第3回放送part3
「そーいや、純粋な募金の方は今どんだけ集まってんの?」
『今確認してみるぞ』
【楽しみ!】
【wkwk】
【目指せ5万以上!】
「5万以上集まったら存続で、前期までの活動が認められるわけだから、9月も放送やんのか……? 正直やだわ。もう放送してもこいつら悪ノリして俺に汚名着せてくるし……」
『募金総額はざっと──20000ポイントだな』
「2万か……じゃあ足しても10万いかねーな。じゃあこれが最終回ってわけで──」
『──ああ、すまん。桁一つ間違えていた』
「は?」
『20000ポイントじゃなくて200000ポイントだ』
「……へ?」
『──1学期どころか、今年度いっぱいまで活動できる資金が集まった』
「──はあ!? 待て待てまじか!? 20万!? めちゃめちゃ大金だぞおい!?」
【俺たちのポイントで、ソラがひどい目に遭うなら安いもんだぜ……】
【ここから私たちが卒業するまで、永遠に叫んでてほしい】
【あの公約見たら、有り金全額突っ込むしかないよね!】
「……公約? おい待て! そんなの聞いてない!」
『そんなの言ってない』
「理由になってない!?」
『実は、募金アカウントでは公約を掲げていた。100000ポイント集まった場合──一番多く募金してくれた人の願いを絶対に叶えると』
「おい!?」
『募金にはコメントが付けられるようになっているからな……というわけで惜しくもトップを逃した願いを確認していこう』
「まじかよおい!? 大丈夫かそれ!?」
『安心しろ。さすがに法に触れたり、危険な目に遭ったりするような願いは前もって断ってある。リスナーの妹たちを信頼したらどうだ?』
「一番信頼できねーんだよなあ……」
【そんな慌てなくていいって】
【流石に常識の範囲内で書いたから安心して】
「そ、そうなのか……」
『第5位──“柊木学園中等部に半裸で突入する”』
「誰かこいつらに常識を教えてやれ……!」
『落ち着け。全裸じゃない──半裸だ』
「それで落ち着けたら終わりだ!」
『しかも中等部だからな』
「……明らかに俺をロリコン認定しよーとしてんじゃねーか!? つーか願いっていうよりただの罰ゲームじゃねーか!?」
『おい落ち着け。肝心なことを聞いてないだろ?』
「……肝心なこと?」
『要望は代表か参謀のどちらかを指定することもできる』
「おおなるほど! ……確かに俺がやるなんて一言も言ってなかったな。早とちりして申し訳ない」
『ああ。オレもやる可能性もある』
「それなら全然いいわ。お前の方が絶対人気あるんだから、お前の女ファンが大量に金をつぎ込んでるはずだ。こういうのは男より女の方がお金を消費する傾向があるからな」
『ぐっ……なかなか痛い分析だな』
「罰ゲームなんだから、絶対実行しろよな? なしっつーのはなしだぞ? 一番面白くねーからな」
『……いいだろう』
「よし。……なるほど、じゃあこの明らかにロリコン方面の命令は──」
『参謀をご指名だな』
「──なんでだよ!?」
『続いて第4位の願いは──“これから卒業まで毎日、語尾が「~にゃん」になる”』
【あ! 俺の4位かよ……】
「うわきっつ……」
『日常生活に支障が出る系だな』
「これはちなみにどっちだ?」
『参謀をご指名だ』
「なんでだよ!? いくらなんでも人気すぎるだろ俺!? ねえさっき9:1って言ってたの誰!? うっかり信じちゃったよ!?」
『オレが罰ゲームってちょっと面白みに欠けるだろう? ほら、オレは常識人だから』
「その発言がもう非常識だわ!」
『次は第3位──“卒業まで、常に襟を立てた状態で過ごす”』
「誰が?」
『参謀が』
「決め打ちじゃねーか!?」
『続いて、惜しくもトップを逃した第2位が──“代表と参謀は手を繋いで登下校する”』
【えっ!?】
【結託して一つのアカウントからあれだけ貢いだのに……】
「あっぶねえ……っ!!!」
『これが1位じゃなくてよかったぞ……っ!!』
