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第十三話

退屈な一日。

そう思ったのは、昨日パーティーを組んだ二人と遊ぶのが楽しかったからだろうか。

発売されてすぐは多すぎて手に負えなかった新規プレイヤーの数も、今ではギルド職員だけで回せる程に減ってきている。もう私が手伝う必要はない。

発売される前の半月の間は、一人でも平気で楽しめていたし、NPCと冒険することに何の違和感もなかったはずなのに。

私からすればNPCと人間には大きな違いがあった。

それは常識であったり元の世界のことであったり…

プレイヤーにとっての常識とNPCにとっての常識は違う。

プレイヤーはあっちの世界の住人であって、NPCはこっちの世界の住人なのだから。知識も環境も違う。

他のプレイヤーもわからない違和感を、多分私だけが抱いていた。


運営から言われた最低限の睡眠を終えてベットからからだを起こし、服を着替える。

少しでも睡眠を取らないと、脳を休める間もなく情報が入り続け、処理能力が低下してしまう可能性があるそうだ。

長い時間寝なくてはいけないわけではない。ただ情報を遮断して処理する時間を与えた方がいいだけなのだが、睡眠という機能は時間を持て余した私にとってありがたかった。


ブーツを履いて鍵をかけ、宿のおばさんに声をかけてからギルドへ向かう。

カインとレインのチュートリアルと適性試験の報告をするためだ。本来はその日のうちに済ませるべきだったけど、ギルドがまだ忙しなく動いていたから、空いた時にでもと思ったのだ。

ギルドへ入ってすぐ、私に気付いたミラさんが駆け寄ってくる。


「リアさん!先日は本当に助かりました。ありがとうございました。」

「いえいえ、私も楽しかったからいいにゃ」

「本日は依頼完了の報告ですか?」

「そうにゃ。それと、ついでにあの二人の適性も見ておいたからその報告もかねてにゃ」


ミラさんは「わかりました」と言って受付の方へぱたぱた走っていった。

その背中を追ってゆっくりと移動する。


「それにしても、適性試験までやってくださって助かりました。

あの時は相当込み合っていましたし、適性試験を受けていない冒険者の方のチュートリアルは危険だと誰も受けてくださいませんでしたから。」


なるほどね。あの時ミラがビビっていたのは、私に問題ごとを押し付けてしまったからなのかも。

だけど私は全く気にしていない。


「楽しかったからいいにゃ。案内代理人よりもおもしろかったにゃ」


と素直に伝えた。

その後も他愛のない話をしていると、段々と人が増えてきたためミラさんに別れを告げてその場を後にした。


ギルドからの帰り道。なんとなく商店街をまわりながら宿へと向かう。

これも、私の前世では出来なかった事でありやってみたかったことのひとつだ。

無意識に、だんだんと足取りは早歩きからスキップへと変わる。

その時、偶然通りかかった装飾品の店に並ぶ自分の目と同じ色の滴型の宝石が付けられた黒いチョーカーに目を奪われた。


「すみまないにゃ!これ欲しいにゃ!」


衝動的にそれを取り店主に突き出した。

店主は少し驚いたような顔を見せた後、すぐに「あいよ。」と言ってラッピングした。

「ありがとう」と言って会計を済ませると、それを受け取り浮足立って宿へ帰っていった。


宿へ戻るとすぐさまそれを付ける。

幸福のチョーカー。効果は[幸福度UP]。幸福度とは、ステータスにもないがドロップ率でも上げるのだろうか?

でもそんなこと正直どうでもいい。ただ一目見てこのチョーカーが気に入ったのだから、効果など気にしていないのだ。


しばらく余韻に浸っていると、部屋のドアがノックされ宿のおばさんが入ってくる。

何かあったのだろうか?


「それがね、なんかギルドの人が、リアちゃんに来てほしいって。」

「わかったにゃ。すぐ行くにゃ。」


私はそう返事をして部屋を後にした。

読んでくださりありがとうございます。

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