 放送を終えて放課後。


 夏休みの始まりに誰もが浮足立って、教室や廊下が騒がしくなる中、俺は生徒指導室に呼び出されていた──


「この度は本当にすみませんでした」

「お、おい……」


 現在、俺は自分の頭を床にこすりつけている──いわゆる土下座というものだ。

 謝罪相手はもちろん二宮愛海先生。


 ──古来より、謝罪の相場はこれと決まっている。

 とりあえずこうしとけば、後は相手が勝手に許してくれるらしい。ソースは母親。泣ける。


「土下座なんて学生がするものじゃないぞ? 顔を上げろ」


 頭を付けているので、二宮先生がどんな顔をしているかは分からないが、声音から察するに怒ってはいないようだ。


「ですが!」

「落ち着け。昼の話は冗談に決まっているだろう?」


 ──よ、よかったあ……!!


 危うく、ハートがフルで凍りついて低温やけどを感じるような、心温まるあつあつハートフル青春ラブコメをお送りするとこだった。


 もう人生が終わったかもしれないという不安で、午後の授業は全く頭に入ってこなかった。

 二宮が亡骸だとか何とか言っていたが、ろくに反応する元気がなかった。


 なぜなら今日の先生は本当に様子がおかしかったからだ。

 ……本当に婚約させられたかと思った。


「……安心しました」


 土下座を止めて、用意されている椅子に掛けて、テーブルを挟んで先生と向かい合う。

 先生の表情もどことなく柔らかい。本当に怒っていないようだ。


「まったく……少しばかりお前は怯えすぎだ。私だってお前のプロポーズが罰ゲームの類であることは分かっていたさ」

「そうだったんですか!?」


 なんということだ。

 じゃあそこまで慌てることはなかったのか……。


 よく考えれば公然の場で生徒が先生に告白、それもプロポーズなんて、明らかに正気の沙汰ではない。

 本気でやるなら、まず人前でやっちゃ駄目だ。というかそもそも本気は駄目なんだが。


「ということは。流石先生です。あの発言諸々は場を盛り上げるためのパフォーマンスということですもんね!」

「お前が変に誤魔化さずに素直に謝っていたら私も笑って許したが、お前があまりに見苦しい言い訳を並べたからな」

「す、すみません。ちょっと気が動転していて……つまり、昼のことは冗談ということですね?」

「そう気にするな」


 先生が呆れるように笑いながらこちらを見る──というより睨まれるという方が適切だ。

 本当にこの先生は目力が強い。睨まれると、本当に気がすくむというかなんというか……生徒をしかりつけることにおいては、この上ない素養だと思う。だから男の人も遠ざかって──


「──なんだ? 私の顔を見て」


 先生がこちらに顔を乗り出すように俺の顔を覗き込む。


「な、なんもないっす!」


 おまけに、よくない意味で察しが良いと来ている。本当に怖い。

 反射的にのけぞってしまうほどだ。


「素直に謝るのが大事なんですよね! 素直!」


 これからは、二宮先生に対しては素直に謝った方が得策かもしれない。

 下手に誤魔化そうとすると、とんでもないしっぺ返しをくらうという教訓を得た。


 これからしばらく、先生相手には一切の嘘なく接してみるか。


「そこまで露骨にのけぞるなよ……そんなに私が嫌か?」

「はい」

「素直すぎる……」

「これから先生の前では素直を意識しますから、もう殴らないでくださいね?」

「おい。私をそんな体罰上等の先生扱いするなよ」


 心外だと言わんばかりに先生が反論する。


「ええっ!? 僕らのことめちゃ殴ってますよ!?」


 理数科一同、大体の奴は先生の鉄拳制裁をもらっている。

 ……一部紳士は自ら愛の鞭を頂戴するような立ち回りをしている節はあるが。


「私も心境の変化があったからな、喜べ──」


 先生は顔の前で手を組みながら、優しく笑い──


「──これから私は弟とお前以外を殴らない」

「どう喜べと!? それで喜ぶのは理数科の奴らだけですよ!?」

「今の時代、愛の鞭は問題になるからな」

「どうして僕相手は問題にならないんですか!?」

「身内は問題にならないからな」


 ……。


「……先生、昼のことは冗談なんですよね? 確認なんですけど、僕身内じゃないですよね?」

「おいおい、比喩表現に決まっているだろう?」


 ……先ほどから、俺の質問が妙にはぐらかされていると感じるのは気のせいか?


