第3回放送part1
「なんか……すげー人来てんなおい……」
『う、うむ……』
「と、とりあえず……始めとく……?」
『そ、そうだな……』
【cubeって本当に実在したのね……!】
【噂だと思ってた……】
【リク様超イケメンすぎてやばい!!!!】
【なんか二人とも緊張してない?】
【らしくないぞ~】
「らしくねーって文字がスクリーンに表示されてるが……」
『実際のリスナーの反応が見える状況で喋るとは……やりづらいな』
「そもそもお前がイカレてるだけで、俺は普通に小心者なんだよ……」
『そうだったのか?』
【えー】
【いや、きっと緊張してるふりだと予想】
「いや、だって、ここは絶対ちゃんとした放送にしなきゃなんないし……」
【cubeのちゃんとした放送とは】
【ちゃんとしてたことなんてないから大丈夫だよ?】
『だ、そうだが?』
「ま、まあ……いやでも、前回はOB相手にちょっとやりすぎたから、今回は大人しめにいった方がいいんじゃないかって割と迷って──」
【参謀は策士だからな。きっと盛り上げるために緊張した振りをしてるんだよ】
【放送で6歳の幼女が好みなんてほざく真正ロリコンがこの程度で緊張するわけない】
【納得だわw】
【真正ロリコンwww】
「──おい誰だ今の言葉送信した奴!! 名乗り出ろやおい!! 匿名性を盾にしやがって!!」
【短い葛藤だったな】
【参謀が怒った】
【小心者どこいった笑】
【一瞬でいつもの感じになったな】
【慌ててる参謀、可愛い。もっと虐めたくなる】
「……なあ二宮、このスクリーンにリスナーのコメント映し出すのやめね!? くっそむかつくんだが!」
『まあ落ち着けよ参謀。せっかくだからとりあえず今回はこれでやってみようじゃないか。あと、二宮じゃなくて代表のリクだぞ?』
「くそ……つーかお前らな! 一応言っとくけど、ロリコンなのはこいつだからな!? 見ろよこいつの格好! カッターの下に幼女がプリントされたTシャツ着込んでんだぜ!?」
【ソラ、見苦しい真似はよせ】
【自分の業を人に押し付けるなんて……】
【俺たちはソラの性癖を馬鹿にしない。だから自分に正直にならないか?】
【それも参謀の作戦でしょ?】
「待て待てよーし分かった! もうつぶやくな! てめーらニヤニヤしながら手元のスマホいじりやがって! その悪ノリが放送を聞いていない多くの柊木生の俺に対するイメージがとんでもないものにしてんだよ!」
【私たちが必死にイケメンじゃないソラを押し上げてるのに……】
【そんな言い草はないんじゃないか?】
「てめーらが押し下げてんだよ俺のことを! あとイケメンじゃないは余計なお世話だわ!」
【どっちがリクでどっちがソラ?】
【イケメンじゃない方がソラってソラが言ってた】
【ウケるwww】
「……代表。このスクリーンに映し出される言葉にいちいち反応してたらキリがないことが、たった今判明した」
『参謀よ、やっと気づいたか。オレはもう黙っていたぞ』
「校内放送版はこの部分カットしといてくれ。これ以降、スクリーンを俺は一切見ないし反応もしない」
【えーひどい】
【職権乱用だー】
『じゃあ、そろそろ記念すべき第三回放送公開収録のタイトルコールと行こうじゃないか!』
「はいso cube。で、本題だが」
『だからオレにタイトルコールやらせてくれと言っているだろう!? なんだその覇気のないタイトルコールは!?』
「こんな完全アウェーでやる気なんて出ねーわ。はい、番組紹介任せた」
『しょうがないな……この番組は、柊木学園に散らばる妹たちへのレクイエムを奏でる放送だ』
「放送終わったらレクイエムの意味調べとけ。ホラー番組始まっちゃったから」
『?』
【妹ちゃん、全員死んでる件について】
【so cubeって追悼番組だったんだ】
「年下のリスナーなんていねーだろ?」
『何を言う。この学園には中等部もあるだろう』
