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二人の幼馴染み

誤字報告いつもありがとうございます。

 キスリング家の寄子であるトーレス男爵家には三人の男子が居る。長男のアイザック、次男のベルナンド、三男のジルベルト、当然、長男が家督を継ぐので下の二人は家を出ることになる。


 下級貴族の子弟にとって一番人気の就職先は、王宮勤めの文官になること。その次が騎士団に入ることなのだが、ベルナンドとジルベルトはどちらも自分達には向いてないと思い、初めから目指さなかった。


 二人が選んだ道は、幼い頃から慣れ親しんだキスリング家の領地で働くことだった。ベルナンドはアイシャと、ジルベルトはトリシャと同い年ということもあり、子供の頃から遊び相手として良く一緒に遊んでいた。


 淡い恋心を二人に抱いたのはその頃だった。美人なのを鼻に掛けず、馬に乗り野山を駆け回る姿に見惚れた。二人の初恋だった。夕方まで泥だらけになって遊んで、それぞれの親に叱られたのは良い思い出である。


 もっとも、寄親である家のお嬢様に対し、想いを告白する勇気は二人ともなかったが。ちなみにベルナンドはアイシャに。ジルベルトはトリシャにそれぞれ懸想している。


 そんな二人の憧れのお嬢様達が先触れもなく、しかも馬に乗ってやって来たと聞いて二人はビックリした。今はもう深夜になる。休憩もせずに馬を走らせて来たのか、アイシャとトリシャの顔に深い疲労の色が伺える。


「アイシャ様、トリシャ様、いきなりどうされたのです?」


「あら、ベルにジル、久し振りね。二人とも立派になったわ」


「こんな時間に急でごめんなさい。しばらくお世話になるわね。ハンスは居る?」


「はい、こちらです。ご案内します」


 ハンスとはキスリング家に長く勤める家令のことで、領主代行を任せている。


「これはこれはアイシャお嬢様にトリシャお嬢様、ますますお美しくなられて。この爺めも鼻が高いですな」


 急な訪問にも関わらず、温かく迎えてくれた老齢の家令に感謝しながら、アイシャは事の経緯を説明した。


「なるほどなるほど、良く分かりました。ご安心下さい。ここにはお嬢様方に仇なすような輩はおりません故。余所者が入って来たらすぐに分かりますので、我々にお任せ下さい。お嬢様方はどうかごゆっくりお過ごし下さい」


「ありがとう、ハンス。お言葉に甘えてゆっくりさせて貰うわ」



◇◇◇



 次の日、久し振りに合った幼馴染み同士、積もる話もあるだろうとのことで、ハンスから特別に休みを貰ったベルナンドとジルベルトは、アイシャとトリシャの二人と一緒にお茶を飲みながら寛いでいた。


「どう? ベル、ジル、ハンスの指導は厳しいでしょう?」


 すると二人は苦笑して、


「えぇ、とても。でも僕達のことを思って厳しくしてくれているのは分かっていますから。やり甲斐はありますし、頑張ろうと思います」


「フフッ、ハンスはこの領地の生き字引みたいな人だから。お父様だって頭が上がらないのよ? きっと一人前に仕上げてくれるわ。頑張ってね」


「ありがとうございます。ところで...これからお嬢様方はどうされるおつもりで?」


「そうなのよねぇ...取り敢えず領地に避難したのはいいけど、そこから先はノープランなのよ...」


 すると今まで黙っていたトリシャが、


「ねぇ、ベルとジル、二人は恋人居るの?」


 二人は飲んでいた紅茶を危うく吹き出すところだった。


「い、いきなりですね...いえ、二人とも居ません」


「好きな人とか居る?」


 それはあなた達です...とは言えない。言いたいけど言えない。


「...どうしてそのようなことを?」


「それはね...」


 トリシャが言い掛けた時だった。


「お嬢様方、失礼致します」


 とても渋い顔をしたハンスが現れこう告げた。


「王子様方がお見えです」

 


 


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