 ──本当に冗談だよな?


 ……あまり考えすぎても答えは出ない。気のせいだと信じよう。


「そういえば、一体昨日、先生に何があったんですか? 二宮曰く、同窓会がどうとか言ってましたけど」

「ああ、それか……」


 途端に、先生の表情から光が抜け落ちていく。


 今までは勝手ながら先生に対して、スマートに何でもこなす大人の女性という認識があった。

 その認識が間違っていたとは思えないが、今朝の先生は明らかにそのイメージから著しく逸脱した振る舞いをしていた。


 ここらでその原因究明と行こうじゃないか!

 いくらなんでもストーリーが進まなすぎって怒られてるしな!


「長い話になるが……構わないか?」

「あ、じゃあ別に大丈夫です」


 コメディってテンポが大事なんですよね。


 それに──この話を聞いたらもう後戻りできなくなるんじゃないか、という俺の脳内超高性能フラグセンサーのけたたましい警報音が聞こえた。


 しかも俺は先ほどから、素直キャンペーン実施中。無理して話を聞くのはそれに反する。

 やはりここは素直に長年の勘に従って、離脱を──


「先生──なぜか生徒指導室の扉が開かないんですが」

「この生徒指導室は過去に生徒が逃走を試みて脱走を許したことから、内側からも鍵を閉めることができるようになっており、鍵がないと出られない仕組みとなっている」


 扉の前に立ち尽くす俺に、背後から先生が子供に言い聞かせるような丁寧で優しい解説が聞こえてくる。


「先生──なんで前もって鍵を閉めていたか、聞いていいですか?」


 先生の方を振り返らずに、扉に向かったまま問う。


「今の状況が答えだと思うが?」

「……ちなみにその鍵は、今どちらに?」

「そうだな……」


 シュルシュル、と衣擦れの音が背後から聞こえ──


「──たった今、私の胸ポケットに入ったところだ」


 ……男の俺が手を出せないところに入れやがった!!


 どんだけ俺に話聞いてほしいんだよ!?


「鍵を閉めていたのは、お前が反省せずに逃げ出すと思っていたからだ。まあ落ち着いて席に座ったらどうだ?」

「……」


 無言で席に着く。


「それで、その話なんだが──」

「待ってください。僕はまだ聞くと言っていませんが」

「お前から聞いてきたんじゃないか。私のことが知りたいんだろう?」


 さも当然という表情をする先生。


「……先生、一応確認なんですけど、本当の本当に今日の昼の件は冗談なんですよね? 水に流したんですよね?」

「そう何度も確認するな。しつこいぞ?」

「……」


 それっぽいことを言って、一度もちゃんと冗談だと言われていないんだが……。


「そういえば、二宮から預かった音源はどうなってます?」

「……何の話だ?」


 わずかに目をそらす先生。


「え? 放送の音源のことですよ? あれもう削除して──」

「それで、話の続きなんだが」

「えっ!? ちょっと待ってくださいよ!? あの一件は水に流したんですよね!? ねえ!」

「山市──冷静に考えてほしい」

「へ?」


 ちょっと目を逸らして間を置いた先生は、しばらくして、いつになく真剣な眼差しで俺の目を見つめ──


「──人から告白されるのって……嬉しくないか?」

「顔赤らめて何言ってんすか!?」

「それに、お前のプロポーズも堂に入ったもので、意外に悪くは……」

「目を覚ましてください! キャラがめちゃブレてますよ!?」


 先生……いくらこの作品にヒロインがいないからって、気を使わなくていいんですよ?