「そこに向けて放送してたのかよ。まあ敷地が同じだけだから、放送が届いているわけねーけど」
【この放送聞いたら、進学したくなりそう】
【親は絶対止めそう】
「つーか、早めにこの放送のせいで広まった誤解を訂正させてもらうけどな。そもそも、俺はお前みたいなロリコンじゃなくて、どっちかっつーと年上の方が好きなんだよ」
【10歳年下なだけではなくて、年上もいけるのか】
【ソラのストライクゾーンが広すぎるな。さすが悪球打ち】
【リクが狭すぎる分、バランスとっているんじゃない?】
「どんなバランス感覚だよ。あと、悪球打ちとかいう絶妙な二つ名やめろ」
『おい! 妹を悪球呼ばわりするな! ストライクド真ん中だろう!?』
「永遠にボール球だわ! つーかそんな球打つなよ!?」
『見送るというのか!? 絶好球だぞ?』
「たりめーだろ! もうさっきからお前と会話のキャッチボールが全然できてねーんだが!?」
『ちゃんと続いているじゃないか』
「ああ、会話のドッチボールがな」
【むしろデッドボールでは】
【代表のストレートはナックルだからしょうがない】
「はあ……てめーらが思ってる5倍、こいつの相手って疲れるんだからな?」
『ああ、いつも会話が弾んでしまうからな』
「な?」
【永遠に続くドッチボールで草】
【ソラがかわいそうに見えないのがいいよね】
『それはさておき、so cubeも今回で早くも三回目となるわけだが、反響は凄まじいな……。今日の告知も妹たちにたくさん拡散してもらった。妹たちよ、恩に着るぞ!』
「この大講義室にいるのはほぼ3年だから年上だけどな……にしても改めてみても、相当な人数入ってるな」
『放送で聞いている人向けに説明すると、オレたちは大講義室の教壇の部分で向かい合って放送しているんだが……妹の数がすごいな』
「大家族に聞こえるからちゃんとリスナーって言おうな? ……にしても余裕で100人は越えてるな。200人くらいいるんじゃね? 椅子がなくて立ってる生徒もいるし」
『次はもっと大きい箱を借りるとしよう。まさかこれほど入るとは思わなかった』
【so cubeの人気は凄い!】
【リク:ソラ7:3ぐらいかな?】
【8:2じゃない?】
【少なくとも9:1は堅いと思う】
「……しかもなんか腕にライブのグッズでよくある、細いシリコンのリストバンドみたいなのつけてる奴多いし。そんなん誰が作ったんだよ……ちなみにそれなんて文字入ってんの?」
【so cube!!! 第3回放送~三度目の妹~】
「お前かよ」
『どういう意味だ? ……では、オープニングトークで会場も温まってきたし、届いたメッセージを読み上げていくぞ!』
「俺はめちゃめちゃ冷めてるけどな」
『では、CN:“どっちかっていうと参謀の妹になりたい”から』
「実質1択だからな」
『【先輩から噂のso cube!!!放送1回目について聞いてみて、放送2回目聞いたのですが…これはwwひどいwwww】』
「いやほんとにそうだよな」
『【リクさんのボケとソラさんのツッコミが合ってて最高です】……オレ、ボケてたか?』
「もうボケてるぞ」
『【おかげでこの学校はみんな頭おかしいことが分かりましたヤッタネ】』
「自分もその一員なんだよなあ……」
『続いてCN:“劇的!ビフォーアフター!……と思いきや、辟易!微妙あたふた!”』
「嫌いじゃないそのセンス。あれ好きだったわ」
『【代表、参謀、きゅーぶ!】』
「きゅーぶ! ……なんかノリで返してみたけどこれ何?」
『【さすが参謀! ノリがいいのは良いことですよね!】』
「さらっと予知すんのやめて?」
『……以上だ』
「終わりかよ!?」
『平然と会話を繋げてくる、とんでもない芸当をこなす妹リスナーだったな』
「会話になってた?」
『続いて。CN:“人気のない人気スポット”』
「矛盾が凄い」
