表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

19

 え………それって、レ・スタット国へ行かなきゃいけないってこと?あそこから逃げて来たのに?さぁーと血の気が引く気がした。

「いやいや、それがね、この国にも支部があるらしいんだ。それで、組織の末端にいる人間と連絡が取れて、どうやら教会の人間が捕まったらしいという噂を聞いたんだ。今、エウレカ教会で行方知れずとなっているのはツェーン枢機卿だけだからね。おそらく、捕まったのはツェーン枢機卿だろう」

 レイニーはオルランコスにもつてがあるのね。ハンター時代のレイニーは、どんなことをしていたのかしら。諜報活動?でも、そんなハンターがいる?クロウでさえツェーン枢機卿の行方は掴めなかったのに、レイニーはたった1日で調べてきた。たしかにすごいけど、なんだか怪しく思えてくる。レイニーがオルランコスの一員ていうことは………ないのかしら。


「その支部の場所はわかっているのか」

「いや、そこまでは調べられなかったよ。たしかなのは、火事を起こしたのがオルランコスだということだ。これは間違いない。情報源が、直接見たと言っていたからね」

「ということは、俺達の姿を見られてるな」

 イグニスを連れて来たのも、見られてるよね。

「それで。おまえさん達は、なにか収穫はあったのかい?」

「俺達は、なにも収穫はなかった」 

 え、ニキのことは話さないの?クロウだから?レイニーをことをそこまで信用していないのか、巻き込みたくないのかどちらかしら。う~ん。

「レナ、そうなのかい?」

 しかたないので、ジークに話を合わせておく。

「そうなの。ノヴァク自治区と首都メルバルトを探したけれど、手がかりは見つからなかったわ。匂いだけじゃダメだったの」


 レイニーに敬語はやめてくれと言われて、今朝から普通に話すようになっていた。

「そうか。そうだろうね。ツェーン枢機卿が見かけられてから日数も経っているし、どこも人が多いから匂いが消されているだろうね」

 レイニーはわたしの様子になにか気づいたようだったけれど、それ以上はなにも言わなかった。

 明日は、またレイニーとは別行動で情報収集にあたることになった。

「………ろ。起きろってば!」

 耳元で叫ばれて、ぼうっとする頭を振りながら目を開けると、イグニスがわたしを睨んでいた。

「しっかりしろよ。狙われてるぞ!」

「え?」


 びっくりして辺りを見回すと、薄暗い室内の中にルオの金色の瞳が輝いていた。ジークは床に横になったまま、身じろぎひとつしない。ぐっすり寝ているみたい。 

「そいつは置いてけ。とにかく逃げるんだ」

 わけがわからない。なにが起きているの?

「レナ様、早くお乗りください」 

 ルオが元の3mほどの大きさになっていて、わたしに背中に乗るように言った。わたしの荷物を咥えている。

 その切羽詰まった様子に、言われるがままルオの背中に跨る。

 イグニスがルオの頭に飛び乗って来て、


 ぐわぁーーーっ!


 と火を吐いた。

 その熱と勢いに押されて、窓ガラスが外に向かって割れる。

「気づかれたぞ!急げ!」

「逃がすな!」

 荒々しい声と、階段を駆け上って来る足音が聞こえた。

 とたんに、イグニスの言葉が鮮明に蘇る。狙われている、逃げろ、そいつは置いていけ。

「ジークを置いて逃げるの!?」

「行けルオ!」

 わたしの叫びは、イグニスの声にかき消された。


 ルオは割れた窓から外へ飛び出し、隣の建物の屋根に飛び乗った。すごい跳躍力。そのまま、屋根伝いに走り、レイニーの古着屋から遠ざかって行った。

 ルオは途中で地面に降り立ち、裏通りの暗闇に紛れると犬サイズになった。魔物サイズだと目立つからね。そして歩き続けて、やって来たのはツェーン枢機卿の家。あたりに人がいないことを確認して、するすると中に入って行った。慌てて、そのあとを追いかける。

 ツェーン枢機卿の家はカーテンが閉め切られたままなので、暗くて何も見えない。記憶を頼りに、奥の部屋へ移動した。奥の部屋はさっき来た時と同じく明るかった。そこでようやく一息つく。


「ジーク、大丈夫かなぁ」

 わたしのつぶやきに答えたのはイグニス。

「あの兄ちゃんなら大丈夫だろ。狙いはレナだからな」

「なんでわたし?まさか、レ・スタット国の追手が来たの?」

 イグニスは首を傾げて。

「さあな。あの連中は、サラマンダーを連れた女を捕まえろ、と言ってたぜ。薬を盛ったから起きないとか言ってたな。先にジークを起こそうとしたんだけど、まったくダメでさ。レナはよく起きれたなぁ。ま、無事に逃げられてなにより。俺っちのおかげだぜ」

 えへんと胸を張り偉そうにしていたけれど、イグニスのおかげで助かったのは事実なので頭を撫でておく。すると、さらに胸を張って、後ろに倒れそうになる。ふふっと笑って、支えてあげた。


「それより、レイニーも襲ってきた奴らと一緒にいたぞ」

「え、レイニーはわたし達を助けようとしてくれたの?」

「違う。薬を盛ったと話してたのがレイニーだ。あいつ、裏切ったんだぞ」

 まだ頭がぼんやりしてるのかしら。どうしてレイニーがわたし達を裏切るの?だって、ジークの知り合いなんでしょう?助けてくれるんじゃなかったの?  

 朝になって人の騒めきが聞こえるようになった頃。わたし達は非常食を食べていた。もちろんジークのことは心配だけど、腹が減ってはなんとやらと言うしね。

 薬を盛られた影響なのか、頭がぼうっとして、なかなかはっきりしなかったの。どうやら、睡眠薬を盛られたみたい。ルオの話では、セレスティナは毒を盛られることもあったので薬に耐性があるんだって。どんな人生を送っていたのセレスティナ………。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