第3回放送part2
『ほら、紙のメッセージも来てるんだからな。そっちは参謀が担当なんだから、読んだらどうだ?』
「ちっ! しゃーねーな。えっと……CN:“シノシノ”、【パラシュートないスカイダイビングみたいで、ヤバい】」
『ただのフリーフォールだな』
「【お姉さん、腹筋バキバキって何かスポーツしてる?】」
『……やめてくれ。その件はもう触れないでくれるか』
「ちなみに俺は、紐の無いバンジージャンプの気分だと言っておこう」
『それもフリーフォールだな』
「じゃあ、安全バーの無いジェットコースターと言っておこう」
『……不思議とそれがマシに思えてくるんだが』
「つーか、今日の先生の様子、おかしかったよな。あれ? そーいや、先生ちょっと顔を出すとか言ってなかったっけ?」
『そういえばまだ来ていないな』
「まあいーや。続いてCNは……ないな。たった一言だ」
『ほう?』
「【代表にとって妹とは?】」
『愚問だな。答えは──人生そのものだ!!』
「愚答だな」
『オレは──この世界にいる妹に会うために生まれてきた!!』
「その時妹は一人もいねーんだよなあ……時系列的に」
『?』
「まあいいわ。んで、続いてCN;▼・ω・▼」
『今何と読んだ?』
「メタい発言やめろ。【何か面白いことを聞きたい!と思っても思いつかない】」
『無理してメッセージを送らなくてもいいんだぞ?』
【それめっちゃわかる】
【意外にメッセージって難しいよね】
【激しく同意】
「【己の浅薄さに嫌気がさし、夜も眠れず授業中に寝ています】」
【分かる】
【“それ分かっちゃ駄目だろ”】
【あ、なんかそれソラっぽい言い方】
【それめっちゃ思った】
『……リスナー同士で普通に会話が盛り上がると困るんだが』
「こいつら自由すぎんだろ……次のお便り、CN:“素振りをする素振り”……こいつ絶対最近物語シリーズ読んだな」
『オレはもちろん、大熊猫大好きさんが好きだぞ!』
「……とっさに出てくるお前がすげーわ。誰かは覚えてねーけどお前の好みで誰か分かったわ」
『そう褒めるな』
「褒めてねーよ。……【代表、いいですか? おにーちゃん好きな妹なんて存在しません。あたしの周りの兄がいる友達に聞いても誰一人いません】」
『何を馬鹿なことを』
【ツッコミ不在】
【この人がまともなのに】
【ソラが読むとこうなるんだよね】
【私たちがソラになりきってツッコんであげようよ】
【“馬鹿なのはお前だ”】
【おーそれっぽい】
「【むしろ、近くにいると過干渉すぎてウザイです】」
『ツンデレ属性というやつだな、悪くはない』
【“メンタルが無敵すぎる”】
【ソラのツッコミが脳内再生余裕だわ】
「【妹に幻想なんて抱かないでください。正直キツイです】」
『ぐっ……』
【誰かソラやって】
【“常識人からのぐうの音も出ない正論だな。さすがのお前も──”】
「【妹がいる私が言うんだから、間違いないです】」
【“──いやお前姉じゃねーか!?”】
「『俺たちの役目奪うなよ!!』」
【www】
【息ぴったりで草】
【さすがcubeだわ笑】
【これ送ったの私だから先読み余裕だわw】
「とんでもねーリスナーだぞこいつら!」
『ああ、危うく乗っ取られかねん……!』
【よく考えたら別に参謀要らないんじゃない?】
【あれ? 参謀って誰だっけ?】
【ほら、あの恫喝真正ロリコン変態野郎のことだよ】
「……あーもーやめだやめ! もう旧部は廃部でいいわ!」
『おい!? せっかくここまで来たのになんてことを言うんだ!? 昨日と良い感じのテンションはどこに行った!?』
「だって俺にメリットねーんだよ!! むしろデメリットしかねーわ!! 今日で俺の不名誉が払しょくできると思ったのにさあ! こいつら俺を貶める気しかねーもん!! こいつらの今日のつぶやきも絶対俺のイメージを悪化させるし!!」
【拗ねた参謀、可愛い】
【最終回!?】
【cubeが廃部……?】