『【リク代表、ソラ参謀の二人の勇名がついに保護者の間でもちょっとした話題になっています。どうやらママ友界隈でcube公式アカウントが共有されているみたいですね】』
「保護者の反応が怖すぎんだが」
『【どうやら私の母は気がかりなようで、昨晩、母に質問されました】』
「まじか」
『【母は言いにくそうに私にこう尋ねました】』
「まああのアカウントの発言を見ていると、ちょっと言いにくいか」
『【“この子たちって──実在するの?”と】』
「人間にする質問じゃない」
『【私はこう答えました。“お母様、安心なさって──”】』
「誤解を解かないと」
『【“──彼らはVTuberだから実体はないの”】』
「なんて頭のおかしい娘なんだ……さぞ母親も苦労を──」
『【“そう、ならよかったわ”】』
「遺伝かよ」
『【そして母は、“アーカイブは残ってないのかしら?”と、残念そうに去っていきました】』
「言いにくそうにしていた意味を誤解していた件について」
『心配どころかむしろ放送を聞きたかったんだろうな』
「とんでもない母娘じゃねーか。是非とも今日は来ていないことを祈ろーぜ」
【cubeって本当に実在したのね……!】
「来てたわ! つーかどっかで見たわこのつぶやき!」
『本当に疑っていたようだな……続いて、CN:“心中の心中”』
「このCNの付け方流行ってんの?」
『【リク代表、闇堕ちロリコン、きゅーぶ!】』
「……」
『【もー、ちょっと参謀、無視しないでくださいよー!】』
「……」
【読まれてて草】
【リスナーの掌の上で草】
【あ、ソラの顔が赤くなった。可愛い】
『【今回は3回目の放送ですが、何かお二人に反響などありましたか?】……オレはSNSで反響を体感したが、参謀は携帯持っていないよな? 身近な反響を感じたエピソードはあるか?』
【ソラ、携帯持ってないんだ】
【珍しいな】
【SNSを見てないから、メンタルを保ててるんだろうな】
【今の界隈、なかなかにひどいからなw】
「一体、何がつぶやかれてんだよ……」
『それで、放送の反響はあったか?』
「お前な……恋愛対象が6歳の幼女とか拡散されて、まともな反響があると思うか?」
『確かにな──ちょっとインパクトに欠けたか』
「常識に欠けてんだよ……例えば今朝、一番早い時間のバスで通学したんだが、俺の隣に柊木の女子生徒が座ってきた」
『ほう?』
「その人は俺に気付くな否や、「あたし童顔だけど、と、とと年上! 年上だから! 年上!」と、謎の弁明を残して速攻で去っていった」
【襲われると思ったのね】
【正しい判断だ】
【ロリコンの撃退方法ってこれか……】
【参謀は見境ないからなあ】
『それは……つらい経験だったな……』
「代表……この境遇を理解してくれているのは、やっぱお前だけだ……」
『ああ──年下に見える年上ほど、裏切られた気分になるよな』
「俺は今、お前に裏切られた気分だ」
『?』
「お前は良いよなあ。今日なんて入ってきたらキャーキャー言われてさあ……つーかなんでこんなヤバい奴が人気あんだよ!?」
【代表は参謀の暴走に優しさで付き合ってあげてるだけだからな】
【リク君、イケメンだし】
【二人で並んで鏡見てきたら理由は分かるぞ】
「てめーらニヤニヤと……!」
『参謀よ、お前も登校中にキャーキャー言われていたと聞いたぞ』
「お前のとは意味合いが違うんだよ!!」
『ん? 難しい話はよく分からないが、参謀には妹たちを笑顔にする才能があるとオレは信じている!』
「それは笑わせてんじゃねえ!! 笑われてんだよ!!」
【名言出たw】
【なんかソラが叫んでる声聞くと、落ち着くよな……】
【分かる】
【もうどうせならずっと叫んでてほしい】
【わめくソラ、可愛い】
「こいつら……っ!」
『ほら、紙のメッセージも来てるんだからな。そっちは参謀が担当なんだから、読んだらどうだ?』