【ああっ! 合法的リク×ソラが……!】
【やっぱりソラ×リクだって言ったじゃん!】
【いや、ソラは絶対受けだって】
【どう見ても総受けの素質しかないでしょ】
【受けすぎて逆に攻めってない?】
【あーその一周回ったパターンね】
「……(ガタガタ)」
『……その手の方面にうぶであろう参謀は、絶対にSNSで“リクソラ”や“陸空”と検索しないことをおすすめする』
「……(こくっ)」
『さて、栄えある第1位、つまり実際に遂行される願いを発表するぞ!』
「おう!」
『まず──指名は参謀』
「知ってた」
『そして、肝心の願いは──むむっ! 妹たちよ! ソラの視線に注目しておいてくれ!』
「え、えっ!? なになに怖い怖い!?」
『参謀よ、今の自分の視線に写っているものを説明してくれ。ちなみに目を塞ぐのは今から禁止だ』
「え? いや……俺は教壇でテーブルとマイクを挟んでお前と向かい合ってる」
『他には?』
「……とりあえず、お前の奥には大講義室の扉が見える。で、左を向けば黒板に映し出されたスクリーン、右を向けばリスナーがいるんだが……」
『どうした? そんなに視線を固定して? ちゃんと説明するならそっちを見た方がいいんじゃないか?』
「いや──これ絶対余計なとこ見たらまずい奴だな!?」
『くっ……参謀がやけに目ざとくて勘が鋭いのが裏目に出たか……』
「……俺を舐めんな。早く願いを言ってみろよ」
『願いは──“今から一番最初に視界に入った女子に対して、真剣に愛の告白を囁いてプロポーズする”だ!』
「おいおい!! それはまじでシャレにならねー奴だろ!? しかもプロポーズって! 俺まだ16──」
《(ガラッ)失礼する。遅れて申し訳ない》
「え?」
『え?』
《え? あ! す、すまない! 収録中のことを失念していた!》
『い、いや、別にいいのだが……』
《もう、今日の私は一体何をやって……》
【あ】
【これって】
【まさか】
「へ? ……いやいやいや待て待て待て待ってくれ!! 頼むから! ねえ待って!!」
【公約は絶対って自分で言ってたよなあ】
【ばっちり視界に入ったね】
「──先生相手は普通にまずいって!! シャレになんないよこれ!!」
《え、え? 何の話だ?》
「ねえ待って!? リスナーは知らないだろうけど、今日の先生相手は絶対やばいんだって! まじで!! 嘘で人の気持ちを弄ぶのはさすがにシャレにならないって!!」
『そう不安がる必要はない』
「……どういうことだ?」
『──嘘じゃなくて、事実にすればいいだけだ』
「より不安になったんだが!?」
『今さら言い逃れは出来んぞ? ほら、行ってこい』
「お、おい、引っ張んな!」
〈先生、なんか山市君が真剣な話があるらしいっす〉
〈今みんなでそれの相談してたんですよ〉
〈驚かずに聞いてやってください〉
「あのクズ共……!」
〈クズにはクズが集まるんだよなあ……!!〉
《な、なんだ?》
「え、えっと……あの……」
《どうした? 何か言いたいことがあるのか?》
「……」
《なんだ? はっきりしろ》
「……先に言っときます」
《?》
「後で必ず責任取るんで──何があっても僕の身体を五体満足で返してくれると誓ってください」
《な、なんだ? さすがの私もそこまですることはないと思うが……》
「──ずっと前から先生のことが好きでした」
《!?》
「将来、俺が先生に見合う男になったら──俺と結婚してください」
《──っ!?》
「──っていうのは冗談で! はいもう終わり! これ公約通りだよな!? 達成してるよなこれ!?」
『う、うむ……』
「はい! じゃあ今日の放送終了! えーリスナーの皆さん、今後の旧部の活動については追々SNS等で発信するんで、はい! 解散!! じゃ、お疲れっしたあ!」
《──おい待て(ガシッ)》
「……(ガタガタガタガタ)」
《冗談でそんなこと言うなって今朝、私言ったよな?》
「え、いやあ、多分、気のせい──」