『実はここに来てくれた人たちに説明すると……今日でオレたち旧放送部は廃部で、校内放送は終了になる可能性が非常に高い』
【……まじ?】
【嘘だろ?】
【唐突の最終回】
【これから楽しくなっていくのに!】
『1学期のパイロット版を経て、パワーアップしたso cubeを2学期にお届けしたかったんだが……廃部を避けるには100000ポイント必要らしい』
「どーせ無理だって。そもそも後期にも追加でさらに10万必要だし。よく考えたらここで放送終わって夏休み挟めば、もう俺のイメージはこれ以上悪くならねーし、さすがに記憶が薄まるだろーし、もー別にどーでもいいわ」
【やさぐれてるソラ、可愛い】
「……あと誰だよ! 今日ずっと俺のこと可愛い可愛い可愛いって舐めてるやつは!? おいてめーら、全員スマホを床に置け!! 今から怪しい動きした奴、俺のことを馬鹿にしてる犯人としてぶん殴るからな!!」
『おいおい、落ち着けよ参謀。そんなこと言うと──』
【俺が犯人です】
【私が犯人です】
【僕が犯人です】
【バレたか……】
【あたしが犯人です】
【ボクのこと呼んだ?】
【誰一人スマホ置かなくて草】
【全員ソラのこと馬鹿にしてて笑う】
【1対200のリアルファイトの始まりか……】
「このクズ共がぁあああ!」
『……とりあえず参謀は置いておいて、妹たちからの寄付によって旧部が存続する望みもある。というわけで、柊木生アプリで旧放送部への募金アカウントというものがある。そこに少額でも寄付してくれると助かるぞ!』
「もう放送やめよ―ぜ……どーせ無理だって」
『締め切りは今日の放課後までだからな、今すぐ寄付してくれても構わない! よろしく頼むぞ!』
【了解】
【推しに言われちゃ仕方ない】
【僕の秘蔵アカウントが火を噴きますねえ……】
『というわけで、いくら集まるかしばらく待ってみようじゃないか』
「あーやっと放送終わったあ……もう二度と放送なんてやらねーわ」
『正確にはまだ終わってないんだがな。じゃあちょっと、この間を埋めるどうでもいい話でもしてみようじゃないか』
「……例えば?」
『柊木学園に学生寮ができたって知っているだろう』
「初耳だわ。学園の敷地が広すぎてそんなのあっても気付かねーわ」
『おいおい、入学時のパンフレットにも建設中って書いてあっただろう? 今日のホームルームでも言っていたぞ?』
「パンフレットなんて見てねーし、今日のホームルームも寝てたから聞いてねーわ」
『全く参謀とは思えない振る舞いじゃないか……それでもcubeの参謀か?』
「勝手に仕立て上げられたんだからな? あのOB共に……あ! よく見たらあそこに6人全員来てんじゃん」
『どこだ……おお、全員揃っているじゃないか』
「先輩たち、何か一言あります? 一人一言ずつそっから喋ってくださいよ」
〈〈〈……〉〉〉
『なぜか黙っているな』
「つまんねー先輩だなあ」
〈迂闊なことが言えるものか!?〉
〈俺たちが昨日の放送の後、どれだけ大変な目に遭ったか!〉
〈少なくとも名指しで言われなかったから良かったものの……〉
〈クラスに戻れば冷ややかな態度で接するクラスメイト……〉
〈他クラスから変態野郎と罵られ……〉
〈女子から白い目で見られる俺たちの苦悩がお前らには分からないのか──〉
「──分かるわ!!!」
〈〈〈……え?〉〉〉
「てめーらふざけてんのか!? その程度のことなんて全部俺がもうとっくに経験してることなんだわ!! てめーらクズ共のせいでなぁああ!!」
『あ、おそらくスイッチ入ったな』
【参謀、闇堕ちしたwww】
【とてつもない眼光で禍々しい黒いオーラ纏ってて草】
【生の闇堕ち参謀が見れて涙が出そうです。投げ銭はどこにすればいいですか?】
【とりあえず募金しとけば間違いない】
「しかもてめーらは直接名指しされたわけじゃねーだろ……こっちはあんたらに個人特定可能な顔画像付きでネットの大海原に不名誉が拡散されてんだよなあ!? なのによくもまあ悪びれずに言えたもんだよなぁああ!! 先輩様よぉおお!!」
