7.バイバイ
あんまりだよ、親父。
酷いよ。
その手紙を見つけた日、私は生まれて初めて声を上げてワンワン泣いた。
1人でも生きれるとか、親離れは大切とか、そんな理由を付けられたのが悲しくて寂しくて、でも手紙を残してくれていたことが嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、いろんな感情が込み上げてきて一気に溢れ出してしまった。
私は寂しかった。13歳になった日から16歳と5ヶ月。たった3年と5ヶ月だけど、たった1人で生きていくのが辛かった。
今思えば父の部屋にあった色々なものを手当たり次第に学んだことも、1人で何もしないのが寂しくて何か他のことで気を紛らそうとしていたんだと思う。
それから、ちょっとの期待。
私のことを忘れてしまった訳じゃなくて、何か理由があって1人にしたと信じて、ずっと信じていた。嫌、そう思えるようにしていた。
毎日疲れ果てて、意識を失うようにして寝る生活も、1人でベットに入って目を瞑ると寂しさに襲われるから。
毒を自分で使ったことも、実験のためだけじゃなくて、少し楽になれるかもしれないという期待があった。
これでもかっていうくらい体を追い詰めなければやっていけなかった。
心が砕けそうだった。
自分は平気だと、そう思うことすら辛くて、思考を放棄した。
そんな色々な行動も、感情も、全部が今日の為に繋がっていたのかも知れない。
魔物は会話ができない。出会えば問答無用で襲ってくるただの生き物。
会話がしたい。会いたい。誰かに見つけて欲しい。見てほしい。認めてほしい。呼んで欲しい。期待して欲しい。
みんなで食事もしたいし、夜更かしだってしたい。勉強して、剣の鍛錬をして、遊んで、昼寝して、風呂に入って、寝る時はまた明日って笑って言うんだ。
普通の生活。当たり前の生活。
こんなのは全部、本の中の物語の世界だった。
次の日。
私は隠し部屋の中にあった本と使えそうなメモと道具、父の部屋にある使えそうなものと着替えと食べ物と父への土産を持って家を出た。
次にこの家に来る時は、父のように追放された時か、それかこの家の生活が恋しくなった時。
「バイバイ」
目指すはフォエニクス王国。
エトセトラの人生の時計の針が進み出した_