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 ニキはわたし達に視線は向けないまま、意識だけこちらによこしていた。本当に器用な人。というか、人なの?

「ニキ、目隠しの魔法というのを、わたしは解呪できるみたい。やってみてもいい?」

 ニキはジークと視線を合わせ、頷いた。魔法書を片手に乗せて、わたしの方に差し出してきた。

 わたしは魔法書に右手を乗せて、

「解呪」

 と唱えた。

 ぱきんっとなにかが割れる小さい音がして、本から透明なベールが滑り落ちていくのが見えた。ような気がする。


「素晴らしい」

 ニキに褒められて、素直に嬉しかった。無表情じゃなければ、もっとね。

 エスケープのページには、意味不明な文字が並んでいた。暗号というものかもしれない。

「これは、こちらで解読しよう。君達には無理だろうからな」

 なぜか、鼻で笑われた気がする。実際、そんなことはされていないんだけど、なんだか、馬鹿にされた気がする。


「それで。この家はツェーン枢機卿の家で間違いないのか?」

 ジークがニキに聞いている。

 いまさらそんなことを聞いてどうするつもりかしら。

「そうだ。ここはツェーンの家だ」

 ニキは当然と言わんばかりに答えた。

 ジークがどうしてそんなことを聞いてきたのか、わからないよね。

「だったら、ツェーン枢機卿の匂いがついた物があるはずだ。貸してくれ。ルオに匂いを追ってもらう」

 なるほど。そういうことね。


「その魔物なら、追えるかもしれないな」

 あれ。ルオが魔物だって見破られている。そっか。クロウだもんね。結界を張れるようだし、魔法も使えるよね。それなら、ルオが犬じゃなく魔獣だと気づいてもおかしくない。

「そっちの精霊も、役に立ってくれそうだな」

 あ、やっぱり気づかれてる。

「イグニスは、誰かに指示されてわたし達の宿屋を火事にしたの。今はわたしの契約精霊だけれど」

「火事にした犯人を追えるか?おそらく、ツェーン枢機卿を狙ってる連中と一緒だろう」

 ジークの言葉に、ニキが頷いた。

「いいだろう。引き受けよう。その火事の話を、もう少し詳しく話してくれ」

 ジークがニキに火事の説明をしている間、わたしは部屋の中を見回すことにした。

 

 今いる部屋は書斎だったらしく、壁の3方を天井まである本棚が埋め尽くしている。書斎机も周りにも、本がうず高く積まれている。ツェーン枢機卿は本好きなのね。

 この部屋に、ツェーン枢機卿の匂いがついた物はなさそうね。でも、念のため。

「ルオ、イグニス、この部屋にツェーン枢機卿の匂いが強い物はある?」

 2匹に向かって問いかけた。

「俺っちは、匂いにはうとくてよくわかんねえな」

「そっか。精霊だもんね」

「おう」

 ルオは、室内の匂いを嗅ぎながら歩き出していた。書斎机の前で立ち止まる。

「ここに靴があります。これで匂いを覚えます」

「良かった。これで、ツェーン枢機卿を追えるわね」

 クロウでさえ見つけられないツェーン枢機卿を、簡単に見つけられるとは思えないけれど、何か手がかりが見つかればいいな。


 そういえば。ジークはニキと知り合いみたい。どういう知り合いなのかしら?冒険の途中で出会った?昔からの知り合い?でも、ただの知り合いというには仲が良すぎるのよね。

「………2人は友達なの?」

「「違う」」

 2人そろって否定された。

 声を揃えているのが、余計に仲が良く見えるのに。

「じゃあ、明日の朝、ここに集合だな」

「あぁ、待っている」

 ジークとニキは頷きあい、わたし達はツェーン枢機卿の家を後にした。入る時は苦労したけれど、出る時は普通に歩いて出られた。


  さあ。次はルオの追跡ね。

 と思ったけれど、お腹が空いたので、先にお昼ごはんになった。時間がもったいないので、屋台での食べ歩き。これも楽しいわ。

 ルオの鼻を頼りにノヴァク自治区と首都メルバルトと彷徨ったけれど、ツェーン枢機卿はもちろん、手がかりさえも見つからなかった。

「申し訳ありません。レナ様」

「しかたないよ。気にしないで、ルオ」

 落ち込むルオの頭をわしゃわしゃ撫でる。頭がぐしゃぐしゃになっておもしろい。思わず笑ってしまった。

 ルオがジト目で見つめてきたけど、気にしない、気にしない。

 

 わたし達は今、夕食を終えてレイニーの家に戻って来ていた。

 その時、階段を上る足音がして、レイニーが姿を表した。

「ただいま。ふふっ。家にだれかいるっていうのも、いいもんだねぇ」

「おかえりレイニー」

 にっこり微笑むと、レイニーは胸に手をあててお辞儀した。ふふ。おもしろい。

「どうだった?なにか情報は掴めたか?」

「結論から言うとだね………そう。情報があった」

「さすがだレイニー!」

「褒めてもなにもでないよ」

 そう言いながらも、嬉しそうなレイニー。顔をほころばせながら、ソファに座る。


「そうだね。昔に戻ったようで、なかなか楽しかったよ」

 情報を集める冒険者?諜報活動でもしてたの?

「ツェーン枢機卿の居場所は、たぶんわかったと思う」

「すごいわね!」

 クロウでもわからなかったのに、レイニーはどうやったのかしら?

「どうやら、オルランコスにいるらしい」

 オルランコス?なにかしら。他の町かな。

 ジークを見ると、なにやら困った顔をしている。

「オルランコスはレ・スタット国の闇の組織だ。人身売買でもなんでもやっている。国境をまたいで、ル・スウェル国までやってきたか………」


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