〈お、落ち着け! 話せば分かる!〉
〈勝手にcubeアカウント作ってつぶやいたのは謝るから!!〉
〈アカウントを作ったのは俺じゃない! こいつだ!!〉
〈ち、違う! 発案者はこいつだ!〉
〈おい! 嘘つくなよ!? それならお前だってリストバンドで小遣い稼ぎしようって……〉
〈馬鹿! それは──〉
「──リストバンド? おい二宮、あれお前が作ったんじゃないのか?」
『ん? いやオレじゃないぞ? オレはてっきり参謀が裏で用意してたものだと……』
「……え? おいそれ持ってるやつ──それ誰からもらった?」
【今日の朝、ここで手に入れた】
【cubeスタッフが500ポイントで売ってたよ?】
【それ欲しいと思ってたのに売り切れててショックだった!】
【何それ知らない!】
「おいおいおいおい……まさかこのゴミ共──」
〈〈〈……〉〉〉
『妹たちよ──あの6人の顔に見覚えは?』
【あーあの人からもらった!】
【cubeスタッフじゃないの?】
【でも公式アカウントで販売呼びかけてたよ?】
「『……え?』」
【なぜか投稿が削除されてるけど、朝休みの時に告知してたじゃん】
「……おい二宮、アカウントはお前が運営してんだよな?」
『そうだが、そんな告知してないぞ?』
「……?」
『……?』
【……?】
「そういえばそのアカウント──引き継いで使ってるんだよな?」
『そうだな。おととい、先輩たちが作って──はっ!?』
「こいつら──勝手に俺らのアカウント操作してやがったな!!」
〈俺じゃない!〉
〈ちゃんと俺は止めろって注意したんだぞ!〉
〈こいつその割にはノリノリで売ってたけどな!〉
〈パスワード変わってないからいけるってこいつ計画したんだ!〉
〈違う違う! こいつに命令されたんだよ!〉
〈お前が主犯だろ──〉
「──誰が主犯とか実行犯とか命令犯とか計画犯とか、んなのどうだっていいんだよ──全員等しくぶちのめすに決まってんだからなぁああ!!」
〈〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉〉
「このゴミ共がぁあああ! こっちはてめーらが踏み倒した借金のために色々手を尽くして頑張ってんだぞ!! なのに裏でこそこそあぶく銭稼いでやがって……!!」
『今すぐパスワードを変更しておく』
「あーーもーー完全にキレた!! お前ら6人──速やかに抹殺するわ」
〈ぼ、暴力はよくない!〉
〈お、俺たちは二宮先生からお前たちがポイントに困っていると聞いて!〉
「何言ってんすか? ──覗きをした一ノ瀬先輩に、二股してる二階堂先輩」
〈〈……〉〉
〈お、おい! 名前は止めろ!! 個人の特定できる情報はまじでやばいって!!〉
〈そ、そうだ! 特定されないからこそなんとか誤魔化せるんであって──〉
「あれ、何か言いました? ──好みじゃないけどヤラせてくれそうだから付き合ってる三輪先輩に、球技大会で揺れる巨乳の映像を売り捌いた四宮先輩」
〈〈〈〈……〉〉〉〉
「よかったですねー! この放送で一躍先輩も有名人じゃないですか! ちょっと妬けちゃいますよー!……あれっ? なんか急に静かになったなあ……(チラッ)」
〈〈……〉〉
「ちょっとー。なに黙ってんすかー? ──保健室のベッドでとんでもない一人遊びをした五木せんぱーい」
〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉
「ええっどうしたんですか、六角先輩? そんなに懇願する顔して」
〈……〉
『もう残り一人だから、特定されているんだが』
〈うっ……〉
〈じゃあ、水泳授業中に盗撮してた六角先輩もお仲間に入れてあげますよ! いやー優しいなー俺!〉
〈〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉〉
