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<食事介助>

 一日三回ある食事、この食事では全員が全員同じものを食べるわけではありません。もちろんアレルギーなど食べられないものは別の食事に変更になることはあるのですが、まず何よりも食べ物の状態が違うのです。

 例えばご飯、白米の状態でも「普通の白米・お粥にされた白米、ミキサーにかけてとろろのようにされた白米」の三つの状態に分かれているのです。とろろのような状態とはもう米の形が残っていない状態で、自分が初めて見たときそれが白米だと説明を受けるまで「白い何か」というほどのものでした。


 初めて見る方にはドン引きする人もいるかもしれませんが、これは一人一人に合わせた食事を提供しているということであり、これによって入所者のほとんどが一人で食事をとることができます。


 そのため介助が必要なのは数人の手や体が動かない入所者だけであり、職員は入所者Aに一口食べさせたら、次は別の入所者Bのところに行って一口食べさせ、また次の入所者Cに一口食べさせたらまた入所者Aに戻るというような特定の入所者だけの食事介助で済むのです。



・・・・・



 では食事介助で何が大変だったかというと、いろいろあるのですが簡単な方から行くと食事を食べないという入所者がいることです。食べ物で遊んでいて全然食べていない、食べ物を食べ物として認識していないということがよくあり、これには「食べてください・これは食べられますよ」といちいち伝えなくてはなりません。


 そして次がもう少し大変な方になるのですが、それは自分以外の食事を食べる入所者がいることです。実際に自分がいたころ、隣に座っている人の食事を皿ごと盗ってしまったり、向かいの席の人のお盆ごと自分のほうに引き寄せて食べようとしてしまったりということがありました。

 前者はその人の行動を警戒しながら食事介助をし、後者は席に座らせてから配膳するのではなく、配膳をした後に席に着かせるなどの対策を取りました。


 そしてこの食事を盗まれるということで最も面倒なのがン食事を盗まれた入所者、つまり被害者がいることです。盗んだ入所者と被害を受けた入所者でケンカになりますし、もしケンカにならなかったとしても食べかけを取り返した後、本来食べるはずだった入所者に返して食べさせるといったことはできないのです。

 そのため食べられたものは皿単位で厨房に内線で発注することになるため、厨房の担当者にまで迷惑をかけることになってしまうのです。


 最後に、これが最も大変なものになります。

 それは食べ残しです。


 職員としてはこれが非常に厄介です。本人がお腹いっぱいだと言っても食事の時間中は食べるように勧めなければならないからです。なぜならAさんは白米100g、Bさんは白米200gといった感じでご飯・おかず・汁物などすべての食べ物の量が決められているので入所者全員が完食する前提なのです。


 そんなこともあり我々職員にもある程度プレッシャーがかかってきます。先ほども言ったように完食するのが前提なので、残った分は 「職員が食べさせられていない」 ということになるので、完食しなければ食事を時間いっぱい勧めなければなりません。


 また入所者が食べた食事の量は全員記録する必要があり、完食していれば記録だけで済みます。しかし、もしも皿の2割ほど残していた場合「主食10割、副食8割、汁物10割 食べるように勧めるが、手が進まず~」など食べた量と状況を書いて引き継ぎのために特記事項として報告書を書かなければなりません。つまり、全員が完食すれば記録だけで済み、残した人が多ければ多いほど報告書に書かなければいけないことが増えてしまうのです。


 食事を完食させるのはある意味職員にとって腕の見せ所でした。全員完食であればしっかりと食べさせているということになりますし、報告書も書かなくて済むからです。


 正直なところ自分の場合は入所者に栄養を取らせるために食事を勧めるというより、報告書を書かなくて済むようにするために食事を勧めるという状態でした。



――――――――――



 周りはほぼ全員食べ終わり、あとはもともと食べるのが遅く食べ続けている入所者と・・・。


 「食べないの?」

 「もうお腹いっぱい」


 まだ食事を残したまま食べようとしない入所者。・・・スプーンにおかずを乗せ。


 「口開けてくださーい」

 「いや、もうね・・・もぐもぐ」


 しゃべろうとして口が開いた時にスプーンを口に入れる。これが食事の時間が終わる直前の日常でした。



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