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第十四話

早すぎず遅すぎないくらいの足取りで、ギルドへの道を歩く。

宿屋のおばさんの様子からして緊急ではないし、何かやらかして呼び出されたようには見えなかったからね。だったら優先権は私にあるし、わざわざ急ぐ必要もないのだ。

ただ待たせすぎるのは信頼にかかわるから、少し早く着けばいいぐらいのスピードだ。


「お待たせしてすみませんにゃ。」


ギルドへついてすぐに受付へと向かった。

ギルドからの呼び出しはだいたい受付が取り持ってくれる。

これは発売される前、ガルスさんがこの町へ戻ってきたとき伝えるようにしていたから慣れたものだ。ちなみに敬語はまだ慣れていない。違和感ありまくりだよね(笑)


受け付けには、困り果てた顔をしたミラさんに、それにカインとレインがいた。

昨日のチュートリアルと適性試験の件で何か問題でもあったのかな?ちょっと不安だ。

ミラさんは私の方をを見ると、パァっと顔を輝かせた。

よかった。問題があるわけではないみたい。


「リアさん!突然お呼びして申し訳ありません。

先日のお二方が、リアさんにお礼を伝え忘れてしまったからどうしてもと言われてしまって…」


なるほどね、呼んでくれと言って引かなかったのか。

はて?別れるとき確かにありがとうと言われたような…



「「昨日は本当にありがとうございました。リアさんの指導はとても分かりやすく、おかげで色々できるようになったんです」」


二人は声をハモられてそれはそれはわざとらしく言った。

わざとらしいんだよ。わかりやすいくらいに。

ミラさんは問題ごとが解決したときのような安堵の笑みを浮かべている。

ミラさん困らせるなんて、迷惑な奴らだね。


「そんなわざとらしいお礼はいらないにゃ。それに、お礼はその日のうちに受け取ったにゃ。」


私はなるべく冷たく聞こえるように言い放った。

怒ってますよ?当たり前だよね。

まあいい。本題に入ろう。


「何か言いたいことがあるなら聞くからついてくるにゃ。ここは混むと邪魔になるから場所を変えるにゃ。」


それだけ言って、私はギルドの端の方にある階段の方へ向かう。

二人は顔を見合わせると、急いで後を追ってくる。

私は階段の前で立っている少女__管理人のロロ__に話しかけた。


「ロロ殿(どの)、少しの間談話室を貸してほしいにゃ。部屋代は全てみゃーから引き落としておいて欲しいにゃ。」

「わかりました。後ろのお二方がご一緒されますか?」

「そうにゃ。」


それだけ話して、ロロの持つ箱に腕輪を付けた方の手をかざす。これで支払いは完了だ。

冒険者ギルドの談話室は有料で、人数に応じて部屋代が変わる。

余談だけど、Aランク以上の冒険者、すなわち、上級冒険者と呼ばれる人達は部屋代は無料になる。早くなりたいね、Aランク。私はCランクで、中級冒険者と呼ばれる部類だから、部屋代は半額だ。上位冒険者までまだまだだね。

と言っても普通料金で一人120Mなので三人で300M。私からしたら気にもならない金額だ。

補足すると、お金にまだ余裕がない冒険者たちはギルドにある食事スペースを使っている。

別にそこで話してもよかったんだけど、念のためね。

ちなみに冒険者ギルドには談話室や食事スペースのほかに、少し高いけど宿泊できる部屋もある。

便利だね。冒険者ギルド。


私達三人は階段を上って、扉の空いた部屋へ入った。


「それで、どうしてわざわざみゃーを呼び出したのにゃ?」

「いや、ですのでお礼を言いたくて…ですね…」


そう言いつつレインは目を泳がせる。


「お礼はその日のうちに受け取ったといったにゃ。それに、ただ伝えるだけなら受付に伝えておくなりまた会った時に言えばいいだけの話にゃ。

目的があるならちゃんと言うのにゃ。みゃーは今機嫌が悪いのにゃ。」


グッと眉を寄せて威圧する。

リアは怒っているのだ。ギルドに迷惑をかけてまで私を呼び出し、それによって宿で出される昼ご飯を食べ損なってしまうという事に。あ、後者が本命じゃないからね?ホントだよ。

カインはため息を吐き、「もう普通にしようぜ」とレインに言った。

だから初めからそうしてくれ。


「本題はこの前借りた武器を返そうと思ったのと、聞きたいことがあったからだ。それと、また、会いたかったから。」


会いたかった…?いやいや、言葉の綾でしょ。切り替えよう。


「その武器はみゃーは使わないから、代わりに使ってやって欲しいにゃ。して、聞きたいこととは何だにゃ?」

「ああ、この前『竜人族なんて10憶分の1の確率』って言ってたよな?それがどうしても気になってさ。」

「なるほどにゃ。二人は知らなかったという事かにゃ。」


納得だね。この二人は亜人の出現率を知らなかったんだ。きっと。


「竜人族とは、亜人種の中でも特に珍しくてにゃ、分家がいなくて数も少ないのにゃ。

だから、この世界に何十億もいる者達のうちの数人、大体10憶分の1になるのにゃ。実際にはもっと珍しいけどにゃ。」


こう堂々と説明するけど、実はコマンドの検索機能を使って答えているだけだよ。バレないから言わないけどね。

「わかってもらえたかにゃ?」と聞いてにこりと笑う。多分知りたかったのはこの事だよね、知ってる人少ないだろうし。


「なるほどな。それは知らなかった。」

「そんな設定があったんですね。」


二人は一応納得したようだ。満足満足。

さ、気になることを聞くとしますか。


「で、なんでみゃーに『また会いたかった』のかにゃ?」


別に何の意図もないよ。純粋な疑問。気になっただけだもん。

それに動揺したカインの代わりにレインが説明した。


「レベリングの効率が良かったからですよ。リアがわざわざ私たちとつるむ意味は無いとわかってはいるのですが、とても戦いやすかったのでもし本人がいいと言うのならまたご一緒したいと思いまして。」

「そういうことなら全然おっけーにゃ。一人は退屈だしどうせやるなら誰かとやった方が楽しいにゃ。」


なるほどね。やっぱり言葉の綾だった。

まぁ、ソロは退屈だったからいいかな。楽しかったし。


「いいのですか?私たちはまだレベルの低い初心者ですし、まだまだ下へは潜れません。そうなるとリアの足を引っ張る形になってしまうのですよ?」

「いいと言ってるのにゃ。それにみゃーは暇な時に上げれるし二人が追いつけばいい話にゃ」


なぜそこで渋るんだ。むきになって怒ると、カインが言い返す。


「追いつくんじゃなくて追い越すよ。」

「にゃにゃ、やれるもんならやってみるにゃ!みゃーはまけにゃあにゃ!」


言い合いながら笑えてくる。

それが、私にとって、どうしようもなく嬉しかった。

読んでくださりありがとうございます。

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