「さ、抹殺はここからだ」
『ああ』
〈ま、待て!〉
〈もう十分だろ!?〉
「はあ? 何そんな甘っちょろいこと言ってんの? ──次は顔写真付きでネットに拡散するに決まってんだよなぁああ!!」
〈それはまじでやめろ!?〉
〈許してくれ!〉
「さあ! てめーらもこちら側の世界に引きずり込んでやるよ! ようこそこの世の地獄へ! 終わることのない衆人環視の世界へ! 手厚く歓迎するぜ?」
〈ほんとにごめんって!〉
〈人生詰むから!〉
「あれ? なんか勘違いしてんな? もうとっくに人生詰んでるぞ? 覗きも盗撮も犯罪だからな? それに人を騙して商品を売りつけるなんて詐欺もいいところだぞ?」
〈〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉〉
「今ここには先生はいねーけど、これが校内放送で流れたら……」
〈〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉〉
「おいおいどーしたあ! そんなに青ざめて! さすがに先生たちがただ見過ごすわけねーよなぁああ!?」
『さすがに何かしらの処罰が下るかもしれん』
「もしかしたら停学どころか退学もあり得るかもしれねーよなあ!? そいつは笑えるなおい! ……おいおいそんな泣きそうな面してんじゃねーよ!!」
〈〈〈〈〈〈……〉〉〉〉〉〉
『──参謀、演技はここまでにしておこう』
「──しゃーねーな。先輩たちが顔面蒼白でやばそうだし」
〈……え?〉
〈……演技?〉
「さすがの俺もそこまでやらないっすよ」
『参謀の迫真の演技に妹たちも騙されていたぞ? 途中からスクリーンに一文字も浮かばなかった』
【演技だったのね……】
【まじで怖かった】
〈ったく驚かせるなよ……〉
〈……アカウント操作の件は悪かった〉
〈ああ、二宮先生に話を聞いて3年で考えたんだよ〉
〈最初は本当にお前たちのために始めたんだ〉
〈昨日、100個作るの色々と大変だったよな〉
〈お前たちを驚かせようと、黙っていたんだよ……〉
「まじっすか」
『1個当たり500ポイントで、100個売れたということは──』
「経費はともかく、純粋に50000ポイント集まったってわけか」
『存続に向けて一歩前進だな!』
「じゃあ先輩たち──この放送音源、5万で売りますよ」
『え?』
【え?】
〈〈〈〈〈〈え?〉〉〉〉〉〉
「え? いやだって、先輩らこれ放送されたらまずいっすよね?」
〈いや、そうだけど〉
〈今、なんかいい感じにまとまってて……〉
「いやいや、ふつーに覗きや盗撮行為、先生の耳に入ったらただじゃ済まないと思いますよ? 前回は匿名でしたけど今回名指しですからね。推薦で進学とかはまず無理でしょ」
〈え、見逃してくれるんじゃ……?〉
「いやいや、だから5万で見逃すって言ってるじゃないですか?」
〈いや、そういうことじゃなくて……〉
〈そもそも、材料費とか製作費が別にかかってて……〉
「それ以上言うならこっちは別に値上げしてもいいんですよ? まあ買えなかったらこれが流れるだけですけど」
〈か、買います!〉
〈むしろ買わせてください!!〉
〈今すぐ振り込ませていただきますから!〉
「よし、おっけおっけ。これで穏便に5万手に入ったな。じゃ、リスナーは絶対今日のことは口外しないように。……いやよく考えたら俺、放送続けたくねーし徴収する必要なかったよな別に……ってどした? みんな急に黙って」
『い、いや……』
【容赦ねえ……】
【鬼畜すぎる……】
【先輩をゆするとか……】
【……もう誰もソラに弁論で勝てないだろ】
【闇堕ちソラ、可愛い。また見せて】
「さて、もうそろそろ放送を終わろーぜ?……いや、そもそも放送じゃねーのか」
『そうだな。もうこの音源は校内放送では流れないからな』
「そーいや、純粋な募金の方は今どんだけ集まってんの?」
『今確認してみるぞ』
 




