第五話
「なんで入れないんですか!?」
ギルドを出てほとんど時間が経過していない頃、ダンジョンの入り口で私は声を荒げた。
「そんなこと言われてもねぇ。君、装備を一つも付けずにダンジョンへ入るなんて無謀にもほどがあるよ。」
それはそうだよね。わたはそのまま来たから装備をしていないし。普通の服に手ぶらで入ろうとしていたのだから危ないと止めるのも当たり前。
だけど仕方がないじゃないか。お金もないし、装備を買いそろえる以前の問題なんだもん。
別に死んだからといって本当に死ぬわけじゃないし、装備がないからといって危険だとは思えないんだけど、それを言われてしまうあたり、異世界に来てしまってこのアバターはゲームでなく本物なのだと言われているように錯覚してしまいそうになる。
じっさいそういうことはないはずなんだけどね。はずとおもってしまうあたりもう既に…うん。考えるのはやめよう。
なんか後ろにルーラがいるし。
「ミラさんが渡しそびれたそうで、頼まれて持ってきました。こちらの装備は貸し出し品となっておりますので壊さないでくださいね。装備が手に入った時にお返しください。」
なるほどね、納得したよ。ありがたく装備させていただきます。
「ありがと。」
ルーラは本当に用事がそれだけのようで受け取ったのを確認すると帰ってしまった。
簡易な鉄製の胸あてに膝あて、それに短剣と鞘。いかにも駆け出しの格好だ。
装備した結果ステータスの耐久が1.02倍。力が1.01倍になった。
表示はステータスの横に(×1.02)とか書かれる仕組みだ。
あれば得という事ではあるんだね。簡易なものでこれなのだからもっといいものならさらに上がるのかもしれない。
私はようやく見張りの人に許可をもらうと、ダンジョンの中へと入ることができた。
~~~
ダンジョンの中入ったんだけど、別次元かな?
入る時、下への階段を下りたはずなのに、一階層は広大な野原で空には太陽があるよ。
マップを開き現在地を確認すると自分の位置はちょうど端。試しに振り返って歩いてみるけど、予想通り景色は続いているにもかかわらず見えない壁にぶつかった。
行けないって事だね。
再度マップを確認して道_正確には獣道のようなものだけど_を進む。
探知スキルに何かが引っ掛かるから確認しに走るとそこにはスライムがいた。
鑑定すればコマンドに情報が表示される。
[スライム]
LV1 HP.30
スキル 物理耐性
試しに短剣で切りつけるんだけど、ダメージが一切入らない。
これが物理耐性かな。レベル一のくせに面倒なことこの上ない。
次に魔剣を召喚して切りつける。今度は風の魔剣だ。理由は見てみたかったから。
すると今度はしっかりとダメージが入って、スライムは光の粒子となって腕輪に吸い込まれていった。
面白くて何匹もスライムを倒す。シュパッシュパッって面白いね。
段々と動きがつかめてきたから、さらに先へと進んでだ。
たくさんモンスターを倒していて気付いたのは、一階層のモンスターはほとんどチュートリアル向けでリアには弱すぎるという事だね。出てくるのはLv1のスライムとLv2のゴブリンだけ。
しかも群れない。
それと、ドロップアイテムは自動で腕輪に収納されるという事。
そろそろ二階層への階段を探そうかな。そう考えると、突然私の探知スキルが妙なものに引っかかった。
駆けつけると、探知スキルに引っかかった状況と同じくそこには(多分)NPCの冒険者のパーティーがゴブリンの群れに囲まれている。
冒険者はLv1の3人パーティーで、それに対してゴブリンの群れは10匹。
Lv1とLv2のステータスの差は約二倍だから…3人が危ないわ。見てる場合じゃない。
「本当に助かりました。やられても死なないとはいえデスペナは困りますから。」
3人を助けた後、私はパーティーに合流して歩いていた。
ちなみにデスペナとは、デスペナルティの事。
HPが0になると始まりの町へリスポーンするんだけど、そうなるとペナルティとして一週間は自分の一つ下のランクまでの依頼しか受けられなくなるんだよね。これもミラさん情報だ。
つまりE級冒険者はF級まで。だけどランクFの依頼はないから、一週間依頼を受けられない。ということになる。
念の為パーティーを入り口へと送って、さらに奥を目指すために私は潜って行った。
何匹目かもわからないゴブリンを倒したとき、ついにレベルが上がった。
かなり大変なんだね、レベル上げ。
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【リア】(ランク.E)
BP:0
所属:なし
種族:猫人族
LV:4 (次のレベルアップまで 0/4000)
力:280
耐久:120
体力:270
敏捷:400
魔力:660
器用:360
スキル
主導者…自分及び仲間のステータスが1.5倍になる。また、自身の経験値の増加量が1.5倍になる。
だだし、ソロの場合は発動しない。
魔剣召喚…自分の魔法属性の魔剣が召喚できる。ステータスに応じて性能も変化する。
コール…運営と連絡できる。また、緊急事態と判断したときのみシステムに関与する権限を持つ
無属性魔法…コマンドや念話、探知、マップなどの魔法が扱える。また、自分のステータスの割り振りを自由に変えることができる。
無属性スキルを自由に扱うことが可能となる。
魔法属性
氷属性、風属性
所持品
冒険者の腕輪
水魔法石×15
守護石のペンダント×2
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ドロップ品も入っている。数から考えて確実にドロップするわけではないみたい。
しばらく進んで、ようやく下へと続く階段を見つける。
あの冒険者のパーティーを助けて以降、冒険者は見かけてもモンスターの群れと遭遇することはなかった。
お人好しなのは自覚してます。
読んでくださりありがとうございます。