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 ルオとの出会いは、セレスティナが7歳の頃。王都近くの森で出会ったとのこと。その時、一緒にいたアルベルト国王がルオレシアンと名づけ、セレスティナが引退後にルオを名前を改めたそう。

 ここまでの話を、ツェーン枢機卿宅の書斎でルオとニキに教えてもらっていた。

 オルランコスに捕まった3人組みは、隣の居間でくつろいでいる。レイニーやツェーン枢機卿には、わたしがセレスティナだったということを聞かせられないし、ジークにはまだ話すだけのふんぎりがつかない。そこで、ニキに防音の魔法をかけてもらって、書斎で話を聞かせてもらうことにしたの。


「セレスティナに友人はいなかったの?」

「友と呼べるのは、俺だけだったはずです」

「なぜ………」

 言いかけて、アシュリー王太后のことが思い浮かんだ。セレスティナを苦しめるため、友人ができても圧力をかけて仲たがいさせるくらいのことするでしょうね。命を縮めることをわかっていて、女王を廃位させたくらいだもの。

「友達でいてくれてありがとう、ルオ」

「いいえ。セレスティナが女王の間は、1度も会えませんでした。女王のそばに魔獣がいるのは外聞がよくないからと。そう言われて、セレスティナも従うしかありませんでした」

 かわいそうなセレスティナ。孤独で、いずれ訪れる死の恐怖に震えながら、敵だらけの中で過ごす日々はどれほどつらかったことか………わたしには想像もつかない。

 

「過ぎたことだ。いまさら、どうにもならないことだよ」

 ニキの声が、静まり返った書斎に響いた。

 ニキはたぶん、励まそうとしてくれている。それははわかるけれど、暗い気持ちにならずにはいられない。セレスティナがかわいそう。

 その時、雰囲気をぶちこす音が響いた。


 ぐぅ~~~っ


 恥ずかしい。顔から火が出そう。

「食事にしよう」

 ニキがわたしの背中を押して、居間へ誘導した。

 戻ったわたしが赤い顔をしていたので、ジーク達には不審がられた。ますます恥ずかしくなり、顔が赤くなる。

 ルオに抱きついて毛並みに顔を埋めていると、またお腹がなった。もう!

 その音で、合点がいった様子の面々。

「わたしが食事を用意しましょう」

 立ち上がったのはツェーン枢機卿。

「俺も手伝う」

 ニキも一緒に、台所へ歩いて行った。

 わたしも手伝いたかったけれど、料理できる自信がない。ジークとレイニーを見ると、2人とも首を横に振った。ニキとツェーン枢機卿に任せておいたほうがいいみたい。

 

 しばらくして、良い匂いが漂ってきた。

「肉も卵もだめになっていたから、野菜と干し肉のシチューだよ」

 料理ができるなんてすてき。それに美味しそう。

 ルオとイグニスもシチューを取り分けてもらい、喜んで食べている。

 シチューは野菜がゴロゴロ入っていて、細かく刻んだ干し肉がいい出汁を出している。本当に美味しい。体があったまるわ。

 そういえば。さっきオルランコスのアジトで水魔法を使ってジーク達の服が濡れてしまったけれど。帰る途中で生活魔法をかけて乾かしておいたの。それでも、ジークは服がボロボロで、買い替えないといけないわね。剣はオルランコスに取られちゃったし………。


「ねえニキ、ジークの剣は………」

「取り返して来た」

 さすがニキ!懐から長剣を取り出し、ジークに渡してあげていた。ニキは懐に、外から見えないように小さいバッグを着けていた。このバックは、なんと空間魔法をかけられた優れもの。見た目以上に、なんでも入るそうな。わたしも欲しいな。

 ジークは嬉しそうに剣を受け取っていた。武器がないと心細いのかな。

「さて。ツェーンを取り返したことだし。ツヴァイに報告に行こうか」

 そうだった!きっと心配しているわよね。

「ツェーン、おまえとレイニーはここに残ってもらう。ジークとルオは護衛だ。俺とレナ、イグニスで行って来る」

「ニキ、それは………」

「だめだジーク。今のおまえを連れて行くわけにはいかない。これは決定事項だ」

 オルランコスでひどい目に合って、体も魔力も回復していないものね。なにかあった時に、守る立場から守られる立場になったんだわ。

「わかった」

 ジークは渋々頷いた。


「俺達が出かけている間、ツェーンがオルランコスでなにをされたか聞き出しておいてくれ」

「わかったって!ガキじゃねえんだから」

 ふてくされている様子がおかしい。

「すぐに帰って来るから心配しなくて大丈夫よ。ルオ、みんなを守ってね」

 ルオが吠えて尻尾を振った。可愛い。


 ノヴァク自治区は、円形になっている。その中央にあるのが大聖堂を中心とした教会施設。教会施設は尖塔が立ち並んでいて、周囲の建物よりうんと高い。特に大聖堂の尖塔は、高すぎて見上げると首が痛くなってしまう。 

「はぁ~、なんど見ても見事ね」

 溜息が出るわ。

 大聖堂の入口と人目を避けて、大聖堂をぐるりと回ると、なんとなく見覚えのある壁にたどり着いた。

 ニキが壁に手を置くのと同時に魔力を流すと、壁がすっと動いて開いた。

 すぐに中に入って扉を占めると、扉は壁と同化して見えなくなる。

「それで。どうやってツヴァイ御子を探すの?」

 問うと、ニキは片眉を上げた。

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