《──言ったよな?》
「……いやだって! だってこいつらが──」
『オレたちは何も言ってないぞ?』
〈そうですよ〉
〈むしろ、“俺は年上が好みだ”とか山市君言ってましたよ〉
「はあ!? いやいやリスナーも公約聞いてたし──てめーら全員首振ってんじゃねーよ!?」
《お前がどういう状況だったのかはどうでもいい。大事なのは私にプロポーズしたという事実だ──陸、今日の収録の音源、私に預からせてくれ》
『承知』
「ちょっと待ってください! 俺冗談だってちゃんと言いました! 聞こえてましたよね!?」
《陸、編集を頼めるか?》
『承知』
「え!? それ絶対都合の良いところで編集するつもりですよね!? 駄目ですよ先生が冗談でもそんなこと言っちゃ!」
《そうだよな──冗談でも言ってはいけないことがあるよなあ?(ガシィッッ!!)》
「……そ、それは、あれですよ──本気で言ったんですよ! ただ言った直後にやっぱ違うなって思い直しただけで!」
【とんでもなく失礼で草】
「で、でも! 僕が本気じゃなかったって証明はできませんよ!? だからその暴力は不当です!」
【そもそも正当な暴力とは】
『参謀は相変わらず弁が立つな』
《ほう? 態度によっては見逃してやろうと思ったが……》
「……なんですか?」
《考えてみれば……短い付き合いだがお前ほど手がかかる生徒、私の教師人生で初めてだ。だがその分、面倒見がいがあるし、退屈しなさそうでもある》
「……いきなり何の話です?」
《それにお前のことは嫌いじゃない。むしろ気に入っている──これも何かの縁だろう》
「何です!? その不穏な言葉は!?」
《そっちがその気なら私にも考えがあるというわけだ(ガシッ──バキィィッ!)》
「痛い痛いまじで痛い!! っていうか先生! ちゃんと約束守ってくださいよ!」
《約束?》
「そうですよ! 僕の体を五体満足で返すって!」
《……そういえばそうだったな。お前のあの言葉も冗談かと思っていたんでな》
「あそこは嘘偽りない本心ですよ!」
《──言質取ったからな?》
「え?」
『え?』
〈え?〉
【え?】
「……先生、それはどういう意味で……?」
《どういう意味もそのままの意味だぞ?》
「へ? 俺なんか変なこと言ってました? 五体満足で僕の体を返すとかなんとか言っただけですよ……ね?」
《ああ、その通りだが──その前に何か言ってなかったか?》
「その前? たしか……」
《後で“必ず責任を取る”──そう言ったよな?》
「え、まあ言いましたけど。でも別に言葉の綾的な感じで、特に深い意味はないっすよ?」
《今から一般論を話すんだが──》
「はい?」
《男性が女性に対して責任を取るという発言の主な意味合いって──なんだと思う?》
「……」
『……』
《……》
【……】
「……(ダッ!)」
《……(ガシッ!)》
【無言で草】
《日本の法律では、男性は18歳から認められているが……とりあえず山市──お前今、何歳だ?》
「い、いやあ……年齢はちょっと俺……非公開でやらせてもらってて……」
【無理があって草】
《そうか? なら別に誕生日でもいいが》
「……誕生日って、そういうの俺持ってないんすよね……」
【ありえなくて草】
《18歳になるのが楽しみだな》
「……」
《それでは山市、お前は放課後に私のところへ来い》
「……」
《これからの旧放送部──そして二人の話でもゆっくりしようじゃないか?》
「……」
《返事》
「……はい」
《では、私はこれにて失礼する(スタスタ……)》
「……」
『……』
「……」
『オレ──出来るなら義兄じゃなくて義妹がよかったな』
「……」
『これからもよろしくな──兄者よ』
「もう放送なんて二度とやってたまるかぁああああああぁあ!!!!」
◇
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ユーザ名:cube@so cube!!!