『後日談が遅れて申し訳ない』


「しかも全然1話に収まってねーんだけど? これまだ続きあるんだよな?』


『想像の数倍以上、感想を返すのに時間がかかってしまった。あと、書き始めると全然思い通りに話が進まないのは……そういう仕様だと思ってる』


「どういう仕様だと思ってる?」


『それにしても……久々の後書きだな』


「だな」


『何というか……』


「……言いたいこと分かるぞ」


『やはりお前もそうか……』


「……だよな」


『何とかここまでやって来たが……』


「……ああ」


「『後書きって特に話すことないよなあ……』」


『改めて久々にやると、オレたちは今まで何をはしゃいでいたのかと、不思議な気持ちになるな』


「急に冷静になるやつな。まあこれが本来在るべき姿なんだけどな。やっぱ今までやりすぎたって」


『というわけで、初心を思い出すために……』


「『感想のコーナー!』」


『実は、第3回放送終了後も、感想にCN付き柊木生メッセージが送られてきている』


「あれは驚いたよなあ……でも使いどころがねーんだよな」


『中には感想コーナー宛なのか、放送宛なのかイマイチ判断がつかないものもあるので、全部まとめて消化してしまおうという魂胆だ』


「なるほど」


『というわけで、CN:“Mr.X”』


「たしか、割と初期に感想をくれた正真正銘のJKだったか? 本当に感謝っつーか」


『気になる内容は、

【いやー闇落ち参謀ウマウマっすわwww

その容赦の無さにずっと会場の壁に寄っかかってニヤニヤしてましたwwwもう魔王じゃね?ウケるwwwww


え?代表?あれはただのロリコンでしょ?】』


「こいつむかつくなおい! 最悪なJKじゃねーか!」


『感謝どこに行ったんだ? ちなみに他の感想を見ても闇堕ちソラはなぜか一定数の人気があったぞ』


「まじかよ……」


『続いてCN :“シノシノ”。ちなみにこの妹はコーヒーやお酒を吹き出してくれた妹だな』


「感想欄読んでないと分かんねーこと話すなよ……一体この作品はどこまでが本編なんだ」


『【こんな面白いおもち…ゃ…玩…を終わらせるなんてもったいない。

なけなしのポイントです

ソラの暴走は面白いし、もっと風評被害で先輩たちをゆすれ】


「人の不幸を喜びやがって……!」


『他にも、【姉さん女房もあるからガンバ!】【理数系として闇討ちいいですか?】などのメッセージが届いている。妹よ、感謝だぞ!』


「まあ感想はありがてーけどな?」


『そして届いた感想の中に、更新再開まで本編以外でもいいから何らかの形で更新してほしいというものがあったんだが』


「確かに更新再開まで間が空きすぎると、内容を忘れるしリスナーの興味も薄れるしな」


『というわけで、これからは毎週日曜に更新していこうと思う』


「おーなるほど」


『次回の更新は今回の続きなので普通の更新だが、最新話とは脈絡のない何らかの閑話を挟みたくなるかもしれないので、その時はizumiの活動報告スペースでも使わせてもらうとしよう』


「ついにizumiの生息地がなくなったな」


『あくまで、最低限日曜に更新するという話なので、別に日曜以外でも更新する可能性はある』


「というわけで、リスナーの皆、よろしくな!」


『ブクマでもいいねでも感想でも、何でも待ってるぞ!』


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文系だけど、ソラ以外全員やばいやつしかいない 密室殺人事件起こしたい。 (注・ターゲット(色々な意味で)はソラです)
[一言] 参謀、もう逃げれないですね~(笑) でも、婚活する必要はなくなりましたね(遠目)
[気になる点] 今度、ソラに先生にバブみを感じておぎゃってほしいなぁとアタクシは思うんですよぉ [一言] ふむ、やはりヒロインは二mおや、誰か来たようだ。
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