3.糞親父
「とりあえず魔法くらいちゃっちゃと覚えてテキトーに戦っとけ」
本当にポイッと放られて父さんは姿を消してしまった
置いてけぼりにされたのは魔物の巣窟。
死
この文字をこれほど近く感じたのは後にも先にもこの一回だけ!
戦う術もない7歳の少女を化け物の中に放りこむ親があってたまるか!!
お陰で帰ってきた時には魔法も体術も剣術も体力も知識も経験も底力もぜーーーーーーーんぶ上がったわけ
帰ってきただけ奇跡、というか帰ってきただけ瞬間に気絶したけど……
ついでにこの時から性格もひん曲がってしまった
今日は13歳の誕生日を迎えた。一日中ぐうたらしてそろそろ寝ようかと思った時だった。
「セト、よく聞け」
「何?」
「こっち向け」
「何か用でもあんの?」
「ああ、少し昔話でもしようぜ」
あれは、17歳の時だよな。俺は母国でちょっと有名になってテングになってた。栄誉騎士なんて称号貰っちゃって下級貴族の癖にお偉い方々の繋がり作って、当然よく思わない人間が現れるわけ。
その結果は、まぁ分かるんじゃないの?よく思ってなかった人達が糸引いて暴動を起こしたんだ。『下級貴族のイキリ野郎が出しゃばるからこうなるんだ』ってね。俺は仲間が止めるのを無視して1人で突っ込んでいった。そこで怪我人も少なくなくてな、俺が責任を取った。
過去100年内の1番の大事件で大きな裁判になっちまって判決は国外追放だと。そんな時も仲間は俺を助けてくれた。上手く調整して死んだように見せかけて深淵の森の中に入ることに成功した。
俺ならこの森でも生活できるって笑って言われたよ。
しかし、だ。ここには先客がいた。17歳の俺の前に現れた赤ん坊は弱り果てていたにも関わらず体内の魔力量は尋常じゃないし意識もあった。
「俺はここまでお前を育ててきた。こいつは強くなると思ったからな。それから調べて行くうちにお前の事もわかったよ」
「!?」
「お前の本当の親の事も何故捨てられたのかも、な」
「……私の親はなんて言うの?」
「父はセルべラス・カライラ。母はオリガ・ラ・マスカエル」
「母は貴族……」
「そうだ。しかも公爵家だぜ。ちなみに親父は殺人鬼」
「はぁ?」
「本当だよ。ま、お前のお袋を連れ去って姿を眩ましたが」
「なーんか不思議だな。殺人鬼と貴族の子供を追放された男が育てるなんて。まるで物語のようだ」
「俺はその2人が両親だと知っていたからお前を育てたんだよバーカ」
「いい血筋って事か」
「そうだよ。この先お前にはしっかりと恩返ししてもらうよ」
そう言い残して彼は出て行った。