高校デビュー♂→♀
今日から高校生だ。だが、問題は一つある。
とりあえず幼なじみに報告だ。
家を出て、隣の家の前に行くと、いつも通りの仏頂面が真新しい高校の制服を着て待っていた。こいつの名前は大橋 義雄。
「よぉ!!待たせたな!!」
「誰だお前?」
首を傾げる義雄。この親友の顔を忘れるとは何事だ。顔だけは面影がある筈だ。
「俺だよ俺。昨日もゲーセンで遊んだろ。」
「遊んだろって・・・昨日遊んだのは隣の家に住んでる目付きの悪くて、頭の悪い乱暴な男だぞ。」
「散々だな!!俺の評価!!」
「ん?まるでお前が真光寺 九十九みたいな言い方だな。」
「そうだよ。俺が真光寺 九十九だよ。」
「いや、しかしだな。俺の知ってる九十九は男なんだが。お前は女学生の制服を着てるし、オッパイも大きい。つまりお前は女だ。」
「分かってるよ!!」
そう、そこが問題だ。よりにもよって今日という日に女になってしまった。高校生初日の日にだ。
いや、俺だって覚悟はしていた。だからセーラー服も用意していたし、女物の下着も買ってもらっていた。しかし、高校初日はあんまりだ。
「言っている意味が分からんな。男が女になるものか。」
「おいおい、前に説明しただろ?真光寺家は15歳から16歳の間に性別が逆転するって。ちゃんと話聞いてなかったのかよ。」
「えっ?あれって本当の話だったのか?話半分、いや四分の一ぐらいに聞いてたわ。」
「ちゃんと聞いとけよ!!親友の真面目な話だぞ!!」
「いやだって、荒唐無稽な話だし、普通はいつもの嘘だと思うだろ。ツチノコ見つけたとか、逆ナンされたとかバカみたいな嘘をいつも言ってるお前が悪い。」
「ぐぬぬ。」
真光寺家の秘密、それは15から16歳の間に男が女に、女が男になるという呪いのようなもの。俺も半信半疑だったが、父さんの昔の頃の写真を見て、父さんがピンクのヒラヒラのスカートを履いていたからゲラゲラと大爆笑してしまった。しかし、そこからは不思議とその呪いのことを信じるようになり、今に至る。でもなぁ、もう少し男として名を馳せたかったぜ。せっかく不良との喧嘩を重ねて少しずつ、この辺でも名が知れてきたのに残念だぜ。
話し込んでいたら遅刻してしまうので、さっさと登校するとしよう。
「あー、何か肩こるわ。巨乳が肩こるって本当なんだな。」
「巨乳というか、それは爆乳だな。Gカップぐらいあるんじゃないか?」
「お前よぉ、それ俺だから良いけど、他の女に言ったらセクハラだからな。」
胸がここまで大きくなるとは予想外だった。おかげで買ってもらったブラジャーも付けられず、今はノーブラである。
胸がユサユサ揺れて邪魔で仕方ない。朝、揉んでみたら色々と高ぶって大変だった。
「どうせ自分の胸揉んだんだろ?」
「バ、バッカ!!も、揉んでねぇよ!!」
相変わらず何を考えてるか分からない無表情の男だが、鋭いことを言ってくるから侮りがたし。
「お、お前こそ俺のナイスバディを見て、欲情してるんじゃないだろうな?」
「まぁ、多少はな。」
「してんのかよ!?」
親友で欲情するとか正気かよ。まぁ、胸がでかくなったら髪も伸びてサラサラだし、すっかり女らしくなったことは認めざるをえんな。
まぁ、女になるのも思ったほど悪くねぇ。だが・・・。
「おい!!」
後ろから乱暴に声をかけられ、振り向くとそこには柄の悪そうな二人組の不良の男達がこちらを睨んでいた。
「よぉよぉ、兄ちゃん。綺麗な女の子連れて登校とは、ちょっと調子に乗り過ぎじゃねぇか?」
何だコイツ?とりあえず言い返そう。
「なんだとこの野郎!!何処に女が居るってんだ!!」
「えっ?・・・アンタ女だろ?」
「あっ、そっか。」
今日から女としてデビューだから慣れてないな。
「そうだよ!!俺は女だ!!」
「そ、そうだろうともよ!!」
「女の俺に何か用か?」
「へへっ♪そんな男なんかと一緒に居ないで、俺達と遊ぼうぜ♪」
ほぅ、俺を選ぶとは中々お目の高い不良だな。でもな、俺はそんな安い女になるつもりはねぇぜ。
「誰がテメーらなんかと遊ぶかよ!!これでも喰らって寝てろ!!」
"ブンッ!!"
俺はいつも通り拳をふるった。しかしながらいつも通りとはいかない。
"パシッ"
俺の拳は簡単に男の右手に受け止められた。そうなんだ筋力落ちてるんだよ。昨日までの俺が10としたら今の俺は0.5だよ。
「ぐへへ♪気の強い女は嫌いじゃねぇぜ♪」
ヤバいヤバい、これは女としてデビュー早々に大ピンチだわ。クソッ、男とまともに喧嘩も出来ないとは、女って生き辛いな。
と、ここで俺の連れが出てきた。
「あんまり無茶するなよ。」
もちろん義雄である。しかし、義雄は昔からいじめられっ子で、いじめられる度に俺がいつも助けてやったもんだ。今だって荒事は全部俺が引き受けてたんだ。だから義雄に期待は・・・。
”ブンッ!!"
"メキャッ!!"
「あぎゃ!!」
突然、義雄は俺の拳を受け止めた男の顔面をぶん殴った。
殴られた男は後方5メートルぐらいまでぶっ飛ばされて、地面に倒れ伏して動かなくなった。
「相棒ーーーー!!」
もう一人の不良が倒れ伏した不良に駆け寄り、その後に倒れた男を引きずりながら「お、覚えてやがれ!!」とベタな捨て台詞を吐いて逃げて行った。
「ふぅ、終わったな。じゃあ、早く学校に行こう。」
「いやいや、お前いつの間にそんなに強くなったんだよ。」
下手すると今の義雄は、男だった俺より強いんじゃないか?
「筋トレとランニング、それとボクシングジムにも通ってるからな。」
「い、いつの間に・・・。そんなに強いなら俺が喧嘩してる時も手伝えよ。」
「だって、お前がすぐに倒すから俺が手伝うまでもなかったからさ。」
確かに俺がやっちゃうからな。俺も悪かったか。
「でも、これからは俺が守ってやるよ。」
キュン
・・・な、なんだ今のは!?なんか胸の当たりがこう熱くなるというか、なんというか。
「だから、あんまり離れるなよ。いつも俺のそばに居ろ。」
キュン、キュン、キュキュキュキューン
「がはっ!!」
何だこれは!?何なんだこれは!?これも女になった副作用なのかぁーーーーーー!!
なんだかよく分からないけど、無性に料理勉強して、義雄に弁当作ってやりたくなってきたーーーーー!!