<暴力について>
数年前に社会的な問題になった職員から利用者への暴力ですが、私がいた施設ではそのようなことはありませんでした。倫理的、道徳的にやってはいけない・・・というのは建前で、そもそも転倒などただの事故でもケガや痣ができようものなら報告書や報告の山となるのです。
そのためたとえケガの理由をでっちあげるとしても報告が大変になりますし、自分からありもしない仕事を作り出して仕事を増やす必要はないというのが本音です。
しかし、そうはいっても施設内で暴力と無縁というわけではありませんでした。入所者から職員への暴力というのは普通にあるのです。
内容の前後は忘れましたが、怒った女性入所者が女性職員の腕を平手で何度もたたくということがありました。まあ、大抵入所者が怒るのは悪いことをして職員にとがめられたりしたときの逆切れなのですが、この入所者の場合、男性職員が対応すると一切暴力は振らなくなります。
しかし、怒りが収まったわけではありません。
この人は
女性職員 叩く
男性職員 手を振り上げるだけ、手を前後に振って当たらないように叩く
という叩き方をするからです。
また、入所者から入所者への暴力というものもありました。実際に私は見ていないので聞いた話、正確には引き継ぎの際に受けた報告になるのですが、隣に座っていた入所者を叩いたというものです。たしか漫才の「なんでやねん」のように手の甲で叩いたということでした。
そして、叩いた理由ですが本人が叩いた理由どころか職員との会話にも一切口を開かなかったのでわからずじまいだったとのことです。
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また、これは最終的に暴力が振るわれたということはなかったのですが、その一歩手前という感じだったのでここに書かせていただきます。
入所したばかりで落ち着かないのか、施設内をくまなく歩きまわる入所者がいました。初日はただ歩きまわるだけだったのですが、二日目からベッドの柵を持って歩き回るということを覚えてしまったのです。
それとなく近づき、柵を預かろうとするとその入所者は柵を振り回して大立ち回りを演じます。こちらに預けたり一緒に持たせてくれたりしてくれればよかったのですが、振り回すとなると取り上げざるしかありません。職員、ほかの入所者の安全を考えると強制的に取り上げるしかないのです。
そして、その後新しくわかったことがあります。近くの部屋に足が悪く部屋で寝たきりの入所者がいたのですが、その人によれば急に部屋に入ってきたかと思えば寝ている自分の真横を通り、柵をベッドにぶつけたり柵をその入所者の頭上を通過させるなどといった行為が明らかになったのです。
一歩間違えて手を滑らしていればケガをする可能性もあっただけにその入所者への警戒をするということになりました。
最初の書き方でわかる人もいたかもしれませんが、こちらから暴力を振るったことはなくても振るってしまいたいと思ったことはあります。
人間である以上私にだって感情はありますし、我慢というものをしているのです。ですが自分の人生をここで棒に振る必要はありません。結局倫理観と言うよりもこの考えが私に暴力を振らせなかった理由だと思います。