文責 代表リク
妹たちよ!
今日の公開限定放送は楽しんでくれただろうか!?
残念ながら妹へのほとばしる愛ゆえに、校内放送として流すことは出来なくなってしまった……。
何があったのかは、so cube!!!の名の下に集結した妹たちとの秘密だぞ!
しかし、惜しくも限定放送を聞き逃した人もいるかもしれない。
よって、何があったのかを差し支えない程度にここに記しておくぞ!
【本日のまとめ】
cube
・Vtuber説を否定
・200000ポイントを集め、廃部危機を克服!
リク
・妹は人生
ソラ
・リスナーの掌の上で踊る
・別にいなくてもいい説浮上
・1対200のリアルファイト
・再び闇に身を堕とす
・OB相手に堂々とゆする
・幼女からクラス担任までカバーするレンジの広さで魅了
・プロポーズを冗談で済ませるユーモアセンスを披露
・巧みな言葉遊びで担任の先生を口説く
・魂の咆哮
P.S.
今日の大講義室で起きたことは本当で他言無用でお願いしたい。
現在ソラは、すっかり亡骸のように変わり果ててしまっている。
最後にはあのように叫んでいたが、今日の放送内容──特に最後の部分が、集まった妹たちだけの秘密にしておけるなら──
きっと参謀は何度でも不屈の闘志で蘇ってくれるはずだ!
再びマイクの前に姿を現し、その声を妹たちに届けてくれるその日まで!
妹たちよ、しばしの別れだ! また会おう!
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最後はizumiに語らせてください……
──ようやく第3回放送が終了しましたっ!
ここまで長かったです……長すぎました!
というか第3回放送も長すぎましたね……15000字以上あります。
普段の1話当たりに換算すると、これが何話分に相当するのか……。
さて、以前から旧部の二人が話してくれていた通り、これにて本作の更新は一旦、休止となります。
再び、二人が皆様の前に戻ってこれるのが、いつになるのか……。
izumi的には、次に戻ってくるときは原作ストックを蓄えた状態で迎えたい所存!
……はっ!
も、もしかして……ちゃんとストックがあれば、第2回放送から第3回放送までスムーズにテンポよく進んでいて──そこそこいい作品になってたのか!?
──って一瞬思ったりもしたんですが、それができてたら苦労はしないですよね!
ろくに文才のないizumiでは到底無理な話です。1学期ラスト3日で始めた時点でもう詰んでた。
それに、第2回放送から第3回放送までのやり取りもizumi的にも気に入っていますし、それがあったからこそ、後書きで二人が色々とできたと思えば。
ちなみに一番好きな後書きは第3回放送直前の回ですね……え? 普通だった? あはは、まさかそんな、あなたさてはPCで読みましたね? よく見てくださいよ……ね?
話が逸れてしまいましたが、実はこの第3回放送後の後日談を後で投稿してから、毎日?してきた更新を休止しようと考えていますが……今はちょっとだけ休もうかな、と思います。
ちなみに今は、今日までに溜まりに溜まった感想の返信に着手しています。全然休めないです。
そっちもそっちで色々と盛り上がっているので大変ですね!
コメディを書いているのに、感想の返信が真面目で嫌われないように必死なizumiです。めちゃくちゃ時間が溶けます。
返信が終わり次第、後日談に取り掛かろうかなと思っています。
最後になりますが、一度は筆を置いた本作が、何とかここまでたどり着けたのは読者の方々のおかげです。
たくさんのブクマや評価、いいねと感想に支えられ、最高に楽しいビッグウェーブでした!
誤字報告をしてくれた読者の方々にも感謝です!
本当に皆様の支えがなければ、間違いなくこの物語は存在しませんでした!
お礼を言わせてください!
本当にありがとう!!
まだまだブクマ・評価・感想・いいねを募集していますので、よろしければ是非!
そのどれもがizumiのモチベーションとなって、きっと研究もはかどる……ことはありませんが、本当に励みになります!
それではまた! どこかで!
 




